小野薬品の薬をご使用の方向け情報

腎細胞がんの治療でオプジーボとカボザンチニブによる併用療法を受けた方へ

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。

腎細胞がんの治療と薬物療法

腎臓にできるがんのうち、最も多いものが腎細胞がんです。
腎細胞がんの治療は、多くの場合、手術による局所的な治療が中心となりますが、手術による治療が難しい場合や、がんが腎臓から体のほかの場所にも広がっている場合は、お薬を使った全身的な治療である「薬物療法」が考慮されます。
腎細胞がんで使われる薬物療法には、「免疫療法」「分子標的薬」があり、免疫療法は「免疫チェックポイント阻害薬」によるがん免疫療法と「サイトカイン療法」があります。これらの中から、がんの状態や全身状態などをもとに、個々の患者さんに合った治療法が選択されます。
近年では、免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬とを組み合わせた併用療法も登場し、治療の選択肢がさらに広がっています※※

※詳しくは「用語集」をご参照ください。
※※オプジーボとカボザンチニブによる併用療法の対象となる方【腎細胞がん】についてはこちらをご参照ください。
腎細胞がんの治療と薬物療法
国立がん研究センター がん情報サービス「腎細胞がん」
腎癌のすべて 改訂第2版, p147-155, メジカルビュー社, 2014
日本泌尿器学会編:腎癌診療ガイドライン2017年版(2022年4月小改訂)

「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる

がん免疫とは

オプジーボとは

◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させがん細胞への攻撃を助ける治療薬です。

T細胞にかけられた免疫のブレーキを解除する働きがある「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボは、血液に入ると「PD-1」と呼ばれるT細胞のアンテナに結びつくことで、抑制信号をブロックし、免疫のブレーキを外します。
こうしたオプジーボの作用によってT細胞は、妨害を受けることなく、再びがん細胞を攻撃できるようになるのです。

オプジーボについて詳細をみる

小野薬品の薬を使用された方へ
オプジーボ

併用するお薬「カボザンチニブ」について

◆カボザンチニブは、腎細胞がんの増殖に関わる3つの分子を標的として働く分子標的薬です。

「分子標的薬」とは、がん細胞の発生や生存に強く関わっている分子を標的にしたお薬のことをいいます。カボザンチニブは、がん細胞の増殖にかかわる3つの分子(受容体)からのシグナルの伝達をブロックすることで、がん細胞の増殖を抑える治療薬です。

◎分子標的薬「カボザンチニブ」の働き

がん細胞には、栄養や酸素を取り込むための血管(新生血管)を自ら作って成長する性質があります。カボザンチニブは、がん細胞から出される「新生血管を作れ!」というシグナルの伝達に関わる3つの分子(VEGFRブイイージーエフアールMETメットAXLアクセル)の働きをブロックすることで新生血管の形成を抑制し、がん細胞の増殖や浸潤・転移を抑える働きがあります。

分子標的薬「カボザンチニブ」の働き
Zhou L, et al, Oncogene. 35(21): 2687-2697, 2016 より作成

治療スケジュール

◆オプジーボを2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。カボザンチニブは毎日服用します。

治療スケジュール
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)より作成

治療の方法と進め方

◆オプジーボは、点滴で投与します。

オプジーボは、点滴で投与します。

◆カボザンチニブは、飲み薬(錠剤)です。

カボザンチニブは、飲み薬(錠剤)です。
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)/カボメティクス電子添文 2024年2月改訂(第7版)より作成

オプジーボ・カボザンチニブ併用療法の治療の対象となる方

◆腎細胞がんの患者さんのうち、手術による治療ができない患者さん、もしくは、がんが腎臓から体のほかの場所にも広がっている(転移している)方が対象となります。

併用療法を受けることができない患者さん

オプジーボやカボザンチニブに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、治療を受けることができません。

併用療法を慎重に検討する必要がある患者さん

以下に該当する方は、医師、看護師、薬剤師に伝えてください。

  • □自己免疫疾患にかかったことがある
  • □間質性肺疾患**にかかったことがある
  • □臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある
  • □結核にかかったことがある(発症する恐れがある)
  • □血圧が高い、高血圧である
  • □血栓塞栓症にかかっている、または以前かかったことがある
  • □消化管など、お腹の中に炎症があると指摘されている
  • □脳または肺にがんが転移している
  • □手術、抜歯などの外科的措置を受けて間もない
  • □肝臓の機能が低下している
  • □妊娠中である、または妊娠の可能性がある
  • □授乳中である、または授乳の予定がある
自己免疫疾患
免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、関節リウマチや1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。
** 特に注意すべき副作用をご参照ください。
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)
カボメティクス電子添文 2024年2月改訂(第7版)

