あなたと一緒に、がんと向き合う

がん患者さん・がんサバイバーの就労状況

がんサバイバーのライター、福島恵美です。
ここでは、がん患者さんやがんサバイバーの方の就労状況の現状について、データを交えて確認したいと思います。

福島恵美

厚生労働省が「平成22年国民生活基礎調査」を基に集計した結果では、男性14.4万人、女性18.1万人、計32.5万人が、がん治療のため仕事を持ちながら通院していることが明らかとなりました。

仕事を持ちながら悪性新生物で通院している患者数

仕事を持ちながら悪性新生物で通院している患者数
仕事を持っているとは、調査月に収入を伴う仕事を少しでもしたことをいい、被雇用者のほか、自営業主、家族従事者等を含む。
厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」を基に同省健康局にて特別集計したもの ※1

このような実態を生じている背景を考えてみましょう。
がんのため入院後、退院した患者の平均在院日数は経年的に短くなりつつある一方、外来患者数が増えており、近年のがん治療における入院日数の短縮化と通院治療へのシフトを表しています。さらに、がん治療では外科療法(手術)、化学療法(抗がん剤治療)及び放射線療法の3大治療のほか、ホルモン療法や分子標的薬など種々の治療を組み合わせた集学的治療が基本であり、「手術が終われば治療終了」とは限らず、加えて患者さん個々に治療内容と治療期間が異なることも多い、という特徴が挙げられます(事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料「がんに関する留意事項」より)。

がん治療における入院日数の推移

がん治療における入院日数の推移
厚生労働省 平成29(2017)年患者調査の概況_統計表より作成 ※2

がん治療における入院・外来患者数の推移

がん治療における入院・外来患者数の推移
厚生労働省 平成29(2017)年患者調査の概況_統計表より作成 ※3

がん治療での入院日数は、どんどん減っていますね。平成29年は17.1日ですか!? 私の場合は、がんができていたしこりを取り除く手術と抗がん剤治療のため、合わせて約40日間入院。その後は、放射線治療を外来で受けながら、仕事を続けました。がん治療は外来中心になってきているのを感じます。

がんは、「不治の病」というかつての負のイメージから、「誰もが罹患する可能性のある、長く付き合う疾患」へと変わってきています。がんとの共生が、これからのあるべきがんとの向き合い方となっているのです。

しかしながら、がん患者さんを対象に行われたいくつかの就労実態調査から、調査によって差はありますが、およそ3~5人に1人ががんと診断された後に離職しており、「がんの社会学」に関する研究グループ(研究代表者 静岡県立静岡がんセンター 総長 山口建)による平成15(2003)年の調査では34.7%が依願退職又は解雇され、自営業、単独、家族従業者においては13.2%が廃業したという実態が示されました。10年後の平成25(2013)年の調査においても依願退職又は解雇が34.6%と変わらず、廃業は17.1%と若干高くなり、状況は改善していませんでした(2013 がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査 報告書2016年8月;「がんの社会学」に関する研究グループ)。

がん患者・経験者の就労問題

がん患者・経験者の就労問題
厚生労働科学研究費補助金、厚生労働省がん研究助成金「がんの社会学」に関する合同研究班
(主任研究者 山口 建)(平成16年)※4

突然がんと診断されると驚きますし、私のときも頭の中が真っ白になりました。中には、診断後に慌てて仕事を辞めてしまう人もいると聞きます。このグラフが示すように、約3割の人が依願退職、解雇されているのは多いと感じますね。がんになっても仕事を続けたい人は、早まってすぐに辞めないでくださいね。会社と折り合いを付けて働き続けられる可能性はありますし、退職するかどうかは時間をかけて考えましょう。

離職時期について、平成27(2015)年に国立がん研究センター中央病院、愛知県がんセンター病院及び独立行政法人国立病院機構 四国がんセンターの3施設で実施された調査で、治療開始後が48.3%、治療開始前が40.2%という数値が出ています(厚生労働省科学研究費補助金総合研究 高橋班:がん患者の離職実態調査(横断的観察研究)、平成27年/第58回がん対策推進協議会資料7:高橋 都 がん患者の就労支援<現状と課題>)。なんと4割の人ががんと診断を受けた段階で仕事を辞めている実態もあるのです。

