不安があれば医療者に相談しましょう
どんな病気であっても、手術の合併症や薬の副作用は怖いものです。まして、がんの治療となると副作用が強いイメージがあり、不安は大きくなってしまいますね。「未知に対する不安」をうまく解消するためには、知識を身につけることで不安を頭から追い出したり、医療者に助けを求めたりするなどの手段があります。
これまでの人生で何かの壁にぶつかったとき、誰の助けも借りずに対応することに慣れている方もいらっしゃるでしょう。しかし、今回はちょっと「分厚い壁」のようです。「家族や友人に心配をかけたくない、人に甘えるなんてもってのほかだ」と思わずに、不安や怖いと感じる自分を許してあげてください。
そして、主治医や看護師、薬剤師、精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)、緩和ケアチームの医療者などに「○○が怖い、××になったらどうしようと考えてしまってよく眠れない」など、今感じている気持ちや症状を素直に伝えてみましょう。
抗がん剤の副作用について
抗がん剤による治療では、副作用が強く現れることがあります。抗がん剤の副作用はその種類によって異なりますが、自分ではっきりわかるものと、検査値からわかるものがあります。
自覚できる症状には抗がん剤を投与した直後から現れる吐き気やおう吐、不整脈といった急性の副作用や、数日後からゆっくり現れてくる遅延性おう吐や脱毛、手足のしびれなどがあります1)。また、全身の倦怠感や疲れ、気力が湧かないなど「がん(治療)関連疲労」を生じることもあります2)。検査値からわかる副作用には、肝機能や腎機能障害、感染症と闘う力の低下、貧血などがあります1)。
ただし、副作用は個人によってさまざまで、ここにあげた副作用が一人の方にすべて生じるとは限りません。また、症状が現れるタイミングも個人によって異なります
副作用を抑える薬や、対応策があります
治療のためだとわかっていても術後の痛みや薬物療法・放射線療法の副作用があると「なぜ、自分がこんな目に遭うのか」「こんな苦しみが続くなら、死んだ方がましだ」「治療をして余計に体調が悪くなった」というやりきれない思いが湧き上がってくることもあります。こうした感情は人として当たり前のことで、気分が落ち込んで何もする気になれないといった抑うつ症状が現れることも稀ではありません。
近年、抗がん治療の副作用についてはかなり研究が進み、副作用を抑える薬や、患者さん自身でできる副作用対策もあります。ぜひ、主治医や看護師に辛い症状を具体的に伝え、対応策を一緒に考えてもらいましょう。副作用の症状が治まってくるにつれて気分の波も徐々に収まってくるでしょう。
それでも気分が辛い時は、主治医や看護師などに相談して、精神腫瘍医(サイコオンコロジスト)の医師や、緩和ケアチームに所属する精神科医などを紹介してもらってください。彼らはいずれも心の専門家で、そのために存在しているので遠慮はいりません。
- 監修:
- 国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科
科長 小川 朝生 先生