診断・告知

がんだと告げられて思うこと
~75歳男性 胃がんの場合~

Dさん:75歳 男性
年金で一人暮らし。2年前に配偶者を乳がんで亡くした。2人の息子は独立し、それぞれ遠方に居を構えている。

地区の検診の結果から総合病院を紹介されたDさん。内視鏡検査の結果を聞きに行く際に「ご家族に同席してもらってください」と言われ、長男が付き添ってくれることになりました。

75歳男性

「うわべは落ち着いていたが、何を言われたのか…」

「病名を告げられたとき自分では落ち着いていたつもりだったが、本当は何を言われているのか意味がわからなかったんだ」(Dさん)。

「うん。説明を受けた後に次の予約を取ろうとしたら、僕に“え、どうして”なんて言うから、びっくりしたよ」(Dさんの息子さん)。

Dさんのように年を経て経験を積んで来られた方であっても、悪い知らせを告げられたときは、ショックで何も考えられないものです。自分では落ち着いているつもりでも、病名から先の話は「ただの音」として聞こえているだけで、後から思い返すと何も覚えていないことがあります。

精密検査やがんの細胞診、組織検査などの結果を聞きに行くときに、ご家族の同席を求められた場合は、できるだけご家族と一緒に受診するようにしてください。ご家族の都合がどうしてもつかないときは、親しい友人に同席をお願いしてみましょう。

また、お一人で診断名を聞く人もおられると思います。自分では理性的に振る舞っているつもりでも、いざ話が終わって立ち上がろうとすると、緊張とショックのあまり、足元がしっかりしないことがあります。そんなときは看護師に話をして落ち着いて休める場所に案内してもらいましょう。病院に相談室や相談支援センターがある場合は、そちらに移動して相談員に話を聞いてもらうのもよいでしょう。

慌てて色々な決断をすることは避けましょう

気持ちが動揺して何も手につかないときは、自分自身の心が落ち着いてくるのを待ちましょう。がんは数日で急に大きくなる可能性は少ないので、何もわからないまま慌てて色々な決断をすることは避けてください。

一方、ご家族は「自分が代わりに詳しく聞いて、説明しなくては」と思うかもしれませんが、ご本人が周りの言うことに落ち着いて耳を傾ける気持ちになるまでには、時間がかかります。焦らずにご本人が落ち着きを取り戻して「あれはどういう意味だったんだろう」「手術する必要があるのかな」など、担当医の説明した内容を振り返ったり、治療のことを口にするようになるまで待ってから、「そうだね」と受け止め、一緒に整理していくようにしてください。

この際には、お互いに担当医の話を理解できているのかどうか、わからないことはないか対話をしながら確認してみましょう。一緒に担当医への質問を書き出しておいて、次の外来で質問をしてみるとよいかもしれません。人と話をしながら、これからの治療や生活を考えたり、頭の中を整理したりすることは心を落ち着かせるうえでも役に立ちます。

確認と理解
監修:
埼玉医科大学国際医療センター 包括的がんセンター 精神腫瘍科
教授 大西 秀樹 先生

(2023年4月作成)

がんだと告げられて思うこと