あなたと一緒に、がんと向き合う
治療の選択

ドクターショッピングのわな
〜27歳女性 子宮頸がんの場合〜

Oさん:27歳 女性 子宮頸がん・前がん病変
会社員。ブライダルチェックで子宮頸部の異形成(前がん病変)を指摘される。
結婚、妊娠・出産を希望している。

“そろそろ結婚して赤ちゃんが欲しいね”と、妊娠前検査(いわゆるブライダルチェックです)で受診したレディースクリニックで、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染と子宮頸部に前がん病変が認められ、精密検査を勧められました。

27歳女性

妊娠・出産に影響すると聞いて、泣いてしまいました

「女の先生から“ちょっと顔つきの悪い細胞があるので、精密検査をしましょう”と生真面目な顔で言われたときは、“もしかしてがん?妊娠は?”とパニックになってしまいました」(Oさん)。Oさんは、その日のうちに膣拡大鏡診(コルポスコープ診ともいいます)と組織診(細胞診よりも大きな検体を採取します)を受け、結果は後日となりました。

結果を待つまでの間、Oさんは子宮がんに関するネットの情報をあさりました。子宮頸部のがんの場合は、がん検診で異常を指摘されても自然に治癒するケースがあること、その一方で、Oさんと同世代の女性のがんでは子宮頸がんが多く、手術して子宮を残せても流産の可能性が高くなることを知り、仕事や家事が手につかないほど不安だったそうです。

2週間後、クリニックで「子宮頸がんの一歩手前です。円錐切除術を受けたほうがよいでしょう」と告げられました。円錐切除術は子宮を温存できる手術ですが、子宮頸部が短くなることで、早産する確率が高くなり、また妊娠しにくくなる可能性もあります。Oさんは気がつくとボロボロと泣いていました。

何を解決したくてドクターショッピングをしたいのか、はっきりさせましょう

その後、Oさんはクリニックからの提案を拒否し、数ヵ月の間、複数の婦人科に検査の予約を入れ続けました。「手術の必要はない」と言われたい一心だったそうです。しかし、検査結果と治療方針に変わりはありませんでした。

Oさんは受け入れがたい告知に直面したことで、ドクターショッピングに陥ってしまいました。ただ、現在のがん治療は診断方法や標準療法が確立しているので、複数の医師で意見が大きく異なることはまれです。おそらく、ドクターショッピングをされている皆さんも、薄々そのことを感じているのではないでしょうか。

これはあくまでも推測ですが、最初のクリニックの医師が、Oさんの最大の関心事だった妊娠・出産の可能性について話す時間をきちんととっていればOさんの行動も違っていたかもしれません。

ドクターショッピングは自分を助けたい気持ちの表れですが、貴重な時間を失うことにもなりかねません。ドクターショッピングに陥る前に、自分のなかに生じている抽象的な「不満」や「不安」といった感情を具体的な言葉に落とし込んでみましょう。具体的には信頼できる友人や家族に頼み、愚痴や不安に思っていることを聞いてもらうとよいでしょう。その際「話している間は、批評やアドバイスを挟まないでほしい」と頼んでおくとよいと思います。

「あの医者のここが不親切だ」「出産に影響があると知ったら、彼は結婚しないかもしれない」など、何を解決したくてドクターショッピングに陥りそうなのか、その正体がわかってくるはずです。

監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生
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