がんは再発しやすい疾患です
正常な細胞は必要に応じて増えるのをやめ、他の細胞と入れ替わるような仕組みになっていますが、がん細胞はこの仕組みに異常があり増殖が止まらず、他の場所に移動しやすい性質もあります1)。そのため、治療で取り切れなかった目に見えない小さながん細胞が大きくなったり、放射線療法や抗がん剤治療でいったん小さくなったがん細胞が再度大きくなったりすることがあります。もともとの場所に近い位置で発見される「局所再発」や、遠くの臓器や骨に「転移」して見つかる場合も含めて「再発」と呼びます。
再発の時期や回数は、がんの種類や性質、あるいは最初にがん細胞が出現した場所が、血液やリンパの流れに乗ってがん細胞が転移しやすい大きな血管やリンパ節に近いかどうかなどの条件によって左右されます。たとえば肝細胞がんでは、肝臓に肝動脈と肝静脈に加えて門脈(もんみゃく)と呼ばれる静脈があり、血流量がとても豊富なので、がん細胞が血流に乗って遠くの肺や骨などに転移しやすくなります。
がん治療は日々進歩しており、再発・再々発にも対応可能です
がんが転移・再発した場合にも、治療は薬物療法(抗がん剤治療)、放射線療法、手術、緩和ケアが行われます。薬物療法は全身に影響を及ぼすことができますが、投薬を続けるうちに薬が効きにくくなる薬剤耐性が生じることがあります。しかし、近年は新薬の開発により薬の種類が増えたので他の抗がん剤に切り替えることで、再び、がんの勢いを抑えられることがあります。
国立がん研究センターが公表している5年相対生存率は、1993~1996年で53.2%2)、2011~2013年で68.9%3)と、約20年で15%ほど高くなっています。しかも、このデータは10年ほど前の医療レベルでの話であり、今現在はさらに再発や再々発に対応できる手段が、がん種にもよりますが増えています。
主治医や周りの医療者の意見を聞いて、選択肢を吟味しましょう
治療の選択肢が増えたことによる選択の難しさを感じることもあるでしょう。主治医はこれまでの経験と科学的根拠に基づいた情報を総動員し、患者さんにとって最善と思われる提案をしますが、患者さんの選択のしづらさもよく理解しているので、患者さん自身が抱えている治療と療養生活に関する疑問や不安、そして希望などがあれば胸にしまい込まず、主治医に話すことも重要です。ときには近くの看護師などの医療者にも意見を聞いて選択肢を吟味しましょう。
場合によっては、いつも利用している保険調剤薬局の薬剤師に胸の内を打ち明けてもよいと思います。最近は「かかりつけの薬局薬剤師」と病院の医療チームが一緒になってがん患者さんとご家族を支える仕組みができています。病院というちょっと緊張する場から離れ、より生活の場に近い町の薬局で、薬や治療、日常生活について相談できる「私の薬剤師さん」を見つけておくのもよいでしょう。
- 監修:
- 大阪国際がんセンター 心療・緩和科(精神腫瘍科)
部長 和田 信 先生