がん細胞がリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖することを「転移」といいます。
転移には、リンパ管を介して転移する「リンパ行性転移」と、血管を通ってがんが転移する「血行性転移」があります。
悪性黒色腫は、比較的早い段階から腫瘍組織の近くにあるリンパ節(所属リンパ節)に転移する可能性が高いことが知られており、日本の患者さんでは、およそ4分の1の方にリンパ節転移がみられます1)。
リンパ節への転移の有無を調べるためにセンチネルリンパ節生検を行うことで、顕微鏡を使用しないと見つけられないような早期の転移を確認することができます(「センチネルリンパ節生検とリンパ節郭清について」参照)。
また、転移にはがん細胞が血液の流れにのって、腫瘍組織からはなれた臓器に移動し、そこで大きくなる遠隔転移があります。
悪性黒色腫では、脳、肺、肝臓、消化管、皮膚、リンパ節や骨などへの転移がみられます。
リンパ節とは2)
血管から染み出した血漿やタンパク質の成分などが、リンパ管に再吸収されたものをリンパ液といいます。老廃物の回収などの働きがあり、このリンパ液はリンパ管を通って全身に巡っています。リンパ節はリンパ管の途中にあります。細菌、ウイルス、がん細胞などがないかをチェックし、免疫機能を発動する「関所」のような役割を持ちます。
転移しやすい臓器3)
- 1)Fujisawa Y et al: Cancer Med. 8(5): 2146 -2156, 2019
- 2)国立がん研究センター がん情報サービス「リンパ節」
- 3)Leung AM et al: Cancer J.18(2): 176–184, 2012