再発の告知を受けて、今どんな心境でいらっしゃるのでしょうか?
「まだまだ実感がわかない」、「不安や恐怖、悲しみや怒りなどのつらい気持ちでいっぱい」、「なんとか気持ちを切り替えて次に進もうとしている」などなど、様々でいらっしゃるのではないかと思います。私は再発を経験した多くの方々に関わらせていただきましたが、その経験からまず申し上げたいのは、「人それぞれの事情があるので、あるがままの気持ちを大切にしたほうがよい。気持ちの準備ができていないのに無理に前向きになろうとしなくてもよい(むしろしないほうがよい)」ということです。
再発を体験された方は、次の二つの課題と向き合う必要があると言われています
一つ目は「それまで思い描いていた将来像を失うこと」、二つ目は「新たな現実と向き合うこと」です。
- それまで思い描いていた将来像を失うこと
- 一つ目の課題について、みなさまは再発の告知を受ける前はどのような未来を思っておられたでしょうか?そして思っておられた未来は、再発がわかったことでどのように変わったのでしょうか?「ある程度予測していたから大丈夫だよ」という方もいらっしゃるかもしれません。一方で、「こんなはずじゃなかった、なんで自分が!」という場合は、悲しみや怒りの感情も大きいでしょう。悲しみや怒りには自分の気持ちを癒したり守ったりする力がありますので、どうぞ無理に押し込めすぎないように、あるがままの気持ちを大切にされてください。
- 新たな現実と向き合うこと
- 二つ目の「新たな現実と向き合うこと」も骨の折れる作業かもしれません。考えなければならないこととして、どのような治療を受けるのか、周囲の人にどう伝えるのか、仕事や学校、ご家族の心配や日々の家庭生活をどうするかなどなど、現実的な問題が山積みかもしれません。心理的には、「これからの未来をどう考えたら希望をもって毎日をすごせるのか?」ということもあるかもしれません。
これらは、誰にとっても簡単ではない課題でしょう。ですので、どうぞご自身のことを十分にいたわっていただきたく存じます。「誰にも迷惑をかけたくない」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし私の経験では、過剰な責任感や自分を責める気持ちは、周囲の方にとってもあまり良い働きをしていません。一人で抱えきれない場合は、ご家族、友人、患者会(ピアサポート)、医療者など、信頼できる誰かに手伝ってもらったらよいと思います。悲しみや怒りの感情は誰かに受け止めてもらったときに最も癒されますし、堂々巡りしてしまう場合は誰かと話し合いながらあれこれ考えるほうが、気持ちの整理が進むと思います。
「困ったときはお互い様」という言葉があります。そして、あなたのことを大切に思っている人は、見守るしかできない自分をもどかしく感じておられるかもしれません。人はお役に立てることがうれしいし、実はお手伝いができることによって大いに救われることがあると思います。
- がん患者さんの手記をご覧になれます
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たくさんの方々のさまざまな向き合い方を通して、今度はあなた自身の向き合い方を見つけてみてください。
国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス 症状を知る/生活の工夫
患者さんの手記 https://ganjoho.jp/public/support/note/index.html(2023年2月21日閲覧)
- 精神腫瘍科とは・・・
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がんによる心のつらさを和らげる医療分野を精神腫瘍学(サイコオンコロジー)といいます。
がん患者さんのお話をうかがい、ときにお薬を使いながら、よりよい心の状態で治療が受けられることを目指します。
また、ご家族も「第2の患者」とも呼ばれ、精神腫瘍科の助けを必要とすることがあります。
がん患者さんやご家族の多くが、うつ病など心に負担を抱えています。つらいと思ったら、主治医や精神腫瘍科にご相談ください。
治療を受けている病院・医院に精神腫瘍科がないときには、主治医にお近くの精神腫瘍科を紹介していただいてください。
国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科は、他院でがんの治療を受けておられる方も受診ができます。
(2023年4月作成)