カイプロリスの投与中、体に異常(副作用)があらわれることがあります。副作用に早く気づけば、それだけ早く対応でき、重症化を防ぐことができます。
また、副作用に適切に対処することで、日常生活への影響も少なくなるため、治療の継続につながります。
副作用には自覚症状で気づくものと、検査で気づくものがあります。患者さんからのなにげない情報が副作用の発見につながることもあります。体の状態で気になることや、ここで紹介した症状に心当たりがある場合は、主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
特に注意すべき副作用
カイプロリスによる治療で特に注意すべき副作用とその症状をご紹介します。
骨髄抑制
骨髄の働きが低下することで、血液中の赤血球や白血球、血小板、好中球、リンパ球などが減少した状態になることがあります。この状態を骨髄抑制といいます。
骨髄中の正常な細胞に作用すると血液細胞を作ることができなくなり、骨髄抑制がおきます。骨髄抑制がおきると、貧血や感染、出血などが生じやすくなります。
●主な症状
以下のような症状があらわれたら、主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
貧血
赤血球が減ると貧血になります。
- 症状:
- 疲れやすい、顔色が青白い、失神、めまいなど
感染
白血球や好中球、リンパ球が減ると、体外から侵入した病原菌を攻撃できなくなり、風邪や肺炎、口内炎、尿路感染症などの感染症にかかりやすくなります。
- 症状:
- 発熱、鼻水、のどの痛み、咳、痰、排尿時の痛みなど
出血
血小板が減ると、少しの刺激で出血しやすくなり、血が止まりにくくなります。
- 症状:
- 鼻血、歯茎の出血、青あざができやすい、血便など
●日頃から気をつけたいこと
- 体調が良くないときは、無理せず休息をとるようにましょう。
- 感染予防のため、手洗い、うがい、口腔ケア(歯磨きなど)など、体を清潔にするようこころがけましょう。
- 出血予防のため、けがや内出血などに注意しましょう。出血したときは、圧迫したり冷やしたりすると効果的です。もし止血できないときは速やかに医療機関にお知らせください。
疲労
疲労はさまざまな原因によって生じます。
●主な症状
以下のような症状があらわれたら、主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
疲れやすい、力が入らない、だるい、疲れがとれないなど
●日頃から気をつけたいこと
治療中は無理のない範囲で仕事や家事を行い、十分な睡眠をとるようにこころがけてください。
発熱
発熱の原因はさまざまで、感染症、肺障害、薬剤の点滴にともなうアレルギー様反応などが考えられます。一過性か、持続性かによって原因や治療法が異なります。発熱がある場合は、主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
●日頃から気をつけたいこと
カイプロリスの投与中は、毎日の体温を記録し、発熱した場合はすぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
呼吸困難、肺障害
肺やのどなどの呼吸器の病気(間質性肺炎、肺臓炎、急性呼吸窮迫症候群、急性呼吸不全など)がおきる可能性があります。
この呼吸器の病気が原因で、呼吸困難や肺障害などが生じる場合があります。
●主な症状
以下のような症状がある場合、特に呼吸困難があるときには、すぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
- 労作時の息切れ・息苦しさ、息切れがひどくなる、呼吸がしにくくなる、から咳(痰のない咳)、発熱など
高血圧
血圧の高い状態(高血圧)になることがあります。
また、血圧が急激に上昇することを高血圧クリーゼ(高血圧緊急症のひとつ)とよび、緊急対応が必要になります。
●主な症状
以下のような症状があらわれたら、すぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
- 血圧の上昇、強い頭痛、動悸、耳鳴り、不安感、息切れ、鼻出血など
●日頃から気をつけたいこと
医療機関やご家庭で、定期的に血圧を測定しましょう。
吐き気・便秘
吐き気や便秘などの胃腸障害がみられる可能性があります。
吐き気などのために食事をしたり水分をとることができなくなったり、場合によっては脱水症状になったりすることがあります。
