8.Q&A
脳腫瘍では頭痛や吐き気などの症状がみられることが多いと聞きました。
どのように対処したらよいですか?
脳腫瘍は、腫瘍ができて大きくなると、腫瘍の周りに脳のむくみ(脳浮腫)が生じます。このように脳腫瘍や脳浮腫が発生すると、頭の中が圧迫された状態(頭蓋内圧亢進)になります。圧迫されることにより頭痛や吐き気があらわれます。
通常、睡眠中は頭の中がやや圧迫された状態であるため、起床時に頭痛が強くなったり、吐き気を伴うことがあります。このような症状を「頭蓋内圧亢進症状」といいます。これらの症状がみられた場合には病院を受診しましょう。
また、このほかにも、片方の目がかすむ、うまく話せない、麻痺やしびれ、ぼんやりする、痙攣するなどの症状が出ることがあります(「中枢神経系原発悪性リンパ腫の特徴、症状と経過」参照)。

放射線治療とは具体的にどのようなものですか?
脳腫瘍の治療において、放射線治療は重要な治療法の一つであり、単独あるいは手術や薬物療法と組み合わせて行われます。
放射線の照射方法は、脳全体に放射線を当てる「全脳照射」と、腫瘍のみに放射線を当てる「定位放射線照射」などに分類されます。「 定位放射線照射」では、ガンマナイフやサイバーナイフといった、より小さな部位に照射できる技術も開発されています。
中枢神経系原発悪性リンパ腫の場合は、全脳照射が標準治療となります。
なお、放射線治療では、主に放射線を照射したところに副作用がみられ、治療中や治療直後にみられるものや、半年から数年後にみられるものがあります(「中枢神経系原発悪性リンパ腫の治療」参照)。

運動機能に障害がでた場合にはどうしたらよいですか?
中枢神経系原発悪性リンパ腫を含む脳腫瘍では、腫瘍や治療の副作用など、さまざまな影響により、手足の麻痺などの運動機能障害があらわれることがあります。運動機能は、脳の運動野という部位が障害を受けると発現します。
障害された状態が続くと、機能が低下したり、回復が遅れたりすることがあります。リハビリテーション(リハビリ)は運動機能の維持や向上を目的としており、早期から取り組むことが大切です。
リハビリは、病気の状態や患者さんによって目的や内容が異なります。体に違和感を感じた場合には、医師や看護師などに相談するようにしましょう。

認知機能に障害がみられた場合にはどうしたらよいですか?
中枢神経系原発悪性リンパ腫を含む脳腫瘍では、腫瘍や治療の副作用など、さまざまな影響により、思考や感情、感覚などをつかさどる部位が障害されると、高次機能障害と呼ばれる、下記の症状があらわれることがあります。
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注意障害
ミスが多い、2つ以上のことを同時に行えない、集中できないなど -
記憶障害
新しいことが覚えられない、以前覚えていたことが思い出せないなど -
遂行機能障害
自分で計画を立てて実行できない、指示がないと自分で動くことができない -
社会的行動障害
暴力をふるう、思いどおりにならないと怒ったり大声を出したりするなど
高次機能障害に対しては、認知リハビリがよいといわれており、それぞれの障害の内容と程度に合わせてリハビリの方法が異なります。
気になることがある場合には、医師や看護師などに相談するようにしましょう。
治療費がかかることが不安です…
がんの治療費には、入院、化学療法、放射線治療、副作用がある場合はその治療など、さまざまなものにかかる費用が含まれています。このほかに、病院への交通費、支援サービスを活用する場合はその料金などもかかります。また、仕事を休む場合は収入が減ることも考えられますので、経済的な不安は大きいことでしょう。
がん患者さんに対する経済的支援制度は、病院に支払うお金の負担を軽減する高額療養費制度のほか、民間の医療保険や加入している健康保険の傷病手当金があります。
また、収入や心身の状態などについて一定の条件を満たせば、さまざまな助成制度を活用することができます。
経済的に不安がある場合は、早めに「がん相談支援センター」(「がん相談支援センターってなんですか?」 参照)に相談しましょう。

