WM/LPLと向き合う ~わたしたちの体験記~ トップ 【発症から約4年】60代男性 田中さん(仮名) 【発症から約1年半】60代男性 水野さん(仮名) 【発症から約17年】60代男性 鈴木さん(仮名) 【発症から約2年】30代女性 高橋さん(仮名) 【発症から約4年】60代男性 田中さん(仮名) WM/LPL 血液のがん 心と暮らし 不安・悩み ・発症から約4年 ・会社員 ・趣味:ゴルフ、バイク 【発症】お風呂で胸を打撲したことからリンパ節の腫れが見つかる。 私が原発性マクログロブリン血症(以降、WM)であることに気付いたきっかけは、お風呂場で転倒して胸を打撲したことでした。打撲後、2日以上痛みが続いたため整形外科を受診し、骨には異常がなかったのですが、リンパ節が腫れていると指摘を受けました。急遽大きな病院で検査をすることになり、総合内科を受診しました。そこで受けたCT検査でもリンパ節に腫れがあったことから、「悪性リンパ腫の可能性がある」と医師に告げられ、今後の検査スケジュールについて話し合うことになりました。怖い病気にかかってしまったと思い、思わず余命をインターネットで検索しましたが、比較的冷静に受けとめられている自分もいて、複雑な心境でした。 【診断】「この病気に関しては治らない」といわれたことが印象的だった。 総合内科でCT検査を受けたのは、整形外科を受診した2週間後でしたが、リンパ節の腫れに変化はありませんでした。医師によると、一般的な悪性リンパ腫は1週間~数週間単位で進行する1)ので、それとは異なるものであろうとのことでした。また、急激に進行するようなリンパ腫であればただちにリンパ節生検を実施する必要があるそうですが、私の場合は生検部位のリンパ節の腫れがそこまで大きくありませんでした。生検をすること自体にもリスクを伴うため、少し期間を空けてもう一度CT検査を行うことになりました。3回目のCT検査でもリンパ節の腫れがほとんど拡大していなかったので、最終的にWMと診断されました。 診断を受けた時は、妻と2人で医師の説明を聞きました。私は漠然と「大変な病気になってしまった」と思った程度でしたが、妻のショックはとても大きく、医師が「今や2人に1人ががんになる時代だから」などと説明しながら妻をなだめようとしてくれました。ただ、「がんは治らない病気ではないが、WMに関しては治らない」といわれたことが印象に残っています。 診断後しばらくは経過観察を続けていたが、自ら生活習慣の改善に取り組んだ。 WMは完治が難しい病気ではあるものの、ゆっくりと進行し、余命も5年以上は期待できる1)と医師から説明を受けたので、それほど大きな恐怖心はありませんでした。一方で、私の場合はどのくらい生きられるのか、元気な状態があと何年続くのかは分からず、期限があるならそれまでにやりたいことはやっておきたいので、説明の後に自分でもWMについて調べました。また、治療が始まったら欠勤する必要があるため、診断された時点で勤務先に病気のことを伝えました。一般的に知られていないWMについて詳しく伝えるのが難しく(悪性リンパ腫の中で「低悪性度」であることなど)、勤務先には「悪性リンパ腫」とだけ伝えました。 診断当時は治療が必要な病状ではなく、早期治療によって余命が長くなるわけでもないため、できる限り治療開始を遅らせたほうがよいと医師から説明を受けました。私が調べた範囲でも、治療を早く始めることで余命が伸びるというエビデンスは見つからなかったので、医師の説明に納得しました。ただ、診断を受けて初めて「余命」を意識し、少しでも長く生きていたいと思うようになったので、他の病気にはならないよう生活習慣の改善に取り組みました。 【治療】仕事復帰を想定して点滴による化学療法を選択した。 血液検査を中心とした経過観察を2年ほど続けていたところ、それまで2,000mg/dL程度で推移していたIgM値が7,000mg/dL程度まで上昇しました。また、毎日夜間に発熱するようになり苦しいので予定より早めに治療を始めたいと医師に伝えたところ、翌月に治療が開始されることになりました。最初の治療として、複数の抗がん剤を組み合わせた点滴による化学療法か、飲み薬が選択肢として提示されました。どちらも有効性に差はないとのことでしたが、飲み薬は効いている限り生涯飲み続けなくてはならず、感染症などの副作用で仕事に支障が出るかもしれないと思いました。治療費が高額になるため、金銭的にいつまで服用を続けられるかが分からない不安もありました。点滴による化学療法は、食欲不振や気持ち悪さなどの副作用はあるものの、それを緩和する方法があり、半年程度で治療を終えられるとの説明がありました。治療を終えたら仕事に復帰したいと考えていたので、点滴による化学療法を選択し、骨髄生検の後に入院して治療することになりました。 インフュージョンリアクション※を経験しながらも治療を継続できた。 ※ インフュージョンリアクション(輸注後反応):分子標的治療薬の初回投与中や投与開始後24時間以内に起こる症状(発熱、悪寒・悪心、頭痛、投与部位の痛み、発疹など)の総称で、初回投与時、投与速度を上げた直後に症状が出現することが多い1)。 化学療法1サイクル目の投与開始直後にインフュージョンリアクションが起こり、投与を中断しました。その後、点滴速度を落として投与を再開し、時間をかけて1サイクル目の治療を完了しました。2サイクル目は通院で治療する予定でしたが、点滴速度を上げるとすぐインフュージョンリアクションが起こり、そのまま入院することになりました。以降は、点滴速度を慎重に調整してもらいながら化学療法を続けました。途中で、好中球の数値が悪化して治療を中断することがありましたが、WMは進行が遅いため2ヵ月程度であれば間隔が空いても問題ないだろうと考え、医師にもそれを確認しました。化学療法室の看護師が私の顔を覚えてくれていたので、安心して治療を続けることができたと感じます。 【現在】治療を終え、仕事をしながら経過観察を続けている。 治療開始から5ヵ月後、復職しました。化学療法を受けながらの勤務でしたが、治療後の気持ち悪さは1週間程度でなくなり、その他に大きな副作用はなかったので、かえって家で安静にしていることが苦痛で、仕事と化学療法を両立していました。現在は治療を終え、経過観察中です。 この先WMが再発した場合、もう一度化学療法を受けるのは嫌ではありますが、別の治療法もあるため大きな不安はありません。再発後も初回治療と同じように、医師の説明と自分で調べたエビデンスや生活面を総合的に考えた上で治療を選択すると思います。 外来は患者数が多く、医師の診察時間が限られているため、納得できる治療を選択するためには自分からも知識を得ることが重要だと感じています。また、自分で調べたエビデンスと医師の判断との間に相違があると困るので、信頼できる情報源から情報を得るようにしています。 田中さんからWM/LPLと向き合うすべての方への3つのメッセージ 1. 悪性リンパ腫だからと必要以上に怖れず、ゆっくり進行する病気であることを理解し冷静な判断を。 2. 仕事と治療の両立はできる。がん=退職ではなく、仕事を続けられる方法を医療従事者や職場の人と探していこう。 3. 限られた診察時間内で納得して治療を選ぶために、自分なりに病気のことを調べておくことが大切(自分自身でセカンドオピニオンを行うイメージ)。 1) 飛内賢正, 木下朝博, 塚崎邦弘 監. 永井宏和, 山口素子, 丸山大 編. 悪性リンパ腫治療マニュアル(改訂第5版). 南江堂. 2020 (2025年7月作成) 【発症から約1年半】60代男性 水野さん(仮名) WM/LPLと向き合う ~わたしたちの体験記~ トップに戻る