あなたと一緒に、がんと向き合う

がん患者さん・がんサバイバーの就労支援をめぐる動き

国の取組み

がんについての様々な取組みのため、国は昭和59(1984)年~平成16(2004)年まで10年ごとにがんに対する10か年戦略を策定、平成26(2014)年からは「がん研究10か年戦略」に基づき、根治・予防・共生を目標に患者・社会と協働する研究を推進しています。また、平成18(2006)年6月には「がん対策基本法」(平成18年法律第98号)が成立、平成19(2007)年4月に施行され、本法に基づくがん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、同年6月に第1期「がん対策推進基本計画」(以下、「基本計画」という)が閣議決定されました。最近の第3期基本計画(平成30(2018)年3月9日閣議決定)では、

  1. 科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実
  2. 患者本位のがん医療の実現
  3. 尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築

を3つの柱として、「がん患者を含めた国民が、がんに関する正しい知識を持ち、避けられるがんを防ぎ、がんの克服を目指す」ことを平成29(2017)年度から令和4(2022)年度までの約6年間の目標に掲げています。

がん対策推進基本計画

③は平成28(2016)年の法改正で基本理念に追加された「がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し」、「がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること」を反映したもので、「がん患者がいつでもどこに居ても、安心して生活し、尊厳を持って自分らしく生きることのできる地域共生社会を実現するため」に、以下の5つの施策を打ち出しています。

  1. 1)がんと診断された時からの緩和ケアの推進による患者とその家族のQOLの向上
  2. 2)がん診療連携拠点病院等や小児がん拠点病院のがん相談支援センターを中心とした相談支援、科学的根拠に基づく情報の提供及びWebサイトの適正化
  3. 3)拠点病院等と地域との連携や在宅緩和ケアの整備による社会連携に基づくがん対策・がん患者支援
  4. 4)就労支援に加え、偏見、がん治療に伴うアピアランス(外見)の変化、後遺症等がもたらす就労以外の社会的問題に対する相談支援、さらに自殺や障害のあるがん患者に関する課題への取組みを含むサイバーシップ支援
  5. 5)小児・AYA(Adolescent and Young Adult)世代、高齢者それぞれのライフステージに応じたがん対策

*注)AYA世代は日本語で思春期・若年世代と言われることもあります。

がん患者さんががんと共生していくためには、患者さん本人のがんとの共存だけでなく、患者さんと社会が協働・連携していくことの重要性を国が強く認識し、積極的に取り組む姿勢を表明したものとなっています。

医療機関、NPO法人など

専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の整備、患者さんや住民への相談支援や情報提供などの役割を担う病院として、国が定める要件を満たし、厚生労働大臣による指定を受けた「がん診療連携拠点病院」が全国にあります。全国の「がん診療連携拠点病院」等には、がんに関する相談窓口として「がん相談支援センター」が設置されており、がんに関する治療や療養生活全般、地域の医療機関などについて誰でも無料で相談できます。看護師や社会福祉士などが相談に対応しており、国が指定した研修を修了した相談員は、「がん相談支援センター」のロゴをかたどったバッジを着けています。

「がん相談支援センター」のロゴマーク

「がん相談支援センター」のロゴマーク
国立がん研究センターがん情報サービス gajoho.jpホームページ > がんの相談 >
がんの相談窓口「がん相談支援センター」 > 「がん相談支援センター」とは

独立行政法人 労働者健康安全機構では勤労者の治療と就労の両立支援を進めるため、平成26(2014)年度から全国の労災病院で「治療就労両立支援モデル事業」を展開、がんを含む疾病4分野での支援事例の収集・分析・評価を基に、平成29(2017)年に各疾病別の両立支援マニュアルを作成しました。このマニュアルの普及を通して、労災病院だけでなく全国の医療機関の医療従事者(医師、看護師、医療社会福祉士(MSW:Medical Social Worker)等)、加えて企業の労務管理担当者や産業医をはじめとする産業保健スタッフの支援への取組みを促進させ、「病気になっても無理なく働ける社会」の構築を目指しています。また、がん患者さん・がんサバイバー本人、家族、がん治療に携わる医療関係者、職場関係者など就労支援に関わるすべての人々が参加できる「勤労者医療フォーラム」を開催しています。

患者さんにとって、がんサバイバーや今、自分と同じように闘病中の仲間と話し合う機会は大きな励みになります。NPO法人の活動は、病院では言いにくいことや、不安、悩みなどを共有しあえるピアサポートを提供し、患者さんと地域社会とのつながりを育むうえで、大切な役割を担っています。例えば、がんに罹患することで生じる社会的な苦痛(特に経済的な苦痛)を緩和することにより、 がん患者さんとその家族が安心して暮らすための支援体制を構築することを目指す「がんと暮らしを考える会」(東京都港区)や、患者さん本人が自分を取り戻し、自分自身で自己決定できる状態になれるよう寄り添い型支援を目的とした「マギーズ東京」(東京都江東区)など、数多くのNPO法人が独自の支援活動を行っています。

共に生きる、共に働く

障害や疾病を抱えているか否かに関わらず、人は今、自分が持てる力を使って日々の生活を送っています。2001年5月にWHOで採択された国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)では、「生活機能と障害」の構成要素である「心身機能及び身体構造」(生命の維持に直接関係する身体・精神の働き)、「活動」(生活行為)及び「参加」(家庭・社会に関与し、そこで役割を果たす)は、背景因子としての「環境因子」と「個人因子」の影響を受け、これらすべての要素が、それぞれ独立性を持ちながら互いに関連しあって初めて「健康状態」が決まるという概念を示しています。つまり、健康かどうかは疾病の有無だけで表されるものではないということです。

国際生活機能分類
厚生労働省ホームページ「 国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)より改変

ここで注目されるのは、「参加」という要素が入っていることです。「がん患者の就労等に関する実態調査」(東京都福祉保健局,2014年)では80%以上の患者さんががんと診断された後も仕事を続けたいと答えています。その理由について「家庭の生計維持」や「がん治療代を賄うため」という経済的理由も多かったものの、「働くことが自身の生きがいであるため」との回答が57%を超えていました(東京都福祉保健局,2014年調査結果)。患者さんにとって社会参加することが自身の存在証明となっている実態がうかがえます。

がん患者さんにとって、目前の目標は治療によるがんの克服・症状の改善かもしれませんが、治療中・治療後も人生は途切れることなく続いています。がんに罹患してもがんに支配される生活ではなく、いかに健やかにがんと共に生きるか、を念頭に置いて、治療のための薬の開発にとどまらず、がんと共生するあなたに寄り添い、サポートしていきたい、それががん患者さんの就労を支援する人たちみんなの願いです。

(原稿作成 2019年11月)

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