小野薬品の薬をご使用の方向け情報
胃がんの治療でオプジーボと化学療法による併用療法を受けた方へ
進行・再発胃がんに対する治療法
胃がんの治療は、多くの場合、手術が主体となります。しかし、病気が進行してがんがほかの部位に転移※している場合や、手術が難しい場合、再発※した場合などは、お薬を使った全身的な治療である「薬物療法」が考慮されます。
薬物療法については、〝がんと免疫〟に関する研究が進み、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が開発され、治療の選択肢がさらに広がりました※※。
がん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。
国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん/免疫療法」
日本胃癌学会:胃癌治療ガイドライン医師用 2021年7月改訂 第6版, 金原出版, 2021
オプジーボ電子添文 2024年7月改訂(第21版)
「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる
がん免疫とはオプジーボとは
◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
オプジーボは、T細胞にかけられた免疫のブレーキを解除する働きがある「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボは、血液に入ると「PD-1」と呼ばれるT細胞のアンテナに結びつくことで、抑制信号をブロックし、免疫のブレーキを外します。
こうしたオプジーボの作用によってT細胞は、妨害を受けることなく、再びがん細胞を攻撃できるようになるのです。
オプジーボについて詳細をみる
小野薬品の薬を使用された方へオプジーボ
化学療法(抗がん剤治療)とは
◆がん細胞を直接攻撃する従来型の抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)を用いた治療法です。
がん細胞は、細胞分裂を繰り返して異常に増殖します。
化学療法で使われる細胞障害性抗がん剤は、主にがん細胞の増殖過程に作用して、がん細胞の増殖を阻止する働きがあります。
オプジーボと化学療法の併用療法について詳細をみる
小野薬品の薬を使用された方へオプジーボ・化学療法併用療法
オプジーボと併用するお薬の種類
オプジーボと化学療法による併用療法は、使われるお薬(抗がん剤)の組み合わせによって、「
それぞれお薬の種類やスケジュールが異なりますので、ご自分が受ける治療法について、主治医によく確認しておきましょう。
CapeOX療法は
ホリナートカルシウムは本邦適応外です。
実際の治療に使用する薬剤については医療従事者にご確認ください。
臨床試験で使用された薬剤名を記載しています。
オプジーボ電子添文 2024年7月改訂(第21版)
オプジーボ・ヤーボイ適正使用ガイド(2024年8月作成版)
治療の進め方とスケジュール
臨床試験で使用された薬剤名を記載しています。
①オプジーボ+SOX 療法
オプジーボと2種類の抗がん剤(オキサリプラチン+S-1※)を組み合わせた治療法です。3週間(21日間)を1サイクルとして治療を続けます。
※S-1はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムの略語です。
オプジーボ電子添文 2024年7月改訂(第21版)
オプジーボ・ヤーボイ適正使用ガイド(2024年8月作成版)より作成
②オプジーボ+CapeOX 療法※
オプジーボと2種類の抗がん剤(オキサリプラチン+カペシタビン)を組み合わせた治療法です。3週間(21日間)を1サイクルとして治療を続けます。
※
オプジーボ電子添文 2024年7月改訂(第21版)
オプジーボ・ヤーボイ適正使用ガイド(2024年8月作成版)より作成
③オプジーボ+FOLFOX 療法
オプジーボと3種類の抗がん剤(オキサリプラチン+ホリナートカルシウム※+フルオロウラシル/点滴·静注)を組み合わせた治療法です。
2週間(14日間)を1サイクルとして治療を続けます。
※ホリナートカルシウムは本邦適応外です。
実際の治療に使用する薬剤については医療従事者にご確認ください。
オプジーボ電子添文 2024年7月改訂(第21版)
オプジーボ・ヤーボイ適正使用ガイド(2024年8月作成版)より作成
オプジーボと化学療法による併用療法の対象となる方
◆胃がんの患者さんのうち、手術による治療が難しい方、または再発をきたした患者さんが対象となります。
オプジーボによる治療を受けることができない患者さん
オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。
オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん
次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。
- ◎自己免疫疾患*にかかったことがある方
- ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
- ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
- ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
オプジーボ電子添文 2024年7月改訂(第21版)
併用療法で起こる可能性がある副作用
◆オプジーボと化学療法との併用療法では、以下のような副作用が起こる可能性があります。
化学療法との併用療法では、オプジーボのみの治療(単剤)とは異なる副作用が現れる可能性があります。症状によっては、日常生活での対応が必要になったり、症状を抑えるためのお薬が使われることもありますので、体に異常を感じたら、早めに医師、看護師、薬剤師に伝えてください。
オプジーボ+SOX 療法(発現頻度20%以上*)
- 手や足の感覚がにぶくなる、しびれや痛みを感じる
- 食欲減退
- 吐き気・嘔吐
- 下痢
- 疲労、倦怠感
- 口内炎
- 貧血
- 血液検査値の異常(好中球数減少・血小板数減少・白血球数減少)
(その他、「皮膚が黒ずむ」「涙が出る」などの症状がみられることがあります)
オプジーボ+CapeOX 療法(発現頻度20%以上**)
- 吐き気・嘔吐
- 下痢