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。

併用療法で起こる可能性がある副作用

◆オプジーボとカボザンチニブとの併用療法では以下のような副作用が起こる可能性があります。

オプジーボと分子標的薬のカボザンチニブによる併用療法では、オプジーボによる単独療法とは異なる副作用が現れる可能性があります。
症状によっては、日常生活での対応が必要になったり、症状を抑えるためのお薬が使われることもありますので、体に異常を感じたら、早めに医師、看護師、薬剤師に伝えてください。

◎オプジーボとカボザンチニブとの併用療法でみられた主な副作用

  • 下痢
  • 手足症候群(手足がしびれる、痛む、チクチクする)
  • 甲状腺機能低下症
  • 高血圧(血圧の上昇)
  • 疲労
  • 肝機能検査値の異常(ALT増加、AST増加)
  • 味覚異常
  • 悪心(吐き気)
  • 食欲減退 など
併用療法で起こる可能性がある副作用
※カボザンチニブによる治療の副作用については、患者さん向け小冊子「腎細胞がんの治療でカボメティクスを服用される方へ」をご参照ください。 オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)
カボメティクス電子添文 2024年2月改訂(第7版)

治療終了後の注意点

◆副作用は、治療期間中だけでなく、治療終了後にも現れることがあります。

副作用が発現しても、早期に見つけて適切な対処を行えば、重症化を防ぐことにつながります。治療が終わったあとも、気になる症状が現れた場合はご自分で対処せず、すぐに医師や看護師、薬剤師に連絡してください。

◎適切な治療のために

「オプジーボ連絡カード」

  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)ことを医療者に知らせる携帯用のカードです。
  • 他の病院を受診したり薬局でお薬を処方してもらう際は、このカードを必ずご提示ください。財布などに入れて常に携帯しておきましょう。
オプジーボ連絡カード

「おくすり手帳シール」

  • おくすり手帳に貼っておくことで、医療者に副作用への注意や相互作用の確認などを促すシールです。
  • 確認しやすいページに貼ってお使いください。
おくすり手帳シール

緊急時の病院への連絡について

◆緊急受診が必要になった場合に備えて次の点を確認しておきましょう。

オプジーボの治療期間中や治療後に、病院への緊急連絡や緊急受診が必要になることがあるかもしれません。そのための備えとして、次の点を確認しておきましょう(緊急連絡先の電話番号は、目につくところに置いておくことも大切です)。

◎緊急連絡・受診の備えとして確認しておきたいこと

  • 病院の連絡先(夜間の連絡先)の電話番号
  • 病院に向かうための交通手段
  • 付き添いが必要な場合の支援方法と連絡先

(あわてなくて済むように、あらかじめ書き留めておきましょう)

連絡する患者さんのイラスト

◎病院に連絡する際に伝えておきたいこと

  • 患者さんの氏名、診察券の番号
  • 通院している診療科
  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)こと
  • いつから、どのような症状が出ているのか
  • その症状で、どんなことに困っているか

(電話する際は、診察券を手元においておくとよいでしょう)

オプジーボ治療Q&A

用語集

原発巣
最初にがんが発生した病変のことを「原発巣」と呼びます。腎細胞がんとは、尿をつくる組織である部分(腎実質)から発生したがんをいいます。
再発
手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。再発と転移は同時に見つかることもあります。
転移
がん細胞はリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。腎細胞がんの場合、肺への転移が最も多く、リンパ節、骨、肝臓などへの転移もみられます。
T細胞
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
分子標的薬
がん細胞の発生や生存に強く関わっている遺伝子やタンパク質を標的にした薬のことをいいます。併用薬のカボザンチニブは、腎細胞がんに対する分子標的薬のひとつで、その働きから「マルチキナーゼ阻害薬」と呼ばれることもあります。
サイトカイン療法
免疫細胞から分泌されるタンパク質をサイトカインといい、その働きを利用した治療をサイトカイン療法といいます。サイトカインの作用としては、がん細胞に対する直接効果と、がん細胞への攻撃を担当する免疫細胞を介した間接効果があります。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
1型糖尿病
主に自己免疫によって起こる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病します。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
アナフィラキシー
アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急激に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。

国立がん研究センター がん情報サービス「がんに関する用語集/腎細胞がん/免疫療法」
日本泌尿器学会編:腎癌診療ガイドライン2017年版(2022年4月小改訂)
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第4版, p32, 日本医事新報社, 2021
日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイドライン2019, p10-11, 南江堂, 2019
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学 第2版, p731-740, じほう, 2022

オプジーボ治療日誌

オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。

監修:
九州大学大学院 医学研究院
泌尿器科学分野 教授
江藤 正俊 先生

(2024年5月作成)