治療

身体機能の喪失
〜17歳女性 骨肉腫の場合〜

Vさん:17歳 女性 骨肉腫がん・ステージⅡ
高校3年生。両親と兄の四人暮らし。

高校2年生のときに、右膝に激しい痛みを感じて整形外科を受診しました。すぐに紹介されたがん専門病院で骨肉腫と診断され、病巣が大事な血管や神経を巻き込んでいるため切断せざるを得ないと、医師に言われました。

17歳女性

「“命か足か”って言われても……」

骨肉腫は希少がんの一つで、多くは10~20代の若年者の膝や肩の周囲で発生します1)

治療の基本は術前・術後の抗がん剤療法と病巣を周囲の健康な組織で包んで取り除く「広範切除術」で、近年は術式が進化し、術前・術後の抗がん剤治療が確立されたことで、約9割の患者さんで患肢温存術(切断をしないで足を残すこと)が行われています1)。しかし、病巣が大事な血管や神経を巻き込んでいるため切断を選択せざるを得ない患者さんも1割ほどいます。Vさんもそのうちの一人でした。

「“命か足か”って言われて、どうしようもなかった」(Vさん)。術前の抗がん剤治療の間、自分でもわかるほど無口になっていったそうです。「“終わったら足を切るんだ”って思って……。そしたら、看護師さんが“先輩たちの話を聞いてみない?”って、声をかけてくれました。そこでリハビリテーション病棟をのぞいてみることにしました」(Vさん)。

同じ経験をしたがんサバイバーに話を聞きましょう

現代は「見た目」を重視する社会だといわれています。特に女性は子どもの頃から「かわいい」「やせてきれいになったね」などの言葉で見た目を意識するように強いられがちです。このため身体や外見が変わると、自分の存在価値がすべて失われるように感じてしまうことが多いようです。特に自我を確立しようとしている思春期であれば大げさではなく、生きるか死ぬかの問題です。

どうか葛藤や不安を一人でかかえこまずに、手術の前から看護師やサイコオンコロジスト(精神腫瘍医)、心理カウンセラーなどに葛藤や恐れ、不安を話してみてください。「困らせてはいけない」と家族や友人には口にできずにいる怒りや哀しみをぶつけてもよいのです。医療者にとっては何も言わずにじっと我慢している患者さんこそ心配です。

また、「その後の自分」を全くイメージできないことも、不安の原因になります。日常生活では体験者に出会う機会が少ないので、最近は術前にリハビリテーション病棟などへの訪問を勧める病院も出てきました。できれば同じがんで同じ経験をした方と話をする機会がつくれないか、医療スタッフに聞いてみてください。

Vさんは、リハビリテーション病棟でちょうど義足のメンテナンスのために通院してきた5つ年上の女性に出会いました。13歳のときに骨肉腫で下肢を切断したその女性は、笑顔で「最近はハイヒールが履ける義足もあるんだよ」と、義足姿のセルフィー(自撮り)を見せてくれました。

Vさんが義足をつけて普段の生活が送れるようになるまでには、たくさんの歩行訓練をしなくてはいけませんし、辛く感じることも多いでしょう。でも、この日が歩行訓練を頑張るきっかけになったことは確かでした。

同じ経験をしたがんサバイバーに話を聞きましょう

患者会にアクセスをしてみましょう

インターネットとSNSが社会に浸透し、当事者の方たちが色々な形で経験や情報を発信できるようになりました。これを活用しない手はありません。まずは患者会の情報にアクセスしてみてください。さまざまな想いを共有できる仲間に出会えると思います。骨肉腫の場合は、国立がん研究センター中央病院で治療を受けた肉腫の経験者が中心となり発足した「肉腫(サルコーマ)の会 たんぽぽ(2023年2月21日閲覧、https://tanpopokai.net/)」などがあります。

1)国立がん研究センター希少がんセンター「骨の肉腫(ほねのにくしゅ)」(2023年2月21日閲覧、https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/bone_sarcomas/index.html#%E9%AA%A8%E8%82%89%E8%85%AB%EF%BC%88Osteosarcoma%EF%BC%89
監修:
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科
科長 小川 朝生 先生

(2023年4月作成)

身体機能の喪失