治療の選択

治療に対する意思決定
~皆さまへ~

診断、告知のショックの中で治療を選択する難しさ

がんと診断されたあと、多くの方はその衝撃の中で、治療法と治療中の生活について決断する必要に迫られます。一般的に治療の選択肢を提示されてから、数日〜1、2週間で意思決定を求められるでしょう。

しかし、ほとんどの方にとって、大病の治療法を自ら選択するのは初めてのことではないでしょうか。まして近年のがん医療は複雑さを増しているので、自分の決断がこれからどのように影響していくのかを予想できず、立ちすくんでしまうかもしれません。その一方で、早く治療を始めなくてはという焦りや混乱が生じると思います。

最善の治療法を探すためにインターネットでほかの患者さんの体験記や医療記事を検索する方もいるでしょう。しかし、一般的な情報の中に「今、ここに居るあなた」に合致した最善の選択肢が必ずあるとは限りません。そんなときはまず、診断を受けた病院の外来看護師や相談支援センターの常勤看護師(相談員)に話をしてみましょう。

その治療法が「あなたに」どんなメリットがあるのかを考える

なぜ、看護師なのでしょうか。がん治療では医師、薬剤師、看護師などのさまざまな職種の医療者が、患者さんの望むよりよい治療を行えるように努めています。特に多くの患者さんと接している看護師は、がんのチーム医療の中で患者さんの意思決定を支える大切な役割を担っており、患者さんのステージ(病期)や全身の状態から「いつ、何が起こるか」を予想し、患者さんが選択された治療法とその副作用が、生活にどのように影響するのかを推測できるだけの経験を積んでいます。また、患者さんの気持ちに寄り添う職業的な訓練を受けていますので、素直に不安を吐き出しても受け止めてもらえます。

大切にしていることを書こう!

治療法を相談する前には、自分自身が何を基準として治療法を選びたいのかをはっきりさせておきましょう。例えば「身体にメスを入れたくない」「仕事を続けたい」「子どもの世話をしなければならない」など、自分自身にとって何が大切なのかを書き出しておくとよいと思います。

同時に困ることなども整理しておきましょう。「副作用」や「手術のリスク」のほか、「治療費や治療中のお金の問題」「入院中の付き添いがいない」など、現実的な課題が出てくるはずです。

大切なこと、困ることなどを明確にしてから治療の選択肢に関する説明を受けると、その治療の「あなたにとっての」メリットとデメリットがはっきりしてきます。もしかすると、自分にとって100点満点の治療法はないと感じるかもしれません。

次の段階では、大切なことの優先順位と家族や友人の助けを借りて解決できる課題を整理しながら「100点満点ではないけれど、今、ここで選択できる最善の方法」を考えましょう。このときも一人で考え込まずに、これから一緒に乗り越えていくご家族の意見を取り入れ、看護師や相談員に相談しましょう。

監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生

(2023年4月作成)

治療に対する意思決定