医療用麻薬を用いることで、がんの痛みのほとんどは和らぎます
近年、テレビの医療ドラマがヒットしたことなどで、がんの痛みを治療する医療用麻薬やオピオイド鎮痛薬(モルヒネやヘロインなど)という言葉も少しずつ知られるようになってきました。その一方で、麻薬を使うことに対するネガティブなイメージは、一昔前の「最後の手段としてオピオイド鎮痛薬を使う」といった間違った使い方から生まれたものです。今ではがんと診断されたときから痛みは治療するものという考えが標準になっていますし、医療用麻薬で寿命が縮むこともありません2)。
医療用麻薬を嫌悪するあまりがんの痛みを我慢し続けていると、気力や体力がそがれ、生活の質(QOL)が損なわれてしまいます。がんとうまく共存していくには、患者さんの過半数が経験する痛み2)の治療を外すことは得策ではありません。WHO(世界保健機関)※が1986年に発表した「WHO方式がん疼痛治療法(1996年改訂)」に基づいて鎮痛薬を適切に使用することで80%以上の患者さんが痛みから解放されることがわかっています2)。
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武田文和. がんの痛みを救おう!「WHOがん疼痛救済プログラム」とともに, 医学書院, 2002, p20.より作成
身体に「痛み」があると、気持ちが沈みがちになり、不眠などの影響が出てきます。「痛み」を我慢することは決して美徳ではありません。ぜひ主治医や看護師、緩和ケアチームに相談しましょう。
※世界保健機関(WHO)は1948年に設立され、国連システムの中にあって保健について指示を与え、調整する機関です。グローバルな保健問題についてリーダーシップを発揮しています。