- 手や足がしびれる、痛みを感じる
- 手や足の皮膚が赤くなる、カサカサする、水ぶくれができる
- 食欲減退
- 貧血
- 血液検査値の異常(血小板数減少)
(その他、「手や足の感覚がにぶくなる」などの症状がみられることがあります)
オプジーボ+FOLFOX 療法(発現頻度20%以上**)
- 吐き気・嘔吐
- 下痢
- 手や足の感覚がにぶくなる、しびれや痛みを感じる
- 疲労
- 貧血
- 好中球減少症・血小板減少症
- 血液検査値の異常(好中球数減少)
*小野薬品工業:国際共同第Ⅲ相(ATTRACTION-4/ONO-4538-37)試験成績(社内資料)承認時評価資料
**小野薬品工業:国際共同第Ⅲ相(CheckMate 649/ONO-4538-44)試験成績(社内資料)承認時評価資料
参考:化学療法の主な副作用について
化学療法で使われる細胞障害性抗がん剤※は、がん細胞だけでなく正常細胞にも作用するため、副作用が現れることがあります。
副作用の現れ方には個人差があり、症状の種類や強さも人によって異なります。また、患者さんが気づくものと、検査で確認するものがあります。
副作用の程度によっては、症状を抑えるお薬が使われることもありますので、体に異常を感じたら、早めに医師、看護師、薬剤師に伝えてください。
※細胞障害性抗がん薬と呼ばれることもあります。
細胞障害性抗がん薬の副作用と発現時期
国立がん研究センター がん情報サービス「化学療法全般について」より許可を得て転載https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html
注意が必要なその他の副作用、ご注意
オプジーボ・化学療法併用療法による治療は、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクからご確認ください。
治療終了後の注意点
◆副作用は、治療期間中だけでなく、治療終了後にも現れることがあります。
副作用が発現しても、早期に見つけて適切な対処を行えば、重症化を防ぐことにつながります。治療が終わったあとも、気になる症状が現れた場合はご自分で対処せず、すぐに医師や看護師、薬剤師に連絡してください。
◎適切な治療のために
「オプジーボ連絡カード」
- ●オプジーボによる治療を受けている(受けていた)ことを医療者に知らせる携帯用のカードです。
- ●他の病院を受診したり薬局でお薬を処方してもらう際は、このカードを必ずご提示ください。財布などに入れて常に携帯しておきましょう。
「おくすり手帳シール」
- ●おくすり手帳に貼っておくことで、医療者に副作用への注意や相互作用の確認などを促すシールです。
- ●確認しやすいページに貼ってお使いください。
緊急時の病院への連絡について
◆緊急受診が必要になった場合に備えて次の点を確認しておきましょう。
オプジーボの治療期間中や治療後に、病院への緊急連絡や緊急受診が必要になることがあるかもしれません。そのための備えとして、次の点を確認しておきましょう(緊急連絡先の電話番号は、目につくところに置いておくことも大切です)。
◎緊急連絡・受診の備えとして確認しておきたいこと
- ●病院の連絡先(夜間の連絡先)の電話番号
- ●病院に向かうための交通手段
- ●付き添いが必要な場合の支援方法と連絡先
(あわてなくて済むように、あらかじめ書き留めておきましょう)
◎病院に連絡する際に伝えておきたいこと
- ●患者さんの氏名、診察券の番号
- ●通院している診療科
- ●オプジーボによる治療を受けている(受けていた)こと
- ●いつから、どのような症状が出ているのか
- ●その症状で、どんなことに困っているか
(電話する際は、診察券を手元においておくとよいでしょう)
オプジーボ治療Q&A
オプジーボ・化学療法併用治療 治療日誌
オプジーボ・化学療法併用療法による治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。
用語集
- 再発
- 手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。再発と転移は同時に見つかることもあります。
- 転移
- がん細胞はリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。胃がんでは主に「血行性」「播種性」「リンパ行性」の3つの転移形式があります。
- T細胞
- 血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
- 化学療法
- 抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)を投与して、がん細胞の増殖を抑える治療法です。細胞障害性抗がん剤とは、主に細胞が分裂する増殖過程に作用して細胞の増殖を阻止する働きがある薬剤をいいます。
- 免疫チェックポイント阻害薬
- 免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
- 1型糖尿病
- 主に自己免疫によって起こる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病します。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
- アナフィラキシー
- アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急速に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。
国立がん研究センター がん情報サービス「がんに関する用語集/免疫療法/薬物療法」
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第4版, p32, 日本医事新報社, 2021
日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイドライン2024, p14, 南江堂, 2024
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学 第2版, p731-740, じほう, 2022
- 監修:
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神戸大学大学院医学研究科 外科学講座
食道胃腸外科学分野
教授 掛地 吉弘 先生
(2024年10月作成)