再発や転移によって、経済的負担が増加することがあります
医療機器の進化や新薬の開発により、がん医療は年々進歩しています。さらに術後後遺症や薬物療法の副作用の軽減も最大限に試みられ、がんになった後もその人らしく過ごせるように考慮されるようになり、多くのがん種で生存年数が延びています1)。その一方で、がんの治療費は増加傾向にあり、患者さんとご家族の経済的負担も増加しています。経済的負担は、再発や転移によって治療期間が長くなるほど、患者さんの健康状態が低下していくほど、大きくなる可能性があります2)。
わが国の緩和ケア病棟71施設のがん患者さんのご家族851名にアンケート調査した結果2)、数は少ないながらも医師から勧められたがん治療を経済的理由で中止・変更した割合は「時々あった」4%、「よくあった」1%で、経済的な理由が治療の選択に影響するケースが見られました。さらに、がんの治療のために生活を切り詰めた経験の有無をたずねたところ、「時々あった」5%、「よくあった」2%でした。また、4人に1人(24%)が治療中に貯金を切り崩して生活したと回答していました。
日本は国民皆保険制で社会保障制度が充実しており、高額療養費制度もあるため経済的な負担から治療を変更、中止するリスクは低いことがアンケート調査からわかりますが、再発・転移した場合は処方薬剤の変更や、体調の変化によって追加の医療費や入院費が必要になることがあります。多少の余裕をもって急な出費に備えておいたほうが安心して治療を続けられるでしょう。
特にこれまで一家の家計を支えてきた方が患者さん本人である場合は、家計への影響が侮れません。治療方針が決まり大まかな治療費の見通しが立った時点で、がん相談支援センター※1のスタッフや医療ソーシャルワーカー※2に相談しながら医療費の支出計画を立てていきましょう。
※1
がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院や、小児がん拠点病院、地域がん診療病院に設置されているがんに関する相談窓口です。その病院にかかっていない患者さんやご家族でも相談できます。がんの専門相談員(看護師やソーシャルワーカーなど)が常駐し、病気のことはもちろん、お金のことや社会復帰など、様々なことについて相談できます。
※2
医療ソーシャルワーカー(MSW)は医療機関などにおける福祉の専門家であり、利用できる公的制度を紹介するなど、社会福祉の立場から患者さんやご家族をサポートします。