お腹周りの増大や張り、苦しさを主症状とする「腹部膨満(感)」は、がんそのものが張りの原因となる場合のほか、腸閉塞、腸の蠕動運動低下により消化物やガスが流れることができずに腸の中にたまることが原因の場合、お腹のなかに体液がたまる「腹水」が原因の場合があります。がん患者さんにおける腹水の原因として最も多いのは①がん性腹膜炎などがんによるもので、次に、②肝硬変・がんの肝転移などの肝臓に関わる病気が多く、①と②が合併する場合もあります。そのほか、③リンパ管の損傷や閉塞などリンパの流れの障害によっても腹水が発生します。また、がん以外の原因として④ネフローゼ症候群などの腎臓に関わる病気、⑤うっ血性心不全などの心臓に関わる病気、⑥細菌性腹膜炎、結核性腹膜炎などの感染性のものに大きく分けられますが、いくつもの原因がからみあっていることも多いので、医師による総合的な診断が必要です。
腹水がたまった患者さん全般について原因を調査したところ、90%が非がん性(肝硬変81%、心不全3%、結核性腹膜炎2%など)で、10%ががん性腹水であったとの報告があります1)。また、がん性の腹水は全がん患者さんの6%に出現し、卵巣がん、子宮体がん、乳がん、大腸がん、胃がん、膵臓がんが合わせて80%以上を占めると報告されています。残りの20%程度は原発巣がわからないがんでした2),3)。
腹水の治療には利尿薬の服用により排尿を促す、お腹に針を刺して水を抜く腹水穿刺などの処置がとられます。主治医の説明を受けてください。また、腸の蠕動運動を促す消化管機能改善薬や腸管閉塞による悪心・おう吐の改善、腹部膨満(感)による苦痛の緩和のための薬剤など、症状に応じてお薬が処方される場合もありますから、つらさや苦しさを我慢せず、医師に相談しましょう。