11薬物療法の副作用とケア

薬物療法で使われる薬の副作用には、どのようなものがありますか?

副作用の種類や程度は、薬剤の種類や量によって異なります。治療中や治療後に、いつもと違う体調の変化を感じたら医師や薬剤師、看護師にすぐに相談しましょう。

殺細胞性抗がん剤

胃がんの治療で使用される殺細胞性抗がん剤の主な副作用
悪心おしん(吐き気)・嘔吐、貧血、骨髄抑制(白血球減少など)、食欲不振、末梢神経障害まっしょうしんけいしょうがい、下痢、手足皮膚反応、腎障害、口内炎、脱毛などです。
これらの出現時期はだいたいわかっており、状況に応じて、副作用を軽減させる薬を使うなど体調管理の対策を講じながら治療を進めます。
吐き気や嘔吐の対処法
  • 吐き気や嘔吐は、起きてから対処するより予防することが大切です。医師から処方された吐き気止めの薬は、指示どおり服用しておきましょう。
  • 吐き気が起きた場合は、番茶、レモン水、炭酸水、氷水などでうがいすると落ち着くことがあります。氷片などを口に含むのもよいでしょう。
うがいをする患者さん
がん化学療法レジメンハンドブック 改訂第6版, 羊土社, 2019
国立がん研究センター がん情報サービス 「がんになったら手にとるガイド」
もっと知ってほしい胃がんのこと, p20-21, NPO法人キャンサーネットジャパン, 2016
静がんメソッド 消化器癌・頭頸部癌編, p128-206, 日本医事新報社, 2018
【参考】化学療法の主な副作用について
殺細胞性抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常細胞にも作用するため、副作用が現れることがあります。
副作用の現れ方には個人差があり、症状の種類や強さも人によって異なります。また、患者さんが気づくものと、検査で確認するものがあります。
体に異常を感じたら、早めに医師、看護師、薬剤師に伝えてください。

※細胞障害性抗がん薬と呼ばれることもあります。

細胞障害性抗がん薬の主な副作用と発現時期

細胞障害性抗がん薬の主な副作用と発現時期
国立がん研究センター がん情報サービス「化学療法全般について」より許可を得て転載
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html
日本胃癌学会編:患者さんのための胃がん治療ガイドライン2023年版, p80, 金原出版, 2023
白血球減少に伴う感染症の対処法
  • うがいや手洗いを徹底しましょう。
  • 外出時はマスクをし、できるだけ人混みを避けましょう。
  • 入浴やシャワー、歯みがきなどを心掛けて、身体を清潔に保ちましょう。
  • 刃のあるカミソリは肌を傷つけやすいので、ひげ剃りは電気カミソリを使用して、切り傷を予防しましょう。
手洗いをする患者さん
口内炎の対処法
  • 虫歯、歯肉炎がある場合は抗がん剤投与前に治療しておきましょう。
  • 口腔内や唇の乾燥予防に、うがいをしたり、リップクリームを使用して保湿しましょう。
  • こまめにうがいをしましょう。やわらかい歯ブラシでていねいにみがきましょう。
  • 熱いものは冷ましてから食べましょう。
歯ブラシ
脱毛のケア
  • 抗がん剤投与から2~3週間後に抜け始めます。あらかじめ髪を短く切っておくと脱毛時のショックが和らぎ、脱毛時の処理も楽になります。
  • 抗がん剤の治療が終われば、多くの場合3~6ヵ月後には生えてきます。帽子やバンダナ、医療用かつらなどを使って上手に対処するとよいでしょう。
あらかじめ髪を短く切る患者さん

分子標的薬

胃がんの治療で使用される分子標的薬の主な副作用
食欲不振、貧血、薬剤注入に伴う反応、心機能の低下、高血圧、下痢、頭痛、鼻出血、疲労などがあります。
薬剤注入に伴う反応への対処法
  • 薬剤の投与から24時間以内に起こる過敏症です。投与中やその後に体調の変化があった場合、すぐに医療スタッフに伝えましょう。
心機能の低下への対処法
  • 動悸、息切れ、頻脈ひんみゃくがあった場合、すぐに医療スタッフに伝えましょう。
高血圧への対処法
  • 日々の血圧を家庭でも測定し、血圧が上昇していた場合、降圧剤を飲んで血圧をコントロールするとよいでしょう。
薬剤
鼻出血への対処法
  • 鼻血が出ることがありますが、大抵は軽度です。安静にしているとよいでしょう。出血がなかなか止まらない場合は、医療スタッフに伝えましょう。
がん化学療法レジメンハンドブック 改訂第6版, 羊土社, 2019
もっと知ってほしい胃がんのこと, p20-21, NPO法人キャンサーネットジャパン, 2016
静がんメソッド 消化器癌・頭頸部癌編, p146-158,181-185, 日本医事新報社, 2018

免疫チェックポイント阻害薬

胃がんの治療で使用される免疫チェックポイント阻害薬の主な副作用
疲労感、発疹、かゆみ、白斑、下痢、悪心、嘔吐などがあります。また、免疫関連特有の副作用として、内分泌障害、肺障害、胃腸障害、神経・筋・関節障害、肝・胆・膵障害、皮膚障害などの副作用が生じることもあります。
副作用がみられた場合は、状況に応じて休薬したり、ステロイド薬の投与が行われることがあります。
免疫関連の副作用-間質性肺疾患への対処法
  • 頻度は低いものの、特に注意が必要な副作用として、間質性肺疾患が報告されています。特徴的な症状は息切れ、息苦しい、発熱、痰のない乾いた咳、疲労などです。風邪の症状と似ていますが、早めの対応が非常に重要ですので、気になる症状が現れた場合は、すぐに主治医に連絡しましょう。
咳をする患者さん
免疫関連の副作用-下痢への対処法
  • 免疫チェックポイント阻害薬による下痢は、抗がん剤や分子標的薬でみられる下痢とは対処法が異なります。下痢が続く場合は、すぐに主治医に連絡しましょう。
日本バイオセラピィ学会「よくわかるがん免疫療法ガイドブック-患者さんとご家族のために-」作成ワーキンググループ編:
よくわかるがん免疫療法ガイドブックー患者さんとご家族のために, p28-31,44-49, 金原出版, 2020
監修:
静岡県立静岡がんセンター 副院長
寺島 雅典 先生

(2023年8月作成)