再発

再発と抑うつ
~56歳女性 乳がんの腰椎転移の場合~

GGさん:56歳 女性 乳がんの腰椎への骨転移
専業主婦。夫、大学生の息子と三人暮らし。

2年前に乳がんと診断され、手術と術後補助化学療法を受けていましたが、定期検診で腰椎への骨転移がわかりました。

56歳女性

「再発と告げられてから、何も手につかなくなりました」

主治医から「乳がんの骨転移は、直ちに命を脅かすことはありませんが、痛みやしびれが出てくることがあります。 ただ、このような症状が現れても痛み止めや放射線治療で緩和することができますからね」と言われたGGさん。 患者会の仲間からは、「乳がんは骨転移しやすいんですって。私も骨転移が見つかったけど、お医者さんの言うとおりに治療しているからか、今のところ日常生活に支障はないわ」と励まされました。 しかし、再発(転移)したという衝撃は思った以上に大きく、「痛みが出るの?苦しむの?」と再発の苦しみと混乱で何も手につかず、昼間は居間でぼんやりと過ごし、夜は眠れない日々が続きました。

再発という現実を受け入れるには時間がかかります

再発を受け入れることは誰にとってもつらく、苦しい道のりです。ときには、インターネットや患者会などで、再発しても生き生きと頑張っているという体験談を読んだり聞いたりするかもしれません。しかし、今は元気な方でも、再発がわかった直後は落ち込み、絶望感のあまり何も手につかなかったと振り返る方がほとんどです。おそらくGGさんの患者会の仲間も眠れない夜を幾晩も過ごしたことでしょう。

ときには「なぜ、自分だけが…」と怒りや悲しみにさいなまれて健康な人をねたんだり、「家族に迷惑をかけるのでは…」などの暗い想いが湧き上がってきたりすることもあるでしょう。治療を頑張ってきたのに、再発という理不尽なことに直面すれば、多かれ少なかれ、このような感情の嵐を経験するのも当然です。無理に元気に振る舞ったり、明るい気持ちになろう、前向きになろうとしたりする必要もありません。どうか人間らしく弱いと感じる自分を受け入れてあげてください。再発という現実を受け入れるには時間がかかるものです。

ときには心の専門医を頼りましょう

落ち込みやうつうつとして気分が晴れないといった状態が2週間以上続いているときは、主治医やがん相談支援センターのスタッフに相談してください。サイコオンコロジスト(精神腫瘍医)や緩和ケアチームを紹介してもらうのもよいでしょう。

サイコオンコロジストという名称を聞いたことがない方もいらっしゃるでしょう。サイコオンコロジストとは、がん医療における「心」の専門家で、その役割は、患者さんが一人で苦しまないように精神的に支えることなどがあります。緩和ケアチームでは、心のつらさを和らげる医師(精神科医・心療内科医)、身体症状の緩和を担当する医師、認定看護師、薬剤師、心理士、栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカーなどがチームを組み、患者さんとご家族の心と体のつらさをサポートします。

「患者会の仲間に、“何も手につかないことを医師に伝えること”と助言してもらって、再発から1ヵ月後にようやく主治医に相談しました。ちょっとした悩みも話したら、心が楽になりました。もっと早く話せばよかったと思います」(GGさん)。

心のケアの多くは、カウンセリングが中心になります。患者さんはうまく話す必要は全くありません。がん医療に携わる医療者は批判や指図をしたりせず、話を聞き、共感し、ときに抱えている問題を明確にし整理してくれることでしょう。

医師に相談
監修:
大阪国際がんセンター 心療・緩和科(精神腫瘍科)
部長 和田 信 先生

(2023年9月作成)

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