治療と生活の基盤である収入への影響も大きく、これも調査により異なりますが、3~5割以上の人でがんに罹患後収入が減っています。収入減少の程度は、約6割の人が罹患前と比べて7割以下に減収、そのうち半数にあたる約3割の人では5割以下に減収したとの調査結果が出ています(厚生労働省 第2回治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会 資料,平成24年3月)。

収入の変化
厚生労働省 第2回治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会 資料,平成24(2012)年 ※5

「収入の変化」を見ると、約3割の人ががんになってから収入が減っているのですね。私はフリーランスですが、がんになってからは以前のように、がむしゃらに働くことをやめたので(1ヵ月間休みなしとか…)、収入は2割ぐらい減っています。減少した分は、家計簿をきちんと付けてやりくりしています。

次に、全国20歳以上の日本国籍を有する男女合わせて3,000人を対象に内閣府が実施したがん対策に関する世論調査(調査員による個別面接聴取法)で、平成25(2013)年1月、平成26(2014)年11月及び平成28(2016)年11月と継続して「がん患者と社会とのつながり」に関する質問が行われました。

仕事と治療等の両立について、「現在の日本の社会は、がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、働きつづけられる環境だと思うか」聞いたところ、「そう思う」又は「どちらかといえばそう思う」が各年3割に満たなかった一方、「どちらかといえばそう思わない」又は「そう思わない」は平成25(2013)年 68.9%から平成28(2016)年 64.2%へと調査年が新しくなるにつれてやや減少傾向はみられたものの、依然として仕事と治療等が両立しづらい環境であると感じる人が、治療等を行いながら働き続けられると思う人と比べて2倍以上多い状況が続いていることが示されました。性別では女性の方が働き続けることが難しいと感じており、年齢別では20~60歳代の就労世代を通して両立が困難と認識されていました。

仕事と治療等の両立についての認識

仕事と治療等の両立についての認識
内閣府 世論調査結果より作成 ※6

18歳以上の日本国籍を有する男女を対象とした平成28 (2016)年の調査において、日本の社会は通院しながら働き続けられる環境と思うかについて、「どちらかといえばそう思わない」、「そう思わない」と答えた人(1,170人)に「両立を困難にする最大の要因」について選択肢から1つを選ぶ質問を行ったところ、「代わりに仕事をする人がいない、またはいても頼みにくいから」、「職場が休むことを許してくれるかどうかわからないから」及び「がんの治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから」が上位3要因となり、次いで「休むと収入が減ってしまうから」、「がんの治療・検査と仕事の両立が精神的に困難だから」という回答が得られました。

両立を困難にする最大の要因

両立を困難にする最大の要因
内閣府世論調査(平成28年11月実施)結果より抜粋 ※7

このアンケート結果を見ると、がんになった人が通院するときに、代わりに仕事をしてくれる人がいなかったり、仕事を頼みにくかったり、職場に休むことを言い出しにくい、と考える人が多い様子がうかがえます。がんに限らず、休むことが必要な人をフォローする職場の仕組みを作ることが大切だと思います。

さらに、「働くことが可能で、働く意欲のあるがん患者が働き続けるようにするためには、どういう取り組みが必要だと思うか」を複数回答で聞いたところ、「病気の治療や通院のために短時間勤務が活用できること」が52.6%と最も高く、以下、「1時間単位の休暇や長期の休暇が取れるなど柔軟な休暇制度」、「在宅勤務を取り入れること」、「がん患者と産業医と主治医の連携」などでした。上位2項目の回答割合は、性別では女性で、年齢別では20~50歳代で高く、仕事と治療等を両立させるためには雇用主である事業者側の意識と働き方に対する法的支援が不可欠であることを裏付ける結果と言えるでしょう。

(原稿作成 2019年11月)

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