体重が減るのが、がん悪液質の特徴です

がん関連体重減少とがん悪液質

体重減少は、がんの患者さんの多くが経験する症状です。その要因は2つに分けられます。

がん悪液質における体重減少の要因

主な原因(関連する症状)
がんそのもの、あるいは治療による食事の摂取や栄養状態への影響
食道や胃、腸の全摘・一部摘出、手術後や放射線療法後の腸閉塞、吐き気・嘔吐、口内炎、味覚や嗅覚の変化、便秘、呼吸困難、痛み、疲労・だるさ、うつ・不安など
代謝異常
骨格筋の分解が進み、合成が落ちる
脂肪の分解が進み、合成が落ちる

「がん悪液質ハンドブック」「がん悪液質:機序と治療の進歩」日本がんサポーティブケア学会を参考に作成

1つは、「食べられないのでやせる」ことで、がん関連体重減少と呼ばれることもあります。つまり、がんそのものの存在による摂取・消化・吸収障害、治療による影響や副作用、心理的な問題、痛み・倦怠感などによる食物摂取量の低下による体重減少です。例えば、がんがあることで食道や胃がふさがって食べられなくなる、手術で食道・胃を摘出した、放射線療法や抗がん剤の副作用による口内炎や味覚・嗅覚の異常、便秘、呼吸困難などがあるといった状態です。
もう1つは、「食べていてもやせる」、がん悪液質による体重減少です。p.5でも説明したように、がん細胞から分泌される物質や炎症性サイトカインが筋肉の減少や脂肪の分解・褐色化、代謝異常を促すため、病気になる前と同じように食べたとしても、体重が減少してしまいます。

早い段階で体重減少を防ごう

進行がんの患者さんの多くは、「食べられないのでやせる」と「食べていてもやせる」が混在しています。どちらの影響が大きいかは、がんの種類や進行度、体質などによっても異なります。一般的には、がんが進行するに従って、がん悪液質による体重減少の影響が大きくなります。
もともとの体格にもよりますが、体重が大幅に減ると歩けなくなったり介護が必要になったりして、治療が続けられなくなることもあります。早い段階で原因を探り、できるだけ体重を減らさないようにすることが大切です。

早い段階で体重減少を防ごう

監修:
  • 京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学
    教授 髙山浩一先生