1中皮腫について

中皮腫は、どのように進行しますか?

中皮腫の多くは“びまん性”に進展する性質があり、進行するにしたがって、膜全体に広がっていくのが特徴です。

中皮腫には、1ヵ所にかたまって大きくなる「限局性」と、がんが発症した膜全体に広がる「びまん性」のタイプがあります。多くは「びまん性」で、発症部位となる膜の表面に沿って広がっていく性質があります。また、腹膜中皮腫では、進行していても、離れた臓器にがんが転移することは少ないことが海外の報告で示されています。
がん細胞の組織型の種類としては、「上皮様」「肉腫様」「二相性」に分けられます。これらのうち、頻度が高く病気の経過(予後)が良いのが「上皮様」で、全体の約60%を占めています。組織型は、診断時の病理組織検査で確認します。

組織型の種類と特徴

組織型(割合)特 徴
上皮様(約60%)病気の経過(予後)が、他の組織型に比べて良いタイプ。中皮腫では頻度が一番高い。
肉腫様(約22%)病気の進行が早く、病気の経過(予後)が悪いタイプ。腹水内にがん細胞が排出されにくい。
二相性(約18%)上皮様と肉腫様が混在しているタイプ。病気の経過(予後)は、上皮様と肉腫様の中間。
Gemba K, et al. Cancer Science, 103(3), 483-490, 2012
日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学改訂第7版, p387, 南江堂, 2024
日本消化器病学会雑誌, 100(5), 610-612, 2003
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厚生労働省「石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会報告書(平成15年8月26日):
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/08/s0826-4.html
日本石綿・中皮腫学会、日本肺癌学会編:中皮腫瘍取扱い規約第2版, p67, 金原出版, 2025
監修:
兵庫医科大学医学部 呼吸器・血液内科学 主任教授/胸部腫瘍学 教授
兵庫医科大学病院 副院長 呼吸器内科 診療部長 がんセンター長
木島 貴志 先生

(2025年9月作成)