Step1 がんと免疫のはたらき

3もっと知りたい免疫

免疫とは、自分ではない「異物」を見分けて攻撃し、取り除くシステム

「免疫」とは、病原体(細菌やウイルスなど)や病原体に感染した細胞、正常な細胞に異常が起こって発生したがん細胞などを、自分にとっての「異物」と見なして、攻撃し取り除くはたらきのことです1,2)。臓器移植後に起きる拒絶反応も、他人から移植された臓器を異物と認識して排除しようとする、免疫のはたらきによるものです。

免疫とは、自分ではない「異物」を見分けて攻撃し、取り除くシステム

免疫は、いつも同じ状態ではありません。異物を取り除くために強まったり、自分の体(細胞)を攻撃し過ぎないように弱まったり、体を健康に保つためにうまくコントロールされています。

免疫を担当する免疫細胞

免疫は、脳や心臓のような特定の臓器がそのはたらきを支えているわけではありません。「免疫細胞」とも呼ばれる白血球などの細胞が中心となって、免疫を担当します。白血球には、下図のようないろいろな種類があり、それぞれが連携して「免疫」というシステムが構築されます2)

免疫を担当する免疫細胞

2,3)より作成

異物を排除する仕組み その1:自然免疫(最初の防衛ライン)

免疫は、まず「自然免疫」、次に「獲得免疫」という、二段構えで体を守っています。ウイルスや細菌などの病原体が体の中に入ってきたとき、最初の防衛ラインとなるのが自然免疫です1,2)

自然免疫は、体の中で「自分ではないぞ!」と見なした異物に出会うと、素早く攻撃をしかけます。自然免疫ではたらく主な免疫細胞は、好中球やマクロファージ、リンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞です。
好中球やマクロファージは食細胞とも呼ばれ、侵入してきた病原体などの異物を食べてしまうことで自分の体を守ります1,2)
NK細胞は、すでに病原体に感染してしまった細胞を異物と見なして攻撃し感染が広がるのを防ぎます。また、体の中で発生した異常な細胞であるがん細胞も異物と見なして攻撃し、がん細胞の増殖を食い止めます。異物を直接攻撃するはたらきの他にも、サイトカインという物質を出してT細胞やマクロファージを活性化させ、異物を間接的に攻撃する役割ももっています1,2)

自然免疫(最初の防衛ライン)

異物を排除する仕組み その2:自然免疫から異物の情報が伝えられ、第二の防衛ラインが作られる

自然免疫は、異物の情報を伝えて、第二の防衛ラインである獲得免疫を誘導する、という重要なはたらきももっています。

このために、まず自然免疫は、異物の情報を伝える役割をもつ樹状細胞を活性化させます。活性化された樹状細胞は、異物を取り込んで消化し、異物の目印である「抗原」と呼ばれるタンパク質を自分の細胞表面にもち出して、「この目印(抗原)は異物です!」とT細胞に伝えます(抗原提示)。こうすることで、獲得免疫を担当するT細胞は、異物の目印を記憶して活性化し、次にまた同じ異物がやってきたときに備えて攻撃の準備をします1,2)

自然免疫から異物の情報が伝えられ、第二の防衛ラインが作られる

樹状細胞によるT細胞への抗原提示(異物情報の伝達)

異物を排除する仕組み その3:獲得免疫(第二の防衛ライン)

獲得免疫は、異物から体を守るための第二の防衛ラインです。再び、同じ病原体が体に侵入してきたり、体の中で異常細胞が発生したときに、記憶した情報を使って効率よく異物を見つけ出し、素早い免疫反応を起こします。

獲得免疫で司令塔の役割を担うのは、異物情報を記憶したT細胞です。T細胞は体中をパトロールし攻撃すべき異物を見つけると、さまざまな免疫細胞に「攻撃始め!」の指令を出します。すると、マクロファージなどの食細胞やNK細胞が活性化され、狙った異物が排除されます1,2)。またB細胞と呼ばれる免疫細胞を刺激して、異物の目印である抗原を認識して結合する「抗体」というタンパク質を作り出します2)。抗体が抗原に結合することで、抗原は無力化されて悪さができなくなるため、これも大切な攻撃の一手です。T細胞の中には、異常な細胞を自ら攻撃して破壊するものもいて、強力な免疫力を発揮します1,2)

獲得免疫(第二の防衛ライン)

このように、病原体や体の中のあやしい細胞を異物と見なしてすばやく攻撃する仕組みが自然免疫であるのに対して、獲得免疫はこれまでに記憶した目印をもつお目当ての異物を効率よく認識し、ピンポイントに攻撃をしかける仕組みといえます1,2)
免疫は、自然免疫と獲得免疫という二段構えの作戦で、初めて出会った敵や再び出会った敵から、私たちの体を守ってくれています。

参考
  • 1)医療情報科学研究所, がんがみえる(第1版), 160-161, 2022
  • 2)医療情報科学研究所, 病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症(第2版), 2-16, 22-25, 28-29, 2018
  • 3)がん情報サービス, 免疫療法 もっと詳しく(2023年3月23日閲覧, https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu02.html

(2023年5月作成)