小野薬品の薬をご使用の方向け情報
腎細胞がんの治療でオプジーボとカボザンチニブによる併用療法を受けた方へ
オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。
腎細胞がんの治療と薬物療法
腎臓にできるがんのうち、最も多いものが腎細胞がんです。
腎細胞がんの治療は、多くの場合、手術による局所的な治療が中心となりますが、手術による治療が難しい場合や、がんが腎臓から体のほかの場所にも広がっている場合は、お薬を使った全身的な治療である「薬物療法」が考慮されます。
腎細胞がんで使われる薬物療法には、「免疫療法」「分子標的薬」があり、免疫療法は「免疫チェックポイント阻害薬」によるがん免疫療法と「サイトカイン療法」があります。これらの中から、がんの状態や全身状態などをもとに、個々の患者さんに合った治療法が選択されます。
近年では、免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬とを組み合わせた併用療法も登場し、治療の選択肢がさらに広がっています。

腎癌のすべて 改訂第2版, p147-155, メジカルビュー社, 2014
日本泌尿器学会編:腎癌診療ガイドライン2017年版(2019年版補足), メディカルレビュー社, 2020
「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる
がん免疫とはオプジーボ・カボザンチニブ併用療法の治療の対象となる方
◆腎細胞がんの患者さんのうち、手術による治療ができない患者さん、もしくは、がんが腎臓から体のほかの場所にも広がっている(転移している)方が対象となります。
併用療法を受けることができない患者さん
オプジーボやカボザンチニブに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、治療を受けることができません。
併用療法を慎重に検討する必要がある患者さん
以下に該当する方は、医師、看護師、薬剤師に伝えてください。
- □自己免疫疾患*にかかったことがある
- □間質性肺疾患**にかかったことがある
- □臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある
- □結核にかかったことがある(発症する恐れがある)
- □血圧が高い、高血圧である
- □血栓塞栓症にかかっている、または以前かかったことがある
- □消化管など、お腹の中に炎症があると指摘されている
- □脳または肺にがんが転移している
- □手術、抜歯などの外科的措置を受けて間もない
- □肝臓の機能が低下している
- □妊娠中である、または妊娠の可能性がある
- □授乳中である、または授乳の予定がある
*: | 自己免疫疾患 免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、甲状腺機能異常症や関節リウマチ、1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。 |
**: | 特に注意すべき副作用をご参照ください。 |
オプジーボとは
◆オプジーボは、T細胞のPD-ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
オプジーボは、T細胞のPD-1と結合して免疫の働きにブレーキがかからないようにする「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボが血液に入ると、T細胞のPD-1と結びつくことでがん細胞との結合が阻害され、かけられたブレーキが解除されます。
こうしたオプジーボの作用によって、T細胞は、妨害を受けることなく、がん細胞を攻撃できるようになるのです。
オプジーボについて詳細をみる
小野薬品の薬を使用された方へがん免疫とは
併用するお薬「カボザンチニブ」について
◆カボザンチニブは、腎細胞がんの増殖に関わる3つの分子を標的として働く分子標的薬です。
「分子標的薬」とは、がん細胞の発生や生存に強く関わっている分子を標的にしたお薬のことをいいます。カボザンチニブは、がん細胞の増殖にかかわる3つの分子(受容体)からのシグナルの伝達をブロックすることで、がん細胞の増殖を抑える治療薬です。
◎分子標的薬「カボザンチニブ」の働き
がん細胞には、栄養や酸素を取り込むための血管(新生血管)を自ら作って成長する性質があります。カボザンチニブは、がん細胞から出される「新生血管を作れ!」というシグナルの伝達に関わる3つの分子(

治療の方法と進め方
◆オプジーボは、点滴で投与します。

◆カボザンチニブは、飲み薬(錠剤)です。

治療スケジュール
◆オプジーボを2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。カボザンチニブは毎日服用します。

併用療法で起こる可能性がある副作用
◆オプジーボとカボザンチニブとの併用療法では以下のような副作用が起こる可能性があります。
オプジーボと分子標的薬のカボザンチニブによる併用療法では、オプジーボによる単独療法とは異なる副作用が現れる可能性があります。
症状によっては、日常生活での対応が必要になったり、症状を抑えるためのお薬が使われることもありますので、体に異常を感じたら、早めに医師、看護師、薬剤師に伝えてください。
◎オプジーボとカボザンチニブとの併用療法でみられた主な副作用※
- 下痢
- 手足症候群(手足がしびれる、痛む、チクチクする)
- 甲状腺機能低下症
- 高血圧(血圧の上昇)
- 疲労
- 肝機能検査値の異常(ALT増加、AST増加)
- 味覚異常
- 悪心(吐き気)
- 食欲減退

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意
オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。
オプジーボ治療Q&A
オプジーボ治療日記
オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。
- 監修:
- 九州大学大学院 医学研究院
泌尿器科学分野 教授
江藤 正俊 先生
(2023年4月作成)