1尿路上皮がんについて

尿路上皮がんとは、どんな病気ですか?

尿の通り道の内側をおおう粘膜「尿路上皮」から発生するがんのことをいいます。「膀胱がん」と「腎盂・尿管がん」に分けられます

※尿道がんの一部も含まれます。

尿路(膀胱、腎盂、尿管、尿道の一部)の内側は、「尿路上皮」という粘膜でおおわれています。この粘膜から発生するがんは共通する性質を持っているため、臓器や器官にかかわらず「尿路上皮がん」と呼ばれています。
尿路上皮がんのうち、約90%を占めているのが「膀胱がん」で、日本では年間で約23,000人が膀胱がんと診断されています。「腎盂・尿管がん」は、尿路上皮がん全体の約5~10%と少なく、膀胱がんに比べるとまれながんといえます。

受診の主なきっかけは、痛みを伴わない血尿です。

尿路上皮がんの特徴的な症状は、血尿です。通常は痛みを伴わず、赤や茶色の尿が出ることで気づかれます。検診などの一般検査で血尿が見つかることもあります。膀胱炎のような症状(頻尿や排尿時の痛み、残尿感など)が見られることもあります。がんで尿管がふさがれてしまい腎臓に尿が溜まった状態(水腎症)になると、わき腹、腰、背中に痛みが生じたり、足がむくむ、といった症状が起こることもあります。がんで尿道がふさがれることもあり、尿が出にくくなることもあります。

尿路上皮がんの主な症状

尿路上皮がんの主な症状

腎盂・尿管・膀胱の位置と働き

腎盂と尿管は、腎臓でつくられた尿が通る管状の臓器で、膀胱とつながっています。腎盂と尿管は、左右にそれぞれ1対ずつあります。
膀胱は、骨盤の中にある袋状の臓器で、腎盂・尿管から送られた尿を溜め、尿道、体外へと排泄する働きがあります。

腎盂・尿管・膀胱の位置と働き

尿路にできるがんの組織型

尿路にできるがんは、そのほとんどが「粘膜上皮細胞」から発生する「尿路上皮がん」です。その他のタイプとしては、「扁平上皮がん」や「腺がん」などがありますが、頻度はまれです。

尿路にできるがんの組織型

国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がん/腎盂・尿管がん/がん統計」
日本泌尿器科学会編:膀胱癌診療ガイドライン2019年版[増補版], p10-20, 医学図書出版, 2023
日本泌尿器科学会編:腎盂・尿管癌診療ガイドライン2023年版, p50-52, 医学図書出版, 2023

監修: 東京医科歯科大学病院 病院長
東京医科歯科大学大学院 腎泌尿器外科学
教授 藤井 靖久 先生

(2024年7月作成)