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小野薬品の薬をご使用の方向け情報

尿路上皮がんの治療でオプジーボを使用された方へ

尿路上皮がんの治療と術後補助療法じゅつごほじょりょうほう

尿路上皮がんとは、腎盂じんう尿管にょうかん膀胱ぼうこうなど、尿が排出される通り道の内側をおおう粘膜(尿路上皮)に発生するがんのことをいいます。
尿路上皮がんのうち、筋層浸潤性尿路上皮がん※の治療は、腎尿管や膀胱の摘出を行う根治手術※が中心となりますが、患者さんによっては、がんの再発を抑える目的で手術後に薬物治療が追加されることがあります。こうした治療を「術後補助療法※」といいます。
従来は抗がん剤を用いた「化学療法」が行われていましたが、今回、異なる作用を持つ「がん免疫療法」が保険診療として承認され、治療の選択肢がさらに広がりました※※
がん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。

※詳しくは 「用語集」をご参照ください。
※※オプジーボによる治療の対象となる方(尿路上皮がん)については、こちらをご参照ください。

がん免疫療法

国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がん/腎盂・尿管がん」
オプジーボ添付文書 2022年3月改訂(第12版)

「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる

がん免疫とは

オプジーボとは

◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させがん細胞への攻撃を助ける治療薬です。

オプジーボは、T 細胞の PD-1 と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボが血液に入ると、T 細胞の PD-1 と結びつくことでがん細胞との結合が阻害され、かけられたブレーキが解除されます。
こうしたオプジーボの作用によって、T 細胞は、妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。

オプジーボについて詳細をみる

小野薬品の薬を使用された方へ
オプジーボ

オプジーボによる治療の対象となる方

◆尿路上皮がんに対する根治手術のあとに、がんの再発を抑えるための術後補助療法※を受ける患者さん

※詳しくは「用語集」をご参照ください。

オプジーボによる治療を受けることができない患者さん

オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。

オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん

次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。

  • ◎自己免疫疾患にかかったことがある方
  • ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
  • ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
  • ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
*:自己免疫疾患
免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、甲状腺機能異常症や関節リウマチ、1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。
**:オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。

治療のスケジュールと進め方

◆オプジーボは、30分以上かけて点滴で投与します。

◆治療スケジュールは、2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。

 治療スケジュールについては、主治医にご確認ください。

がん免疫療法

オプジーボ添付文書 2022年3月改訂(第12版)

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。

用語集

原発巣
がんが最初に発生した部位を「原発巣」といいます。尿路上皮がんは、腎盂や尿管、膀胱など尿の通り道(尿路)の内側をおおう粘膜(尿路上皮)から発生したがんをいいます。
もっとも多くみられる部位は膀胱で、全体の約90%を占めています。
再発
手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。尿路上皮がんは、尿路内のいろいろな場所に多発したり再発しやすい特徴があります。
転移
がん細胞はリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。
根治手術
病気を完全に治すことを期待して行われる手術のことをいいます。根治手術では、がんそのものの切除に加えて、がんが広がっている可能性がある臓器や組織なども含めて切除することがあります。尿路上皮がんの場合、腎尿管全摘術や膀胱全摘術が該当します。
筋層浸潤性尿路上皮がん
尿路上皮がんのうち、がん細胞が、腎盂、尿管、膀胱組織の「筋層」にまで及んでいる(浸潤している)がんをいいます。浸潤の有無は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)や手術後の病理診断で判別されます。
術後補助療法
手術後に、がんの再発を抑える目的で行われる治療をいいます。術後補助療法を行うかどうかは、がんの進行の程度(病期)や再発リスク、患者さんの体の状態などをもとに決められます。
T細胞
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T 細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫へのブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
1型糖尿病
主に自己免疫によっておこる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病する病気です。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
アナフィラキシー
アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急速に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。

小林恭, 医学と薬学, Vol.77(5), p689-693, 2020
国立がん研究センター がん情報サービス「がんに関する用語集/がんという病気について/薬物療法」
日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学 改訂第6版, p470-477, 南江堂, 2021
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第2版, 日本医事新報社, 2012

監修:
筑波大学 医学医療系 腎泌尿器外科
教授 西山 博之 先生