あなたと一緒に、がんと向き合う

10.悪性黒色腫の治療

手術

悪性黒色腫では、手術によってがんを切除する方法が優先されます。しかし、悪性黒色腫は、がんの周辺に小さな転移(衛星病巣)や目に見えないほど小さな転移が発生することが多く、目に見えるがんだけを切除した場合、周囲に再発するリスクがあります。手術ではこれらの小さな転移も取り除く必要があるので、がんの端から数cmほど外側を広めに切除します。切除の深さは、それぞれの腫瘍の進行度に応じて決められます。

解説する手術服の医師のイラスト

各病期における切除範囲

切除範囲
(がんの端からの長さ)
0期 約3~5mm外側
Ⅰ期 約1cm外側
Ⅱ期 約1~2cm外側
Ⅲ期 約1~2cm外側
周辺の皮膚に転移がある場合はそれらも切除
*0期とは、がんが上皮内に留まっている状態です。
日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版, 金原出版, 2015

センチネルリンパ節生検とリンパ節郭清かくせいについて

画像検査などから転移がないと診断された場合でも、「センチネルリンパ節生検」を行うことが推奨されています。センチネルリンパ節は、がんが最初に転移するリンパ節で、このリンパ節に転移がなければ他への転移はない可能性が高いと考えられます。一方、このリンパ節に転移があると、その先のリンパ節へも転移している可能性があるため、その領域のリンパ節を広範囲に切除する「根治的リンパ節郭清」が行われる場合があります。

センチネルリンパ節生検のチャート図。センチネルリンパ節生検では、センチネルリンパ節のみ摘出します。センチネルリンパ節に転移がなければ、それより先のリンパ節には転移はないはずと考えられます。

広範囲のリンパ節郭清後に、四肢に浮腫ふしゅ(むくみ)が起こる可能性がありますが、センチネルリンパ節生検を行うことで不要なリンパ節郭清を避けることができます。また、病期(ステージ)が正確にわかるので、適切な治療法の選択に役立ちます。

手術(退院)後は、手術の部位や方法によりますが、基本的には食事、運動などの制限もなく、今までの日常生活や職場に、早期に戻ることが可能です。ただし、リンパ節を広範囲に切除すると、リンパ浮腫と呼ばれる手足のむくみやしびれが出ることがあります。このような場合は術後のリハビリや毎日のマッサージ、弾性ストッキングや包帯による圧迫で症状を軽減できることがあります1)

1)がん治療とリンパ浮腫 がんと療養205, 国立がん研究センターがん情報サービス, 2012

術後補助療法

悪性黒色腫は、術後の早い時期に転移や再発が発見され、予後不良となることがしばしば起こります。
術後補助療法とは、術後の転移や再発を防ぐために行われるもので、悪性黒色腫では、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、インターフェロンなどによる治療が検討されます。

薬物療法

手術による治療が難しい場合や、がんが再発した場合などは、薬物療法として免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬、化学療法(抗がん剤)による全身への治療が行われます。
がんの薬物療法では、単剤で用いる場合と、別のお薬と組み合わせて用いる場合があります。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬による治療は、もともと体内に備わっている患者さん自身の「免疫」の力を利用して、がん細胞への攻撃力を高める治療法です。悪性黒色腫に対しては、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる治療薬が使われます。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫をブレーキする部分(免疫チェックポイント)に結合するはたらきがある抗体薬で、点滴で投与されます。

術後補助療法 術後の経過を改善したり再発を防ぐ目的で行われます。
全身療法 手術による治療が難しい方や再発した患者さんが対象となります。単剤で投与される「単独療法」と、2つの薬剤を組み合わせる「併用療法」があります。
点滴をしている患者さんのイラスト

分子標的薬

悪性黒色腫ではBRAFと呼ばれる遺伝子変異ががんの発現に関わっていることがわかっています。BRAF遺伝子変異のある患者さんでは「分子標的薬」の効果が高いことが示されていますので、治療を行う前には、がんの一部を切除し遺伝子検査を行います。
分子標的薬はBRAF遺伝子変異を標的に作用し、がん細胞の増殖を抑えるはたらきをもっています。

術後補助療法 「分子標的薬」は術後補助療法としても使われています。
全身療法 悪性黒色腫に対しては、BRAF阻害薬の1剤または、BRAF阻害薬とMEK阻害薬の2剤を服用します。別々の経路からがん細胞の増殖を抑えたり、お薬の効果を長持ちさせるために通常は2剤を組み合わせて服用します。
点滴をしている患者さんのイラスト

化学療法(抗がん剤)

抗がん剤は、細胞に作用することでがんの増殖を抑えて、がん細胞を死滅させるはたらきがあります。

術後補助療法 手術で取り除けなかったがん細胞を死滅させるため、手術後に抗がん剤の投与を行うことがあります。
全身療法 手術不適応の患者さんに対して、がんが大きくなるまで、または副作用によって治療を続けることが難しくなるまで継続します。

インターフェロン

インターフェロンは、がんや体内に侵入した病原体を死滅させるために細胞が分泌する物質で、免疫に作用してがん細胞が増えるのを抑えるはたらきがあります。

術後補助療法 術後にインターフェロンを切除部位の周辺に注射、または皮下注射することがあります。

放射線療法

悪性黒色腫は、一般的に行われるX線や電子線を照射する放射線療法では効果が認められないことが多いのですが、先進医療*1として限られた施設で実施している速中性子線や陽子線、重粒子線などの特別な放射線の照射が効果を示すことがあります。
また、脳に転移がある患者さんにガンマナイフ治療*2やサイバーナイフ治療*3などが行われることもあります。

放射線療法
*1先進医療国が承認した先進性の高い医療技術のことで、限られた医療機関で行われます。先進医療の技術料は健康保険の対象とならないため全額自己負担となり、高額となる場合があります。このような治療について詳しく知りたい方は医師にご相談ください。
*2ガンマナイフ治療開頭手術をすることなく、脳内のがん病巣に対してγ(ガンマ)線を多方向から一点に集中照射する治療です。
*3サイバーナイフ治療コンピュータ制御により、がん病巣に対してX線を多方向から集中照射します。頭部以外でも治療できます。
監修:
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 腫瘍皮膚科 主任部長
爲政 大幾 先生

悪性黒色腫(メラノーマ)の治療で小野薬品の薬を使用された方へ