筋肉が減少して、サルコペニアになることもあります

急激な筋肉量の低下が治療にも影響

サルコペニアは、加齢や病気などによって筋肉量と筋力が低下した状態です。がん悪液質になると、筋肉が減少して萎縮するサルコペニアになりやすくなります。高齢者はがんの進行とは関係なく、サルコペニアになっていることが少なくありません。
サルコペニアになると歩く速度が落ちる、歩行が困難になるなど日常生活に支障が出ます。喉の筋肉が衰えると食物を飲み込む機能が低下し、誤嚥性肺炎を起こす危険があります。また、薬物療法の副作用が出やすく、がんの治療が継続できなくなる場合があります。

サルコペニアの診断と自己チェック法

サルコペニアかどうかは、握力と歩行速度(あるいは、立ち上がる動作にかかる時間)、四肢骨格筋量の測定結果によって診断します。四肢骨格筋量の測定法には、精度の高い体組成計を用いるBIA(生体電気インピーダンス分析)法、X線によって骨密度や筋肉量を測定するDXA(二重エネルギーX線吸収測定)法があります。がん治療の効果をみるCT検査の画像から骨格筋量を算出する方法もあります。

【表1】サルコペニアの診断基準(日本サルコペニア・フレイル学会、2019年)

筋肉量
下記のいずれかを満たす場合
  • BMI値が18.5未満、もしくは下腿範囲(ふくらはぎの最も膨らんだ部分)が男性34cm未満、女性33cm未満
  • 四肢骨格筋量が  DXA法:男性7.0kg/m²未満、女性5.4kg/m²未満
    BIA法:男性7.0kg/m²未満、女性5.7kg/m²未満
筋力
握力が男性28kg未満、女性18kg未満
身体機能
下記のいずれかを満たす場合
  • 椅子から立ち上がる動作を5回繰り返したときの時間が12秒超
  • 6m歩いたときの速度が秒速1m未満

アジア・サルコペニアワーキンググループ(AWGS)2019によるサルコペニア診断基準、
Chen LK, et al. J Am Med Dir Assoc. 2014; 15(2): 95-101. を参考に作成

患者さん自身がサルコペニアかどうかを判断するには、指輪っかテストが目安になります。また、「青信号のうちに横断歩道を渡り切れない」「手すりにつかまらないと階段を上がれない」「ペットボトルのふたが開けられない」といった状態に心当たりがあるなら、サルコペニアが疑われます。

サルコペニアの可能性を自分で簡単にチェックする「指輪っかテスト」

ふくらはぎの最も膨らんだ部分を両手の親指と人差し指で囲んでみて、すき間が空く場合はサルコペニアの可能性が高い。椅子に座り、膝を直角に曲げて測るなど、姿勢を決めて一定期間ごとに測ると変化がわかりやすい。なお、筋肉量の正確な診断は表1の基準で行う。

指輪っかテスト方法
指輪っかテスト結果

Tanaka T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2018; 18(2): 224-232. を参考に作成

監修:
  • 京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学
    教授 髙山浩一先生