vol.6 がん悪液質に対する日本発の運動・栄養療法プログラム「NEXTAC」

がん悪液質の有効な治療法を求めて

NEXTAC-ONE試験5, 6)

レベル 運動の構成
1 立ち上がり運動 + 踵上げ運動 + 膝の伸展運動
2 立ち上がり運動 + 踵上げ運動+ 膝の伸展運動 + 腿上げ運動 + 股関節外転運動
3 強度2の運動を、膝の伸展、腿上げ、股関節外転については1kgのおもりを装着して行う

はじめに、レベル2の運動プログラムを10回×3セット行い、その後の患者さんの疲労度を評価します。その結果に応じて各患者さんの強度レベルを設定し、決められたレベルの運動の10回×3セットを基本処方として毎日継続します。
NEXTACプログラムでは、できる限り毎日継続するための工夫として、

  • 1)10回×3セットを10回×1~2セットに減らす
  • 2)それでも継続が難しいときは、運動の種類を減らす
  • 3)2)で継続できない場合は、運動の頻度を2~3日に1回に減らす
  • 4)運動を一時休止し、体調が回復すれば速やかに再開する

NEXTAC-TWO試験7)

NEXTAC-ONE試験で栄養・運動療法プログラムが高齢進行がん患者さんにおいても安全に実施可能であることを受け、今度は全身化学療法を受ける進行非小細胞肺がんまたは膵臓がんの70歳以上の患者さんを対象にNEXTACプログラムの効果を検証する多施設無作為化比較対照(RCT)第Ⅱ相試験として、NEXTAC-TWO試験が開始されました。2017年8月に患者さんの募集を始め、国内15施設で約130名のがん患者さんが参加しました。自宅での身体活動量測定のためのウェアラブル機器の扱いなどの訓練を経て、スクリーニングで参加可能と医師が判断した患者さんを栄養・運動介入群と介入を行わないコントロール群に1:1に無作為に割り付け、比較検討をしています。
スクリーニング期間と試験期間から構成される試験全体の流れは下図のようになります。

試験期間

NEXTAC-TWO試験の主要評価項目は介護不要生存時間(試験開始から介護が必要と評価されるとき、または全死因死亡までの期間)と設定され、栄養・運動介入が、がん悪液質患者さんの入院日数の延長とそれに伴う経済的負担のリスクを軽減できる可能性を検討しています。
NEXTAC-TWO試験の評価項目は下表のとおりです。

主要評価項目 介護不要生存期間
副次評価項目
  • 1) 除脂肪体重:腰椎位置のCT画像を用いて推定
  • 2)身体機能:握力、SPPBスコア、加速度計により測定した身体活動量
  • 3)栄養状態:体重、MNA(簡易栄養状態評価表)スコア、推定摂取栄養量
  • 4)QOL:QOL調査30項目質問票により評価
  • 5)化学療法2次治療を受けた患者の割合
  • 6)全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)
  • 7)累積入院日数
  • 8)日常生活活動
  • 9)安全性

今後への期待 ~日本からの発信

これまでデータからみるがんと運動シリーズで紹介してきたがん悪液質に関するガイドラインに加え、最新では米国臨床腫瘍学会(ASCO)が2020年に公表した「がん悪液質の管理に関するガイドライン」8)があります。ここでも運動療法は集学的治療の一部として推奨されているものの、現時点で科学的に立証するための臨床試験データはなく、独立した治療法として推奨するにはエビデンス(証拠)が不十分と述べられています。
日本で進行中のNEXTACプログラムが、がん悪液質または高リスク患者さんのための栄養・運動療法として確立し、がん悪液質の症状を早い段階で食い止め、患者さんのQOLの維持・向上に貢献できる標準療法となることを願ってやみません。

文献:
  • 1) Fearon K, et al. Lancet Oncol. 2011; 12(5): 489-495.
  • 2) Argilés JM, et al. Nat Rev Cancer. 2014; 14(11): 754-762.
  • 3) 一般社団法人 日本がんサポーティブケア学会、内藤立暁 ほか監修:がん悪液質ハンドブック
  • 4) 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会編集:終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン2013年版 II章 9「がん悪液質の概念と最近の動向」 金原出版 p.46
  • 5) Naito T, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019 ; 10(1) : 73-83
  • 6) 立松典篤. 癌と化学療法 2022 ; 49(7) : 732-736
  • 7) Miura S, et al. BMC Cancer. 2019; 19(1): 528. doi: 10.1186/s12885-019-5762-6.
  • 8) Roeland EJ, et al. J Clin Oncol. 2020; 38(21) : 2438-2453.
監修:
  • 名古屋大学大学院医学系研究科 総合保健学専攻 予防・リハビリテーション科学分野 創生理学療法学講座
    助教 立松典篤先生

(2023年3月作成)