セカンドオピニオンは、主治医との信頼関係を深めるきっかけになります
現代用語として一般的になった「セカンドオピニオン」ですが、実際に主治医以外の医師から意見を聞いた経験がある患者さんは、セカンドオピニオンが必要だと思う患者さんのうち3割ほどです1)。日本ではまだまだ「先生の気に障るかもしれない」「主治医との人間関係を壊したくない」など、セカンドオピニオンに対して遠慮や罪悪感を抱く方がいるようです。
しかし、今の医師はセカンドオピニオンが患者さんの権利だということを理解しています。セカンドオピニオンを受けたいという申し出は「治療と真剣に向き合う」あなたの気持ちの表れであり、むしろ「セカンドオピニオンの結果を主治医に報告する」「意見交換をしながら治療法を検討する」といったプロセスを通じて、主治医との信頼関係がより深まるきっかけになると思います。
医師-患者関係においても「報(告)、連(絡)、相(談)」はとても大切です。セカンドオピニオンを受けた後は結果を主治医にきちんと報告し、意見交換することで、より納得のいく治療法を選択することができるでしょう。
セカンドオピニオンを上手く活用するポイント
セカンドオピニオンを上手く活用するコツは、次の通りです。
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1.なぜセカンドオピニオンを受けたいのか整理する
もっとも大切なことは、自分が「なぜセカンドオピニオンを受けたいのか」、「何を聞きたいのか」をはっきりさせておくことです。セカンドオピニオンとは文字通り「第二の意見」です。事前に主治医の「第一の意見」を理解したうえで「何に納得ができないのか」を整理しておきましょう。
主治医に対する不満や「今の治療法(第一の意見)を否定してほしい」という気持ちだけが先行すると、冷静な判断ができなくなります。こうした場合は、まず主治医や看護師、あるいはがん相談支援センターの職員などに心の内を打ち明けることをお勧めします。
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2.主治医に内緒にしない
なかには主治医に内緒でほかの病院を受診する人もいるでしょう。正確に言うとこの場合はセカンドオピニオンではなく、重複受診(ドクターショッピング)になります。検査データや紹介状がないので、問診-検査-診断という流れを最初からやり直す必要があり、時間を無駄に費やすことになりかねません。
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3.同一病院の他診療科でセカンドオピニオンを受けてみる
がんの基本的な治療として「手術」「放射線治療」「薬物治療」の三つがあります。一般に医師は自分が学び、実践してきた治療法に自信があるので、第一にそれを勧める傾向があります(そうでなくては困りますね)。一方、セカンドオピニオンの目的は、別の視点からの意見を聞くことです。したがって同じ病院内で別の治療法を専門にしている医師に意見を求めることも、セカンドオピニオンといえます。主治医が外科医だとすれば、放射線治療科や腫瘍内科でセカンドオピニオンを受けてみるとよいでしょう。
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4.主治医とは違う学閥のセカンドオピニオンを受ける
「○○流」ではないですが、医師の技能は出身医学部の講座(医局)の先輩から後輩へ脈々と受け継がれています。セカンドオピニオンは主治医とは「違った視点」が大切なので、主治医の出身大学の講座(医局)とは別系統の病院を探してみましょう。がん相談支援センターなどでセカンドオピニオン先を紹介してもらう際は、「別の視点からの意見が欲しい」ときちんと伝えることが大切です。
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5.セカンドオピニオンの結果を主治医に報告する
セカンドオピニオンの結果は必ず主治医に報告して、今度はセカンドオピニオンに対する主治医の意見を聞きましょう。別視点の意見と比較検討することで、患者さんにとって納得のいく最善の治療法を選択することにつながります。もしセカンドオピニオン先に転院する場合は、転院先での治療や入院生活がスムーズにいくように、詳しい臨床情報の引き継ぎをお願いしましょう。
1)厚生労働省. 受療行動調査 平成23年
- 監修:
- 埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生