独立行政法人 労働者健康安全機構では勤労者の治療と就労の両立支援を進めるため、平成26(2014)年度から全国の労災病院で「治療就労両立支援モデル事業」を展開、がんを含む疾病4分野での支援事例の収集・分析・評価を基に、平成29(2017)年に各疾病別の両立支援マニュアルを作成しました。このマニュアルの普及を通して、労災病院だけでなく全国の医療機関の医療従事者(医師、看護師、医療社会福祉士(MSW:Medical Social Worker)等)、加えて企業の労務管理担当者や産業医をはじめとする産業保健スタッフの支援への取り組みを促進させ、「病気になっても無理なく働ける社会」の構築を目指しています。また、がん患者さん・がんサバイバー本人、家族、がん治療に携わる医療関係者、職場関係者など就労支援に関わるすべての人々が参加できる「勤労者医療フォーラム」を開催しています。
障害や疾病を抱えているか否かに関わらず、人は今、自分が持てる力を使って日々の生活を送っています。2001年5月にWHOで採択された国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)では、「生活機能と障害」の構成要素である「心身機能及び身体構造」(生命の維持に直接関係する身体・精神の働き)、「活動」(生活行為)及び「参加」(家庭・社会に関与し、そこで役割を果たす)は、背景因子としての「環境因子」と「個人因子」の影響を受け、これらすべての要素が、それぞれ独立性を持ちながら互いに関連しあって初めて「健康状態」が決まるという概念を示しています3)。つまり、健康かどうかは疾病の有無だけで表されるものではないということです。