- OOさん:63歳 女性 卵巣がんの再発
- 夫と娘夫婦の四人暮らし。
1年半前に卵巣がんが見つかり、切除術と抗がん剤治療を完了しました。しかし、定期検診で再発がわかり、緩和ケアを勧められました。

「医療用とはいえ、麻薬を勧められて怖くなりました」
卵巣がんは進行した状態で発見されることが多く、また、早期のがんでも再発することがよくあるといわれています1)。OOさんは再び抗がん剤治療を受けることに同意しましたが、がんによる痛みもあったため、主治医から「医療用麻薬を使った緩和ケア(痛みの治療)も並行して行いましょう」と言われました。
「再発もショックでしたが、それ以上にショックだったのは医療用とはいえ麻薬を使うことでした。麻薬を使えば薬物中毒になって、それがないと生きていけない体になるのではと、とても恐ろしくなりましたし、そんな強い薬を使うなんてもう死ぬのでは、とも思いました」(OOさん)。
医療用麻薬を用いることで、がんの痛みのほとんどは和らぎます
近年、テレビの医療ドラマがヒットしたことなどで、がんの痛みを治療する医療用麻薬やオピオイド鎮痛薬(モルヒネやヘロインなど)という言葉も少しずつ知られるようになってきました。その一方で、麻薬を使うことに対するネガティブなイメージは、一昔前の「最後の手段としてオピオイド鎮痛薬を使う」といった間違った使い方から生まれたものです。今ではがんと診断されたときから痛みは治療するものという考えが標準になっていますし、医療用麻薬で寿命が縮むこともありません2)。
医療用麻薬を嫌悪するあまりがんの痛みを我慢し続けていると、気力や体力がそがれ、生活の質(QOL)が損なわれてしまいます。がんとうまく共存していくには、患者さんの過半数が経験する痛み2)の治療を外すことは得策ではありません。WHO(世界保健機関)※が1986年に発表した「WHO方式が疼痛治療法(1996年改訂)」に基づいて鎮痛薬を適切に使用することで80%以上の患者さんが痛みから解放されることがわかっています2)。
●がんの痛みの治療により、痛みが抑えられた患者さんの割合3)

3)
武田文和. がんの痛みを救おう!「WHOがん疼痛救済プログラム」とともに, 医学書院, 2002, p20.より作成
身体に「痛み」があると、気持ちが沈みがちになり、不眠などの影響が出てきます。「痛み」を我慢することは決して美徳ではありません。ぜひ主治医や看護師、緩和ケアチームに相談しましょう。
※世界保健機関(WHO)は1948年に設立され、国連システムの中にあって保健について指示を与え、調整する機関です。グローバルな保健問題についてリーダーシップを発揮しています。
医療用麻薬で麻薬中毒になることはありません2)
医療用麻薬を使う上で特に気になることの一つが「精神依存(麻薬中毒)になるのでは」というものではないでしょうか。麻薬中毒は薬を中止すると強い不快感などに襲われるため、病的に薬を飲まずにはいられなくなる状況を指します。痛みのない人が興味本位で大量または頻回に使用すると麻薬中毒になる可能性がありますが、医師の管理のもとで適切に使われている場合は、中毒になることはありません。
OOさんは、医療用麻薬に関する不安点を一覧にして緩和ケア医に尋ねたそうです。「自分でも調べましたが、専門医から説明してもらうことでようやく安心できました。“痛みが出てきたのは、がんが進行したからではなく神経の近くにできたからでしょう”ということも聞けて、緩和ケアを受けて治療に専念しようと思えました」(OOさん)。
もし、がんの痛みとその治療について詳しく知りたい場合は、日本緩和医療学会が編集した「患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド増補版2)」が参考になるのでご覧ください。

- 監修:
- 大阪国際がんセンター 心療科
部長 和田 信 先生