薬物療法は、抗がん剤を使用してがんの進行を抑えたり、症状をやわらげる治療方法です。抗がん剤は、作用の仕方などにより種類を分けることができ、細胞傷害性の薬による治療を「化学療法」、がん細胞の特定の分子を標的にしてはたらく薬による治療を「分子標的治療」と呼びます1)。原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞リンパ腫(WM/LPL)の薬物療法で使用できる薬には、以下のようなものがあります。
どの薬をどのような組み合わせで投与するかは、血液の状態、IgM型Mタンパクの量、年齢や合併症の有無を考慮して判断されます2)。
薬物療法に使用される薬の特徴
化学療法
主に細胞が分裂して増殖していくときに必要なDNAの合成・複製を妨げ、がん細胞の増殖を抑えるはたらきがあります。

(イメージ図)光が当たっているところは、攻撃の範囲を示します。
分子標的治療
特定の遺伝子のタンパク質に作用し、がん細胞が増えるのを抑えるはたらきがあります。

(イメージ図)光が当たっているところは、攻撃の範囲を示します。
- 1)国立がん研究センター がん対策情報センター 編著: がんになったら手にとるガイド 普及新版.2017; 学研プラス. 139-141.
- 2)日本血液学会 編: 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_3.html#soron(2025年4月閲覧)
化学療法の副作用1)
化学療法では、選ぶ治療の種類によって異なりますが、以下のような副作用があらわれることがあります。
アレルギー反応発熱 息苦しさ かゆみ 発疹 など
骨髄抑制感染症(発熱、寒気、喉の痛み など)、出血(鼻や歯ぐきからの出血、青あざ、血が止まりにくい など)、貧血(頭が重い、動悸、息切れ など)
貧血だるさ、疲れやすさ、めまい、息切れ など
出血のしやすさ鼻血、歯ぐきからの出血、血便、血尿 など
日和見感染症※発熱、寒気、喉の痛み など
血管痛点滴の針を刺しているところやその周囲の痛みや腫れ など
※免疫力が低下した状態で、毒性の弱い微生物などをきっかけに発症した感染症
上記のほか、吐き気・嘔吐や便秘、口内炎、疲労感、脱毛などがみられることがあります。
分子標的治療の副作用1,2)
分子標的薬によって、以下のような副作用があらわれることがあります。
骨髄抑制感染症(発熱、寒気、喉の痛み など)、出血(鼻や歯ぐきからの出血、青あざ、血が止まりにくい など)、貧血(頭が重い、動悸、息切れ など)
重度の皮膚障害発熱、全身が赤くなる、皮膚・粘膜のただれ、水ぶくれ など
過敏症寒気、ふらつき、汗をかく、発熱、意識の低下、口唇周囲のはれ、息苦しい、かゆみ、じんま疹、発疹 など
肝機能障害疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振 など

上記のほか、輸注反応(点滴投与時にみられる、呼吸困難や発熱、寒気などの症状のこと)や肺障害、心障害、末梢神経障害などがみられることがあります。
- 1)国立がん研究センター がん対策情報センター 編著: がんになったら手にとるガイド 普及新版.2017; 学研プラス. 143-147.203.
- 2)飛内賢正, 木下朝博, 塚崎邦弘 監. 永井宏和, 山口素子, 丸山大 編: 悪性リンパ腫治療マニュアル(改訂第5版).2020; 南江堂. 302-304, 327.
- WM/LPL:
- 原発性マクログロブリン血症(Waldenström's macroglobulinemia)
/リンパ形質細胞リンパ腫(lymphoplasmacytic lymphoma)
- 監修:
- 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院
血液腫瘍科 科長
伊豆津 宏二 先生