AYA世代とは、15歳~39歳の思春期・若年成人世代のことをさします。
子どもがまだ園児なのですが、
私ががんだと打ち明けるべきでしょうか?
高齢の両親に心配をかけたくないので、
がんになったことを伝えられずにいます。
一番近い存在だからこそ、伝えられない…。
気持ちはよく分かりますが、ご家族のためにも、きちんと伝えることをおすすめします。
がんと診断されて、治療を受けている患者さんの中には、家族にその事実を伝えていないという方もいます。家族に心配をかけたくない、話すきっかけがつかめないなどの理由から、打ち明けられずに、1人で抱え込んでいる患者さんも多くおられます。そんな、一番身近で大切な存在である家族と、どのように向き合うのがよいのでしょうか?家族への伝え方について、がん研有明病院患者・家族支援部長の高野利実さんに答えてもらいました。
隠し事があると、家族間で溝ができてしまう
大切な家族に心労をかけたくないという理由から、がんであることを伝えられない患者さんの気持ちはよく分かります。しかし、私は「大事な家族だからこそ、きちんと伝えた方がよいと思います」とアドバイスしています。隠しておいた方がよいという場合は、ほとんどありません。事実を隠そうとすることで、家族との間に、溝ができてしまうこともあります。隠し事なく、悩みも共有した上で、なんでも語り合えた方がよいと思います。
例えば、母親ががんで、子どもに伝えていないとします。子どもは、両親が深刻そうに話をしていたり、不安な様子でいたりするのを、敏感に察知します。そして、自分に隠し事をしているのではないか、なぜ話してくれないのかという不信感を抱くようになります。さらに、子どもは、「家族の一員として認められていない」「自分は信用されていない」と悪い方へ想像をめぐらし、それが一生のトラウマとして残ってしまうこともあります。
伝え方のコツが紹介されているサイトや資料も参考に
幼い子どもであっても、「ありのままの事実や気持ちを伝えるのが望ましい」と考えています。「隠し事はしない」「うそはつかない」という原則を守りつつ、子どもときちんと向き合い、「家族の一員であるあなたと大事な思いを共有したい」というところから始めます。子どもの年齢や性格を考慮し、反応を見ながら、焦らずに伝えるのがよいでしょう。
伝え方のコツを紹介するサイトや資料も充実していますので、参考にしてみるとよいでしょう。よくおすすめしているのは、Hope Tree(ホープツリー)のホームページ(2022年11月30日閲覧、https://hope-tree.jp/)です。
がんという病気であることをきちんと伝えると同時に、がんになったのは誰のせいでもないことを伝えることが重要です。子どもは、自分のせいで、親ががんになってしまったと考えがちなので、それをきちんと否定します。そして、がんはうつる病気ではないということも伝えます。こうしたことを、分かりやすい言葉で説明した上で、大切なあなたと私の関係は、これからも変わらないということを繰り返し伝えます。
高齢の両親であっても、本当のことを伝える
これは両親相手でも同じことです。認知症で理解が難しいような場合を除き、私は、「親御さんにもお伝えした方がよい」とお話ししています。両親が高齢の場合など、伝えた後のショックを考えると、なかなか伝えられないという声もありますが、大切な家族だからこそ、隠し事はせず、支え合っていくことが大切だと思います。
進行がんで、「親より先に亡くなる可能性があると伝えるのがつらい」とおっしゃる患者さんもいますが、かけがえのない子どもが、1人で悩みを抱えたまま亡くなってしまったと知ったら、親御さんはもっとつらい思いをしてしまいます。いろいろな可能性を含めて共有した上で、悪い方の可能性についても準備しつつ、よい方の可能性にも期待しながら、ともに過ごしていくことが大切だと思います。