多発性骨髄腫は血液がんのひとつで、骨髄中にある形質細胞という血液細胞ががん化する病気です。
形質細胞の本来の役割は、体内に侵入してきた病原菌やウイルスに出会ったときに、これら異物と戦うためのタンパク質である抗体*を放出して攻撃することです。
しかし、形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になると、骨髄で無秩序に増殖しながら、Mタンパクという役に立たない抗体を過剰に産生し、さまざまな症状を引きおこします。*抗体:体内に侵入してきた異物にくっつき、異物が体内から除去されるように働きます
- 正常な形質細胞の働き
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- 白血球の一種であるB細胞が分化して、形質細胞ができる
- 正常な形質細胞は異物(病原菌やウイルスなど)を攻撃する抗体を放出することによって、体を守る
- 異常な形質細胞の働き
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- 形質細胞ががん化すると骨髄腫細胞となり、骨髄内で異常に増殖する
- 骨髄腫細胞はMタンパクを産生し、それによりさまざまな症状を引きおこす
日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版, 金原出版, 2023
日本骨髄腫学会 編:多発性骨髄腫の診療指針 第5版, 文光堂, 2020
西村尚子:いちばんやさしい 免疫学, 安部良(監修), 成美堂出版, 2022
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監修:
- 群馬大学医学部附属病院 血液内科 科長
診療教授 半田 寛 先生