【発症】健康診断でIgM値が高いと指摘され、WMが発覚。
私が原発性マクログロブリン血症(以降、WM)であることに気付いたのは40代に受けた健康診断がきっかけです。健康診断を受けた病院で「IgM値が1,600mg/dLと高い。通常は200mg/dL程度です」と言われました。その後紹介された病院でWMと診断されました。しかし、当時は自覚症状もなく普段と変わらない生活を送れていたため、「自分が本当に病気なのか」と信じられない気持ちでした。
【診断】比較的楽観的な性格だったため、血液がんという診断に深刻に悩むことはなかった。
診断時、主治医からは血液のがんであることを告げられ、WMという病気について丁寧に説明を受けました。私はもともと落ち込むことが少ない楽観的な性格で、「人生はいずれ終わりを迎えるものであり、それが遅かれ早かれ運命だ」という考えを持っていたこともあり、がんの診断を受けても過度に悩むことはありませんでした。しかし、余命については気になって主治医に尋ねたところ、「WMはすぐに悪化はせず、ゆっくりと進行していく」と説明され安心しました。それまで特に食事や運動に気を使っていたわけでもなかったので、「これからどうなるのだろう」と思いましたが、すぐにどうこうなるような病気でもないと受け入れました。
【治療】IgM値が5,000mg/dL程度に達し、飲み薬による化学療法を開始した。
健康診断で指摘を受けた翌年にIgM値が3,000mg/dL程度まで上昇しましたが、自覚症状などはなく、引き続き血液検査を行いながら経過観察を続けました。また、通院の利便性を考慮し、診断を受けた病院から、居住地に近い総合病院の血液内科へ紹介してもらいました。
診断から5年ほど経ったころ、IgM値が5,000mg/dL程度まで上昇したため、飲み薬による化学療法を開始しました。服用開始から半年~1年でIgM値は低下しましたが、まだ高値であったため、腎臓などの合併症を防ぐ目的で点滴による化学療法に切り替えました。私はもともと医師を信頼するタイプで、病気や治療について妻とも「先生の言うことを聞いて対処しよう」と話していました。さらに「総合病院ではカンファレンスを行い、複数の医療者が議論して患者さんの治療を検討している」と説明を受けて、安心して主治医の治療提案を受け入れることができました。
味覚の変化などはあったが、点滴による化学療法を終えることができた。
点滴による化学療法では、最初の1週間だけ入院し、その後は外来で治療をしました。診断された時点で会社には病気のことを伝えていたのですが、点滴による化学療法を始める前に改めて、入院が必要であることや退院後も通院で仕事を休む場合があることを相談しました。
化学療法の間、特に入院中は味覚が変わり、病院食の味やにおいが気になるようになってしまい、食事を摂るのに苦労しました。処方された栄養剤を飲んだり、比較的食べやすいパンやバナナなどを食べたりして、体重を維持しました。化学療法を完了した時点でIgM値が低下し、体調も改善したため、しばらくは経過観察となりました。
微熱や体のだるさ、発疹・かゆみが生じて2回目の化学療法を実施した。
数年は治療をせず、経過観察で過ごしていましたが、しばらくして37.5℃程度の微熱や体のだるさが続くようになりました。さらに、仕事の海外出張から帰国後に発疹とかゆみが現れ、感染症の可能性が疑われたため検査をしたものの特定されず、WMの治療を再び開始することになりました。2回目の点滴による化学療法を完了すると、IgM値が低下し、症状も治まってきたため、再び経過観察となりました。
3回目の化学療法の後、新薬による治療を提案され、飲み薬の服用を開始した。
しばらく経過観察を続けていましたが、再び微熱や体のだるさが現れるようになりました。画像検査でリンパ節の腫瘍が確認され、放射線治療を行った後のことでした。その頃に貧血症状もあったため輸血を何度か受けた後、3回目の点滴による化学療法を実施しました。
治療を終えた後、主治医に「新薬を試してみませんか?」と提案され、飲み薬による治療を開始しました。飲み薬による治療は体に合っていたようで、現在まで服用を続けています。治療費の不安もありましたが、高額療養費制度を利用できるため助かっています。
私は主治医を信頼しているので、提案された治療は受け入れるタイプですが、もし3回目の化学療法を始める際に「点滴による化学療法か、新薬か」と治療選択肢を提示されていたら、提案された治療を自分の体に合うか試してみるという気持ちで、副作用などを確認した上で「新しい治療を試したい」と答えたと思います。
【現在】飲み薬による治療を続けながら、退職後は家族との時間や趣味を楽しみたいと考えている。
現在は飲み薬による治療を継続しつつ、皮膚科で処方された薬を用いて発疹やかゆみをコントロールしています。3回目の化学療法で入院した際、60歳目前という年齢の影響もあったのか、運動能力の低下を強く実感しました。これまでWMという病気で深刻に悩むことはありませんでしたが、この頃に家族や仕事について改めて考え直すようになったと思います。会社には「今後も入退院を繰り返して迷惑をかけるかもしれない」と相談し、退職について話し合いました。現在は勤務を続けていますが、退職後は家族との時間を大切にしながら、趣味のゴルフを楽しみたいと考えています。
以前は様々な検査を行っても、検査結果と自分の体調や症状を結びつけるのが難しいと感じていました。しかし、貧血が起きたときに輸血で体調が改善する経験を何度か繰り返したことで、血液検査で結果のどの数値に注目すればよいのか、だんだんとわかるようになりました。現在は検査結果を見ることで、自分の状態をある程度把握できるようになったと感じています。
鈴木さんからWM/LPLと向き合うすべての方への3つのメッセージ
- 1. 診断から20年近く経った今も、こうして元気に生きている。悪性リンパ腫と聞いても、くじけないで。
- 2. 飲み薬だけでなく、点滴の治療も仕事と両立できる。「がんだから」と諦めず、周りに相談して続けられる道を探そう。
- 3. 主治医は、あなたの命や生活を守るために最善を尽くしてくれる。地道な血液検査を続けながら、主治医と共に治療に取り組もう。