2原発不明がんの検査と診断

原発不明がんの診断では、どんな検査が行われますか?

入念な診察と画像検査で原発巣の手がかりを探します。さらに病理検査で、がん細胞の性質を詳しく調べます。

まずは病歴の聞き取りを含めた詳しい問診や診察で、原発巣の手がかりを探します。胸部X線やCT、女性ではマンモグラフィによる乳房の画像検査を行って、がんがある部位や広がりの程度などを調べます。さらに、がんの組織を「生検」で採取し、「病理検査」でがん細胞のタイプ(組織型や性質)を詳しく調べます。病理検査は、原発巣の特定だけでなく、今後の治療法を選択するうえでも大切です。これらの検査を受けても原発巣が特定できない場合は、「原発不明がん」と診断され、必要な治療へと進みます。

診断までの流れ
日本臨床腫瘍学会編:原発不明がん診療ガイドライン 改訂第2版, p2-4, 南江堂, 2018
安藤正志:原発不明がん〜どのように取り扱えば良いのか、診断から治療までの流れ〜, p.30-33, 医学と看護社, 2021

原発不明がんの診断に必要な検査の種類

① 問診・診察各種の検査で原発巣を探索します

  • 詳しい病歴の聴取(家族歴も含みます)
  • 身体所見を確認(頭頸部、乳房、婦人科領域、泌尿器科領域の診察/直腸診を含みます)
  • 血液検査・尿検査(腫瘍マーカーや細胞診を含みます)
  • 便潜血検査
聴診器

② 画像検査がんがある部位や広がりを確認します

  • 胸部レントゲン、胸部および腹部・骨盤CT、MRI
  • 女性はマンモグラフィ・乳房超音波検査
  • 必要に応じてPETペット検査や内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)を追加
CT検査

③ 病理検査がん細胞のタイプ(組織型や性質)を調べます

  • 病理医が、がん細胞の組織型や性質を詳しく調べます。
  • 原発巣を推定するために、免疫組織染色マーカーによる組織検査が行われます。 必要に応じて遺伝子検査や染色体検査が行われることもあります。
顕微鏡

がん細胞の組織型について

組織型とは、がん細胞の形やがん細胞が集まった組織の状態から、がんを分類したものをいいます。原発不明がんは、「高・中分化せんがん」「低分化腺がん、未分化がん」「扁平上皮へんぺいじょうひがん」「神経内分泌腫瘍」「低分化悪性新生物」の5つのタイプに分けられます。このうち、もっとも多いのが「高・中分化腺がん」で、全体の約60%を占めています。

日本臨床腫瘍学会編:原発不明がん診療ガイドライン 改訂第2版, p2, 20-28,南江堂, 2018
安藤正志:原発不明がん〜どのように取り扱えば良いのか、診断から治療までの流れ〜, p10-16, 30-33, 医学と看護社, 2021
監修:
千葉大学大学院医学研究院 臨床腫瘍学 教授
滝口 裕一 先生

(2024年1月作成)