- VVさん:63歳 男性 肺がんの複数回再発
- 妻を早くにがんで亡くし一人暮らし。一人息子夫婦が遠方に住んでいる。
4年前に肺がんと診断され手術を受けました。2年後に局所転移(再発)が見つかり放射線照射を受けましたが、その3ヵ月後、脳転移(再々発)が認められたため薬物療法を始めました。
公的年金の受給開始年齢を確認しましょう
「年齢も年齢でしたから、最初の再発時点で会社は退職しました。その後は、短期のアルバイトなどをしていたのですが、薬物療法を始めてから倦怠感(だるさや疲れ)が強くて……。年金が支給されるまでは、貯金を切り崩して生活するしかありません」(VVさん)。
公的年金(老齢年金)の受給開始年齢は2022年1月現在、厚生年金、国民年金ともに原則65歳からです。ただし、年齢によっては60〜64歳の間に報酬比例部分(在職中の平均月収と厚生年金の加入期間をもとに計算される金額)の受給が可能です。VVさんは、昭和33年(1958年)6月生まれで厚生年金の被保険者だったので、63歳から報酬比例部分を受給することができます1)。
年齢が条件に合わない場合は、公的年金の受給開始年齢を繰り上げることもできます。ただし、受給できる年金額は「繰り上げ月数×0.4%(2022年4月より減額率が0.5%から0.4%に緩和されました。1962年4月1日以前生まれの人の減額率は0.5%のままです)」が減額されるので注意が必要です(減額は65歳までで、65歳以降は減額された年金額が生涯支給されます)2)。
がんでも障害年金がもらえることがあります
意外と知られていないのですが、がん患者さんはがんによる支障の程度によって障害年金の受給対象になります(本サイト障害年金を参照ください)。がん治療中の身体状態から就労に支障が出てくる段階で障害認定される可能性がありますし3)、障害基礎年金は20歳から障害状態が続いている限り支給されます※1ので、障害年金はがん患者さんの経済的支援に重要な役割を果たします。
なお、年金は1人1年金が原則で、たとえば老齢基礎年金(国民年金)と障害基礎年金を同時に受け取ることはできません4), ※2。一般的には、障害基礎年金は老齢基礎年金よりも支給金額が多く、非課税なので障害基礎年金を選んだ方が負担を減らせます。
※1
障害年金も他の年金と同じく、障害基礎年金と障害厚生年金があります。障害厚生年金は障害時に会社員として厚生年金に加入していれば20歳以前から支給されます。
※2
65歳以降は特例として障害基礎年金+老齢厚生年金など、併給できる場合があります4)。
これらの年金の制度や手続きはとても複雑です。一人で判断をせずに、自治体の年金事務所のほか、がん相談支援センターのスタッフや医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談することをお勧めします。事前に日本年金機構の「ねんきんネット(https://www.nenkin.go.jp/n_net/index.html、2023年2月21日閲覧)」でご自身の納付状況を確認しておくと話がスムーズに進むでしょう。
介護が必要になれば、65歳未満でも介護保険サービスが受けられます
一般的に、介護保険サービスは65歳以上で適用されますが、65歳未満でもがんで生活に介護が必要になれば受けることができます5)。「ほら、一人暮らしだし、脳転移があるし、何か起こったらどうしようと心配していました。私の場合、自己負担額は受けたサービスの1割で済むとのことで安心して申請できます」(VVさん)。
医療ソーシャルワーカーは患者さんやご家族が抱えている経済的、心理的、社会的な問題を社会福祉の観点から支援してくれます。支援制度があるかどうかわからなくても、医療ソーシャルワーカーにまず相談し、必要な情報を受け取るようにしましょう。
- 監修:
- 大阪国際がんセンター 心療・緩和科(精神腫瘍科)
部長 和田 信 先生