発熱への対策

こんな症状

がん患者さんの発熱には、治療や病態が原因となるもの、感染症によるものなど、様々な原因がありますが、特に特徴的なものとして腫瘍熱があります。

【腫瘍熱の判断基準1)

  • 1日1回以上、37.8℃以上の発熱がある。
  • 発熱が2週間以上続く。
  • 感染症の疑いがない。
  • アレルギー反応ではない。
  • 少なくとも7日間の抗菌薬治療で平熱に戻らない。
  • 非ステロイド性抗炎症薬の服用ですみやかに平熱に戻り、服用中は平熱が保たれる。

主な原因

がんによるもの

【腫瘍熱】
悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫など)、急性白血病、腎細胞がん、肝細胞がん、骨肉腫、副腎がん、褐色細胞腫など
  • がん自体が産生する発熱物質(サイトカイン)によるもの
  • 死んだがん細胞から放出された物質と反応した免疫細胞(単球、好中球、リンパ球)が分泌する炎症性サイトカインによるもの

がん治療によるもの

  • 手術後の感染症、合併症など
  • 輸血、抗がん剤(化学療法)や放射線療法のために白血球が減少したときの感染

がん以外によるもの

  • 感染症
  • がんに併発して発症する血栓症(肺塞栓、深部静脈血栓症など)やがん性髄膜炎、脳出血など

がん患者さんの70%で発熱が現れ、なかでも感染による発熱の割合が最も高いとされます。がん患者さんは、抗がん剤による化学療法や放射線療法を受けていることで免疫が低下し、感染しやすくなっています。発熱したときは、すぐに受診し、原因を調べることが重要です。一方、原因がわからない不明熱においては、がん細胞や免疫細胞が産生する炎症物質(サイトカイン)による腫瘍熱が最も頻度が高いとされます。ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫で発熱するケースが多く、患者数が多い乳がん、肺がん、大腸がんではあまり認められません2)

体温と症状をメモしておくと診療の手がかりになるので、できるだけ同じ時間帯に体温を計り、記録しておきましょう。市販の解熱剤を用意しておく場合は、あらかじめ主治医に相談すると安心です。

【コラム】がんの熱か感染症か?

がん患者さんの発熱では、腫瘍熱と感染症によるものとの見極めが重要になります。感染症による発熱では、寒気やふるえ、呼吸が速く浅くなる、たんが出る、意識状態が変化するなどの症状が発現しやすく、一般に腫瘍熱より症状が重いとされます。腫瘍熱では、発熱期の間に平熱に下がる時期があり、再び発熱を繰り返すといった間欠熱かんけつねつという症状を示します。また、朝や夕方など毎日ほぼ同じ時刻に発熱することが多く、感染症による発熱と違い、寒気・ふるえ、脈が速くなりドキドキするといった症状を伴わないとされます。普段とは違う発熱が生じたときは、すぐに主治医の診察を受けてください。

発熱があるときの工夫

  • 寒気がするときは部屋を暖かくして、衣類や毛布、湯たんぽなどでからだを温めましょう。
  • 体温が上がったときは、熱がこもらないよう掛け布団を薄手のものに取り替え、部屋の温度を調節しましょう。
  • 氷枕や保冷剤で額や首筋を冷やすと不快感が和らぎます(ただし、熱を下げるためには、腋窩えきか(わきの下)、鼠径部そけいぶ、太ももなど血流の多い血管を冷やす必要があります)。
  • 汗をかいたときは、汗を拭いて、乾いた衣類やシーツに取り替え、冷えないようにしましょう。
  • 発熱が続くと脱水症状を起こします。喉が渇いていなくても、こまめに水分を取りましょう。
  • 食事は無理をせず消化のよいものを食べられる量だけ摂りましょう。できれば高タンパク、高エネルギーのもの(アイスクリームなど)がよいでしょう。
  • 高熱でなければ、寒気、めまい・ふらつきなどがなく、脱水症状がないことを確認したうえで、体力を消耗しない程度に短時間の入浴やシャワー浴で清潔を保ちましょう。
  • 入浴後は湯冷めをしないように注意し、水分を補給しましょう。
発熱で水分をとる女性のイラスト
参考
引用
監修:
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷三方原病院 緩和支持治療科
副院長 森田 達也 先生

(2023年4月作成)