~医師が答えるAYA世代・働く世代の相談室~
メンタルのお悩み編

AYA世代とは、15歳~39歳の思春期・若年成人世代のことをさします。

がんになってから、同情されても素直に受け入れられず、
さいなことでイライラします。そんな自分が嫌になります。

女性のイラスト

長期的な視野で、ものごとが考えられなくなりました。
少しずつ先のことが考えられるようになるのでしょうか? 

男性のイラスト

何をするにもやる気が出ません。

男性のイラスト

治療が終わり、体は回復しているのに、精神的なダメージから回復できません。
元のように心も元気になるには、どのくらい時間がかかるのでしょうか?

女性のイラスト

治療後しばらく経ってから気持ちが落ち込んでしまったとき、
どこに相談すればよいでしょうか?

男性のイラスト

周りの人からよく「大丈夫」と言われますが、「何も知らないくせに」と思ってしまいます。
逆に、医師はなかなか大丈夫と言ってくれません。

男性のイラスト

無理に前向きになる必要はありません。

つらいときは、一人で抱え込まず、身近な方や医療者に頼りましょう。

お医者さんのイラスト

がんになると、気持ちが落ち込んでしまい、「なかなか前向きになれない」「やる気が出ない」という声をよく聞きます。そんなときは、無理して気持ちを奮い立たせる必要はありません。がんという大きなストレスに出合い、気持ちの浮き沈みがあるのは、当然のことです。精神的な悩みはどこで相談すればよいのか、つらさや苦しさを改善する方法はあるのか、がん患者さんの多くが抱えるメンタルの悩みについて、がん研有明病院患者・家族支援部長の高野利実さんに答えてもらいました。

がんになって不安にならない人はいない

がんという大きな病気になって、さまざまな不安がある中で、落ち込んでしまうのは当然なことです。特に告知を受けたあとは、「これから、どうなってしまうのだろう」と、先が見えないことに不安を抱くと思います。そんなとき、無理にポジティブに考えたり、明るく振舞ったりする必要はありません。つらければ、しばらく休んでみるのがよいかもしれません。
不安な気持ちを抱えたまま、ずっとネガティブな感情でいると、心が参って、疲れ切ってしまう(うつ状態になる)ことがあります。精神的につらいときは、我慢せず、私たち医療者に助けを求めてください。

相談の内容によっては、精神科や心療内科への受診をおすすめすることもあります。「やる気が出ない」「気持ちがふさいでいる」「何をしても楽しく感じられない」といった気分の落ち込みがあるときや、不眠などの症状があるときは、早めに担当医に相談しましょう。

がん患者さんや家族の心をサポートする「サイコオンコロジー」

がん患者さんとそのご家族を対象に、心のつらさを和らげるためのサポートをするために、「サイコオンコロジー(精神腫瘍学)」という学問が発達してきました。病院によっては、「精神腫瘍科」といった科もできていますし、臨床心理士(公認心理師)が相談に乗ってくれるような窓口もあります。治療が始まる前、治療中、治療後、どんなタイミングであっても、不安を感じている方は、気軽に相談してみてください。どこに相談すればよいか分からないときは、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターに相談してみるとよいでしょう。

しんどいときは周りに頼る

病気だけでもしんどいのに、周囲から「頑張れ」や「絶対、大丈夫!」と言われ、プレッシャーになってしまうこともあると思います。がんという病気には過剰なイメージがつきまとうため、周りの人も戸惑ってしまっているのかもしれません。「今まで通り、普通に接してくれればいいんだよ」など、気持ちを伝えてみてもよいと思います。

「医師は『大丈夫』と言ってくれない」という声がありましたが、私はけっこう「大丈夫」という言葉を使っています。もちろん、未来のことは分かりませんし、医療も不確実なわけですが、どんなふうになっても、一緒に決めた目標に向けて進んでいくことには変わりありませんので、あわてなくて大丈夫だと伝えます。
過去の自分や理想の自分を基準に、「自分はこうでなければいけない」と、無理に頑張ってしまう患者さんも多いですが、今のままで大丈夫だと言うこともあります。
自分らしく生きるために、これを大事にしたいということがあれば、それを医療者にも伝えておくことも重要です。治療も大事ですが、治療のために生きているわけではありませんので、自分らしく生きるためにできることを一緒に考えていきましょう。
そして、つらい気持ちになったときは、一人で抱え込まずに、家族や友人など、周りの人たちや、医療者に相談し、話を聞いてもらうようにしましょう。しんどいときは周りに頼って大丈夫です。

監修:
がん研有明病院 院長補佐 乳腺内科部長
患者・家族支援部長
高野 利実

(2023年3月作成)