あなたと一緒に、がんと向き合う
治療の選択

医療不信
~皆さまへ~

「本当に適切な治療が受けられるの?」

一昔前のがんの告知が否定されていたときは、患者さんは自分自身が受けている治療の内容も目的も知ることができず、不信と不安の中で苦痛に耐えることもありました。ときには家族にも不信の目を向けてしまう辛い時代だったかもしれません。

今は逆に情報の洪水の中で、本当に自分にとって適切な治療はどれなのか迷ったり、誤診や医療ミスの犠牲にならないかと疑心暗鬼に陥ったりすることが少なくないようです。そのような中で伝えられる情報が少ないと、担当医に対して不信感を募らせてしまうこともあるでしょう。

また、自分が求める「医師像」──例えば、責任感や誠実さ、思いやりや理路整然としているなど、理想に合わないと感じたときは、どうしても疑いの目で見てしまうかもしれません。残念ですが、あなたの主治医も一人の人間であり、すべての面で優れた理想の医師は存在しません。目の前の医師と信頼関係をつくれるかどうかはわかりませんが、少なくとも、患者-医師間の良いコミュニケーションのためにはお互いに努力する必要があります。

何に対して、不信感を持っているのか書き出してみましょう

もし、あなたが医師や病院に対する不信感を持っているとしたら、自分の中に潜んでいる不信の原因を整理してみるとよいかもしれません。例えばあなたが今、不安に思っていること、怒りを感じていることを、ノートに書き出してみるのもよいでしょう。

不信感の書き出し

「話す時間をとってもらえなかった」「軽い調子で告知されて傷ついた」など、最初は怒りや悲しみの感情がわきあがってくるでしょう。感情的になってもかまいません。一通り書き終えたら読み直してみて、では自分はどうしてもらいたかったのかを考えてみてください。「もっと治療の内容について知りたかった」「辛さを共感してもらいたかった」など、具体的に整理してみることが大切です。

そして勇気を出して、整理したことを次の外来で伝えてみてください。あなたの側から積極的にコミュニケーションをとろうと働きかけることで、医師の態度も変わっていくと思います。医師が忙しそうで話しかけられない、あるいは感情的になって上手く話ができそうにないと思ったら、整理したことを手紙にして渡してもよいかもしれません。

主治医以外の医療チームのメンバーや、がん相談支援センターの職員に相談するのも一つの方法です。相談を受けた職員はあなたの話をきちんと受け止め、必要な助言や、場合によっては病院側に何らかの対処を求めてくれるはずです。

また何が何でも「良好な信頼関係」を築かなくては、と力を入れることもありません。期待がすぎると何かあったときに「裏切られた」という思いを強くしてしまいます。患者-主治医(医療者)の良好な関係は、思いを伝える、治療を受ける、治療の効果を共有するといった中で、結果としてできあがっていくものなのだと思います。

監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生
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