6手術について

どのような手術が行われますか?

標準手術は、がんのある肺葉を切除する「肺葉切除術はいようせつじょじゅつ」です。

標準手術とは、がんの外科療法の中で最も基本的な手術をいいます。
肺がんでは、がんがある肺葉(上葉、中葉、下葉)をブロックごとに切除する「肺葉切除術」が標準手術とされています。多くの場合、近くにあるリンパ節もあわせて切除します(「所属リンパ節郭清かくせい」といいます)。
また、がんがごく早期に見つかった場合や、患者さんの状態(体力や術後の呼吸機能など)によっては、がんを完全に取り除きながら肺の機能を温存するために、切除範囲を狭くした「縮小手術」が選択されることも増えてきました。
手術の方法としては、胸を切開して病巣を切除する「開胸手術」と、胸部に胸腔鏡を挿入しながら病巣を切除する「胸腔鏡下手術」の2つの方法があります。近年では、患者さんの負担が比較的少ないことから、胸腔鏡下手術が広く用いられています。

術後の合併症を防ぐために

肺がんの手術を受けたあとは、痛みや麻酔などの影響で呼吸が浅くなり、痰をうまく出せなくなって肺炎を起こすことがあります。
こうした合併症を予防するためには、手術の前に腹式呼吸法や痰の出し方を練習して、しっかり痰を出せるコツを習得することが大切です。

手術前の準備で心がけたいこと
  • 禁煙する(喫煙者の場合)
  • 痰が出やすくなるように、腹式呼吸法を身につけておく
  • 食事や運動などの日常生活に気をつけ、体力維持につとめる
解説する看護師のイラスト

詳しいことは、主治医や医療スタッフに相談してください。

日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック 2021年版, p82-84, 金原出版, 2021
健康ライブラリーイラスト版 肺がん, p50-53, 92-94, 講談社, 2015
国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん」

主な手術の種類と切除範囲

肺葉切除術
肺がんにおける肺葉切除術の切除範囲の図
がんのある肺葉を、1つまたは2つ、ブロックごとに切除する方法です。多くの場合、所属リンパ節もあわせて切除します。
縮小手術
肺がんにおける縮小手術の切除範囲の図
切除範囲をより狭めた手術です。がんのある肺区域を切除する「区域切除」と、がんとその周辺を楔形くさびがたに切除する「楔状切除」があります。

手術の方法

開胸手術 
肺がんにおける開胸手術の図
背中側から皮膚を切開して胸を開け、病巣を切除する方法です。(切開する場所は切除部位によって異なります。)
胸腔鏡下手術(VATSバッツ
肺がんにおける胸腔鏡下手術(VATS)の図
胸部に小さな孔(ポート)をあけて胸腔鏡を挿入し、カメラが捉えた画像をモニターで見ながら病巣を切除する方法です。
※2018年の保険適用に伴い、ロボットを用いた胸腔鏡手術(RATSラッツ)も行われています。
日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック 2021年版, p82-84, 金原出版, 2021
インフォームドコンセントのための図説シリーズ 肺がん 改訂5版, p91-95, 医薬ジャーナル社, 2017
肺がん診療ポケットガイド, p54-57, 医学書院, 2016
監修:
近畿大学医学部 内科学 腫瘍内科部門 主任教授
中川 和彦 先生

(2023年3月作成)