在宅で治療を受けることはできますか?
できるだけ普段と変わらない日常生活を送りたいという思いから、在宅での治療(通院しながらの治療)を希望する患者さんが増えています。在宅治療のメリットには、不安やストレスが少ないこと、自分らしく毎日を過ごすことができることなどがありますが、一方で通院が負担になったり、副作用が起きたときの対処や食生活の管理を自分やご家族で行わなければならないというデメリットも考えられます。
在宅で治療をしたい場合は、上記のようなデメリットも含めて、担当の医師とよく相談しましょう。
また、在宅治療で使える便利なサービスとして、送迎サービス、配食サービス、往診や訪問看護などさまざまなサービスがありますので、詳しくは「がん相談支援センター」に相談してみましょう。

治療後に仕事に復帰したいのですが…
がんの治療法は日々進歩しており、がん患者さんでも治療終了後に職場復帰を考える時代になりました。
厚生労働省や各自治体では、就労・職場復帰を考える患者さんを支援するさまざまな取り組みが行われています。
例えばハローワークでは、がん診療連携拠点病院と連携して、がん患者さんへの就労支援サービスを行っています。
また、すべての診療連携拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」には、社会保険労務士や産業カウンセラーといった就労の専門家が配置されていることがあります。
仕事を続けたい、働きたいという場合、このようなサービスを活用するとよいでしょう。

治療にあたって疑問や不安があるのですが、医師とどのようにコミュニケーションを取ればよいですか?
疑問や不安は、担当の医師に遠慮せずに伝えるようにしましょう。中枢神経系原発悪性リンパ腫を含むがんの治療は、さまざまな医療職が連携するチーム体制で行われています。
このチームには、医師や看護師はもちろん、リハビリテーションを担当する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーのほか、患者であるあなたやあなたのご家族も含まれています。あなたの意見や希望によって、チームスタッフそれぞれが最適な方法を考え、実践していきます。
そのため、治療に対する疑問や不安、また希望は積極的に医師やその他スタッフに伝えるようにしましょう。

自宅にいるときや外出中、急に具合が悪くなったときはどうすればよいですか?
まずは、治療をしている病院に連絡しましょう。病院の連絡先や連絡した際に伝える情報は、あらかじめ整理しておきましょう。
- 氏名、診療科の名前
- 受けている治療の内容
- 具合が悪くなったときの状況 など
また、病院への交通手段、自分一人で移動できない場合の付き添いの確保なども、あらかじめ考えておくとよいでしょう。

自分や家族の精神的ストレスが辛い…
がん治療には、体の痛みだけでなく、心の痛みも伴います。辛い気持ちは、ぜひ医師や看護師、がん相談支援センターのスタッフに伝えてみましょう。辛い気持ちを表すと、次第に気持ちが落ち着いてくることもあります。患者会に参加することも一つの方法です。
眠れなくなるなど、日常生活に不便がある場合は、医師に相談して、臨床心理士などの心のケアができる専門家を紹介してもらうのもよいでしょう。
がん相談支援センターってなんですか?
すべてのがん診療連携拠点病院に設置されている、がんに関する無料の相談窓口です。通院していない病院の窓口も利用することができます。相談の内容によって専門医やがんに詳しい看護師、薬剤師、栄養士などの専門的な知識を持ったスタッフと連携できる病院もあります。
がん相談支援センターの相談員は、がん専門相談員としての研修を受けており、治療や副作用、経済的不安などの相談はもちろん、家族との関わり方、医療スタッフとの関係性、心の問題まで、がん治療および療養生活に関するさまざまな相談をすることができます。
不安なとき、困ったときに利用してみるとよいでしょう。
- 監修:
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埼玉医科大学国際医療センター
脳脊髄腫瘍科 教授
西川 亮 先生