アピアランス(外見)ケアは、必要不可欠なものです
ほんの数年前までは、がん治療の副作用や合併症に伴う「外見の変化」は仕方がないものとされてきました。しかし、術後の入院日数がどんどん短縮されて外来薬物療法が当たり前に行われるようになり、日常生活を送りながら治療をするがん患者さんが増えてきました。このため、仕事の対人関係や子どもの学校行事などの社会参加に際して、がん治療に伴う「外見の変化の影響」が話題にあがるようになりました。
脱毛や皮膚障害(爪の変形、色素沈着など)、手術痕などによる見た目の変化は、切実な悩みであり、「命には関わらないのだから」と切り捨てることはありません。がんとの共存があたり前になった昨今、外見の変化に対するケアは必要不可欠なものです。外見のケアはがん患者さんの治療意欲を維持し、日常生活を支えるために欠かすことができないケアなのです。
まずは医療者に相談してみましょう
がん治療に伴う外見の変化に対するケアのことを「アピアランス(外見)ケア」といいます。国立がん研究センター中央病院外見関連患者支援チーム(現・アピアランス支援センター)の造語で、単なる外見のケアにとどまらず、自分らしく生きられるように患者さん自身の気持ちを整えるサポートなどもします。がんに伴うさまざまな変化で自分らしさや自信が奪われるやるせなさは一人ひとりで異なるため、定型化された方法はまだ確立していません。アピアランスケアでは、「患者さんが気になっていること」を医療者がうかがいながら、患者さんとともに最善の方法を探していきます。
美容や整容といった外見のケアについては、これまで女性だけのものだという偏見がありました。しかし実際は、男性も自分の見た目に心身の健康が左右されます。男性の場合は、「外見の変化が社会的信用に関わる」「がんだとバレて昇進に響く」など、外見=社会の評価と捉えることが多く、こじらせてしまうと社会の評価を気にするあまり、治療意欲までそがれかねません。
たかが見た目、されど見た目です。「男が見た目なんて」と意地を張らず、男性も治療の一環だと思って医療者に相談してみてください。
“アピアランスケアの手引き”などを参考に、セルフケアもしましょう
2021年に出版された「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン」は医療者向けの書籍で、作成にあたっては医療者、美容や心理学などの専門家が参加しています。ちょっと言葉が難しいのですが、例えば「日常整容編」では「安全な洗髪などの日常的ヘアケア方法は何か」「染毛してもよいか」など、患者さんが知りたかったことへの回答が記載されています。看護師やがん相談支援センターの職員の助けを借りながら読んでみるのもよいかもしれません。
患者さん向けの小冊子としては、国立がん研究センター中央病院 アピアランス支援センターのHPから男性向けのアピアランスケアのガイドブック「NO HOW TO(ノーハウツー)」や、髪、爪、肌、眉毛、まつ毛のケア方法についてのリーフレットなどがダウンロードできます(2023年2月21日閲覧、https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/appearance/080/index.html)。
- 監修:
- 国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科
科長 小川 朝生 先生