●主な症状
以下のような症状があらわれたら、主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
- 吐き気、嘔吐、便秘など
●日頃から気をつけたいこと
こまめな水分補給をこころがけ、水やお茶など、飲みやすいものを少しずつでも飲むようにしましょう。
注意が必要なその他の副作用
カイプロリス®による治療中、次のような副作用があらわれることもあります。
主治医は、検査の結果を慎重に確認しながら、これらの副作用がおきていないかチェックしています。これらの副作用の中には自分で気づくことのできる症状もあるので、当てはまる症状があるときには次の診療を待たずに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
心障害
心臓のはたらきに異常があらわれることがあります。
以下のような症状がある場合、心不全や虚血性心疾患などといった心臓に関連する疾患があらわれている可能性があります。
心不全は、心臓のポンプ機能が低下したり、体内に血液がたまったりすることなど、さまざまな原因でおこります。
虚血性心疾患とは、心筋梗塞や狭心症など、心臓への血液のめぐりが悪くなる疾患です。
●主な症状
以下のような症状があらわれたら、すぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
- 動悸、脈の乱れ、胸の痛み、息切れ、血圧の上昇、むくみ、体重の増加など
腎機能障害
腎機能障害とは、腎臓の機能が低下した状態です。腎機能障害がおこる要因にはさまざまなものがありますが、お薬によって生じることもあります。
血液検査でクレアチニンやBUN(尿素窒素)といった項目の数値が増加していると、腎機能障害が疑われます。
腎機能障害は、重症化すると透析が必要になることがあるため、以下の症状に気づいたら、すぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
●主な症状
以下のような症状に気づいたら、すぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
- 尿量が減る、尿が出ない、むくみ、疲れやすいなど
肝機能障害
血液検査の結果で、ALT、AST、ALPなどの数値が上昇していると、肝臓の機能が低下している可能性があります。
肝機能障害は重症化すると命にかかわることもあります。
●主な症状
以下のような症状があらわれたら、すぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
- 疲れやすい、食欲不振、発熱、皮膚が黄色くなる、発疹、吐き気・嘔吐、かゆみなど
腫瘍崩壊症候群
治療によって腫瘍細胞が大量に破壊されると、壊れた細胞の内容物が血液の中に流れ出し、高尿酸血症や高カリウム血症などを引きおこします。これを腫瘍崩壊症候群とよび、通常、治療開始から12~72時間以内におこります。進行すると、腎不全や不整脈、突然死をきたすことがあります。
●主な症状
自覚症状で気づくことはほとんどなく、血液検査で発見されますが、以下のような症状が出る場合もあります。
- 尿量の減少、脈の乱れ
●日頃から気をつけたいこと
主治医や薬剤師・看護師と相談のもと、予防のために水分補給を心がけてください。
静脈血栓塞栓症
静脈血栓塞栓症とは、足などの静脈にできた血栓(血のかたまり)が、肺の動脈に詰まってしまう病気で、エコノミークラス症候群とよばれることもあります。
●主な症状
以下のような症状に気づいたら、すぐに主治医や看護師、薬剤師にお知らせください。
- 足の痛みやむくみ・腫れ、動悸、めまい、胸の痛み、息切れ、失神
●日頃から気をつけたいこと
無理のない範囲で体を動かしたり、脱水状態にならないようにこまめな水分補給をこころがけたりしましょう。
カイプロリスの重大な副作用として、心障害、間質性肺疾患、肺高血圧症、肝不全、肝機能障害、急性腎障害、腫瘍崩壊症候群、骨髄抑制、Infusion reaction、血栓性微小血管症、可逆性後白質脳症症候群、脳症、高血圧、高血圧クリーゼ、静脈血栓塞栓症、出血、感染症、消化管穿孔が報告されています。
体の異常や気になることがあれば、主治医や看護師、薬剤師にお知らせください
カイプロリス電子添文 2024年1月改訂(第4版)
カイプロリス適正使用ガイド(2024年2月改訂)
- 監修:
- 群馬大学医学部附属病院 血液内科 科長
診療教授 半田 寛 先生