10薬物療法の副作用

薬物療法による副作用には、どのようなものがありますか?

副作用の種類や程度は、薬剤の種類や量によって異なります。治療中や治療後にいつもと違う症状を感じたら、医師や看護師、薬剤師にすぐに相談しましょう。

それぞれの薬剤でみられる副作用は次のようなものがあります。

【BCG】

  • 頻尿、排尿痛、血尿、発熱などがあります。まれにBCG(結核)感染、アレルギー反応、萎縮性膀胱などが起こることがあります。
  • 副作用の程度によっては、治療スケジュールや投与量の変更が必要になることがあります。
BCG

【抗がん剤】

尿路上皮がんの治療で使用される細胞障害性抗がん剤の主な副作用

  • 注入療法:頻尿、排尿痛、萎縮膀胱などがあります。
  • 全身療法:骨髄抑制(白血球減少・貧血・血小板減少)、吐き気・嘔吐、腎機能障害、肝機能障害などがあります。薬剤の種類によっては、脱毛、血栓症、末梢神経障害などが起こることがあります。間質性肺疾患にも注意が必要です。
抗がん剤
  • 抗がん剤の副作用は、休薬や減量、症状を改善する薬や生活の工夫で乗り切れるものも少なくありません。詳しいことは、主治医や看護師、薬剤師にあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がん/腎盂・尿管がん」
もっと知ってほしい膀胱がんのこと, p12-15, NPO法人キャンサーネットジャパン, 2015

【がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)】

免疫力が増強することで、他の薬剤では見られない免疫反応を介した症状が現れることがあります。

  • 特に重大な副作用としては、間質性肺疾患の発症が報告されています。間質性肺疾患の特徴的な症状は、息切れ、息苦しい、発熱、痰のない乾いた咳、疲労などです。そのほか、皮膚障害、肝・胆・膵障害、胃腸腸害(下痢、大腸炎) 、神経障害・筋障害、内分泌障害(甲状腺、下垂体、 1型糖尿病)、心筋炎を含む血管障害などが起こることもあります1)
  • 副作用がみられた場合は、状況に応じて休薬したり、ステロイド薬の投与が行われることがあります。
がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)

【抗体-薬物複合体製剤】

尿路上皮がんの治療で使用される薬剤の主な副作用

  • 倦怠感、発疹、脱毛、胃腸障害(食欲減退、吐き気、下痢)、手足のしびれ、視覚障害(かすみ目、角膜炎、ドライアイ)、高血糖などがあります。
  • 体調の変化など、気になる症状があれば、医師や看護師、薬剤師に伝えましょう。

副作用の対策として、症状を和らげる薬を使用したり、ご自宅でのセルフケアが役立つことがあります。気になる症状があったら我慢せず、早めに医師、看護師、薬剤師に伝えてください。

看護師のイラスト

国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がん/腎盂・尿管がん/薬物療法 もっと詳しく」
1)日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学 改訂第6版, p685-687, 南江堂, 2021
Halford. Z, et al. Annals of Pharmacotherapy, Vol.55(6): 772-782. 2021
Bajorin DF, et al. N Engl J Med. 2021; 384(22): 2102-2114
Powles T, et al. N Engl J Med. 2021; 384(12): 1125-1135

監修:
東京医科歯科大学大学院 腎泌尿器外科学 教授
藤井 靖久 先生