白血球の一種であるリンパ球※1が「がん化」して骨髄などで増える病気です。
原発性マクログロブリン血症(WM)では、IgM※2と呼ばれる抗体が過剰につくられます。
※1:リンパ球とは、白血球の成分の一つで体の免疫にかかわる細胞です。
※2:IgM抗体と呼ばれる、免疫システムに関わるタンパク質の一つです。主に、赤血球や細菌を集めたり、免疫システムを活性化させるなど、感染防御において重要な役割をもちます。
原発性マクログロブリン血症(WM)
原発性マクログロブリン血症(WM)は、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症とも呼ばれます。
原発性マクログロブリン血症は、リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)の中で、がん細胞が骨髄へ広がっていて、
血液中にMタンパクの一つであるIgM型Mタンパクの増加(IgM型M蛋白血症)がみられる場合を指します1)
(「IgM型M蛋白血症」参照)。
リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)
リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)はリンパ球の一つであるB細胞や形質細胞(B細胞が分化した細胞)、形質細胞になりかけのB細胞ががん化して、骨髄などで過剰に増える病気です1)。
B細胞は、形質細胞へと分化して、細菌などの異物と戦い、身体を守る抗体をつくり出すはたらきをもっています2)。がん化したB細胞は、過剰に増えながら、異物を攻撃する能力をもたない「Mタンパク」と呼ばれる抗体をどんどんつくり出します。このMタンパクが過剰につくられることにより、さまざまな症状を引き起こします2)。
原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞リンパ腫(WM/LPL)のメカニズム
原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞リンパ腫(WM/LPL)の症状
「B症状」と呼ばれる以下のような全身症状や貧血によるだるさ、リンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れ、さらに視力障害や意識障害、手足のしびれなど、さまざまな症状が起こります1,2)。
全身症状(B症状)

理由不明の発熱
(38℃以上)

大量の寝汗

体重減少
(6ヵ月で10%以上)
IgM型M蛋白血症1,3)
IgM型M蛋白血症は、IgM型Mタンパクが血液中に増えた状態です。
原発性マクログロブリン血症(WM)でみられるIgM型Mタンパクは、5つの抗体がくっついた大きなタンパク(マクログロブリン)です。
IgM型Mタンパクが増えると、血液の粘度が高まって「とろみ」がついたような状態になります。そのため、毛細血管の血液の流れが悪くなり、視力障害、意識障害、めまい、頭痛などの症状がみられることがあります。これを過粘稠度症候群と呼びます。
また、IgM型Mタンパクが神経に付着することにより、手足のしびれなどの末梢神経障害がみられます。
この他にも以下の症状がみられることがあります。
- 1)日本血液学会 編: 造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)
http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_3.html#soron(2025年4月閲覧)
- 2)飛内賢正, 木下朝博, 塚崎邦弘 監. 永井宏和, 山口素子, 丸山大 編: 悪性リンパ腫治療マニュアル(改訂第5版).2020; 南江堂. 35, 164.
- 3)Treon SP. Blood. 2015; 126(6): 721-732.
- WM/LPL:
- 原発性マクログロブリン血症(Waldenström's macroglobulinemia)
/リンパ形質細胞リンパ腫(lymphoplasmacytic lymphoma)
- 監修:
- 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院
血液腫瘍科 科長
伊豆津 宏二 先生