あなたと一緒に、がんと向き合う
治療の選択

医療不信
~48歳女性 肺がんの場合~

Gさん:48歳 女性
会社員。非喫煙者だが、検査で肺がんと診断される。
喫煙者の夫と二人暮らし。

Gさんは、CTによる精密検査で肺がんと診断されました。病名を聞いた際に「たばこを吸っていないのに」と言ったところ、担当医が顔も見ずに「ああ、ご主人が吸っていますね」と延々と受動喫煙の話をし始め、家族を否定されたような気がして落ち込んでしまいました。

48歳女性

冷静に「傷ついた」ことをその場で伝えましょう

「肺がんと診断されて自分の生活スタイルの何かが悪かったのだとショックでした。主治医から受動喫煙の危険性を延々と話されたときには、夫までも否定されたようでさらに落ち込みました」(Gさん)。

診断から始まる長い治療の間では、主治医が無意識にとる態度や言葉に傷つけられることがあると思います。残念ですが、言った当事者は、あなたが「傷ついた」と言葉にして伝えない限り「傷つけた」ことに気がつきません。夫婦関係や友人関係と同じように自分にとって辛い経験をしたときは、感情的にならずに落ち着いて「嫌だ」という思いをその場で伝えることが最善だと思います。

ただ、主治医に自分の気持ちを伝えることは難しいかもしれません。「クレーマーだと思われるのではないか」「ちゃんと治療をしてもらえなくなるのではないか」「私の勘違いだったらどうしよう」などと考えてしまうと思います。

告知の直後や治療方針が決まり治療が始まるまでの期間は、特に不安や動揺が強く、相手の態度や言葉に敏感に反応してしまうものです。ただ、もし誤解や行き違いだったとしても、そのまま放っておくとわだかまりが強くなるだけではないでしょうか。言葉につまりながらでも「話を聞いて辛かった」と伝えていきましょう。

また、看護師や相談支援センターの職員に相談するのも一つの方法です。現在のがん医療は「チーム医療」が基本です。主治医だけではなく、看護スタッフ、ほかの診療科の医師、ソーシャルワーカーもあなたのサポーターです。

聞きたいことを整理しておきましょう

最近はがんの治療でも入院期間が短縮され、外来で治療を続けるパターンが一般的になりました。これに伴い医師とコミュニケーションをとる時間も限られ、不安になることも多いと思います。

こういうときは、受診前に自分の体調と質問したいことを整理し、聞きたいことをメモにまとめておくと診察時間を有効に使うことができます。聞きたいことに優先順位をつけておくと、なおよいかもしれません。主治医のペースに巻き込まれて質問するタイミングを逃しても「最後にこれだけは聞きたい」と優先順位が上にあるものについて質問をすることができます。それだけでも少しは前進したなと感じるかもしれません。

また、主治医に直接聞きにくいときは、看護師を通じて「先生が言った○○って何のことなんでしょう」とワンクッションを置きながらコミュニケーションを深めていくことも一つの方法だと思います。

ある患者さんは何回かのやり取りのあとで「主治医は治療の人」と割り切り、わからないことは看護師や薬剤師に再確認したり、気持ちが落ち込んで辛いときは、相談員や心の痛みの専門家である精神腫瘍医(サイコオンコロジストといいます)や緩和ケア医に話したり、と役割を振り分けていました。一見ドライな関係のようですが、医療者の役割を尊重しているともいえるのかもしれません。

聞きたいことを整理
監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生