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治療後

術後合併症・後遺症と晩期合併症
〜49歳男性 脳腫瘍の場合〜

FFさん:49歳 男性 脳腫瘍・グレード3
会社員。兼業主婦の妻と、大学生の子どもの三人暮らし。

6年前に脳腫瘍と診断され、手術と放射線治療、薬物療法を受けました。治療後5年を過ぎたころから、記憶力や集中力の低下に悩まされるようになりました。

49歳 男性

「晩期合併症で、仕事に支障が出るようになりました」

手術によって摘出した腫瘍組織から、FFさんの脳腫瘍は退形成性星細胞腫と呼ばれるもので、グレードは高いものの集学的治療(手術や放射線照射、抗がん剤などを組み合わせて行う治療)によって治癒が期待できるがんでした。放射線腫瘍医は「社会復帰を考えて合併症をできるだけ防ぐために、放射線の量はなるべく抑えましょう」と治療計画を立ててくれました。ところが、治癒の目安となる5年を過ぎたあたりから、物忘れや注意力が散漫になるといった症状を自覚するようになりました。

「放射線治療の影響と考えられる“晩期合併症かもしれない”と診断され、仕事にも支障が出始めて、“これから、自分はどうなるのだろう。仕事が続けられなくなったら家計はどうなるのだろう”と将来への不安を強く感じるようになりました」(FFさん)。

高次脳機能障害には、認知リハビリテーションが有効です

記憶障害や注意障害といった高次脳機能障害は、リハビリや様々な機器を使って工夫することで「障害を受け入れながら、生活の工夫で生活の質(QOL)を維持する」ことができます1)。具体的には、記憶障害がある場合は、スマートフォンのリマインダーやTo Doリスト(予定を知らせてくれるアプリ)を活用することでミスを減らすようにします。また、集中できなくなる注意障害がある場合は、作業に時間がかかることを前提として予定や日程を組むようにします。この方法が身に付くと、集中力がなくてもミスが少なくなります1)

認知リハビリテーション

高次脳機能障害などの晩期合併症が現れた際に「周りに迷惑をかけたくない」と退職を選ぶ方もおられますが、重大な判断はひとまずわきに置いて、まずは職場に理解を求め、傷病手当の手続きなどを粛々と進めましょう。

また、65歳未満の場合は、障害年金を受給できる可能性がありますし、主治医やがん相談支援センターのソーシャルワーカーと相談をするほか、日本年金機構の委託を受けて運営されている「街角の年金相談センター」で社会保険労務士による無料相談を利用するのもよいでしょう。成人の脳腫瘍経験者の障害認定は煩雑なうえに、主治医の診断書の記載内容も重要なため、患者会などで経験者に話を聞いてみて情報を収集することも大切です。

このほか、もしも将来に対する不安で眠れない、食欲がわかない、希死念慮(消えたい、辛い状況から逃れたいという気持ち)が消えないときは、初回治療を受けた病院の相談支援センターに連絡をとり、精神腫瘍科や緩和ケア外来など適切な診療科を紹介してもらいましょう。

1)西川亮 監:もっと知ってほしい悪性腫瘍のこと 2019. NPO法人 キャンサーネットジャパン制作
(2021年3月12日閲覧、https://www.cancernet.jp/wp-content/uploads/2018/11/w_nousyuyou190520.pdf)
監修:
国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科
科長 小川 朝生 先生
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