●免疫システムを抑制する
がん細胞は、免疫がうまくはたらかなくなるような物質(免疫抑制物質)を自分自身から出したり、また免疫を抑制する細胞から出させたりすることで、T細胞などの免疫細胞のはたらきを弱めることもできます2)。
またがん細胞は、免疫が本来もっている免疫ブレーキ機能をうまく利用して、免疫のはらたきを抑制します。
私たちの体は、過剰な免疫反応によって自分の正常な細胞が傷つけられたりしないよう、免疫システムにブレーキがかかる機能をもっていて、これを「免疫チェックポイント」といいます1)。この機能に関わる分子は「免疫チェックポイント分子」と呼ばれ、T細胞の表面などに存在しています。T細胞がもつ免疫チェックポイント分子に「攻撃やめ!」の指令が入ると、T細胞のはたらきが抑えられて、過剰な免疫反応が起こらないようになっています1)(下図左)。
ところが、がん細胞の中には、その細胞表面上に免疫チェックポイント分子をもっているものがあります。そのようながん細胞は、自分の免疫チェックポイント分子とT細胞の免疫チェックポイント分子を結合させることで、T細胞に「攻撃やめ!」の指令を入れ、免疫反応にブレーキをかけることができるのです1)(下図右)。
このように、免疫が本来もつブレーキ機能をたくみに利用することで、免疫の攻撃から逃れ、生き残ろうとするがん細胞が存在することも分かりました。
がん細胞は、あの手この手を使って免疫の目をすり抜けて生き残り、体の中でどんどん増えていくのです。