小野薬品の薬をご使用の方向け情報
食道がんの治療でオプジーボとヤーボイの併用療法を受けた方へ
オプジーボ(一般名:ニボルマブ)とヤーボイ(一般名:イピリムマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。
食道がんの治療と薬物療法
食道がんの主な治療法には、手術や放射線療法などの局所的な治療と、薬による全身的な治療である「薬物療法」があります。このうち、がんが進行している患者さんや、再発※をきたした患者さんについては、それぞれの治療の特長を生かしながら、単独またはいくつかを組み合わせた治療法が選択されます。
薬物療法については、〝がんと免疫〟に関する研究が進み、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が開発され、治療の選択肢がさらに広がりました※※。こうした「がん免疫療法」の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。
※※オプジーボとヤーボイによる併用療法の対象となる方【食道がん】についてはこちらをご参照ください。 日本食道学会編:食道癌診療ガイドライン2022年版, 第5版, 金原出版, 2022
国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん」
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)/ヤーボイ電子添文 2023年10月改訂(第12版)
「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる
がん免疫とはオプジーボ・ヤーボイ併用療法とは
◆2種類の異なる免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせて用いる治療法です。
オプジーボとヤーボイは、T細胞にかけられた免疫のブレーキを解除する働きがある「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボは「PD-1」、ヤーボイは「CTLA-4」と呼ばれるT細胞のアンテナにそれぞれ結びつくことで、抑制信号をブロックし、免疫のブレーキを外します。これによってT細胞は、妨害を受けることなく、再びがん細胞を攻撃できるようになります。
オプジーボ・ヤーボイ併用療法は、2種類の免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせることで、がんに対する攻撃力をさらに高め、より効果的な治療を行うために用いられます。
オプジーボとヤーボイの併用療法について詳細をみる
小野薬品の薬を使用された方へオプジーボ・ヤーボイ併用療法
治療の進め方(オプジーボ・ヤーボイ併用療法の治療スケジュール)
◆オプジーボを2週間ごとに1回投与する方法と、3週間ごとに1回投与する方法があります※。
どちらの方法も、ヤーボイは6週間ごとに1回投与します。
スケジュールについては、主治医にご確認ください。
※その他、オプジーボを4週間ごとに1回投与する方法もあります。
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)/ヤーボイ電子添文 2023年10月改訂(第12版)より作成
投与方法
◆オプジーボとヤーボイは、点滴で投与します。
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)/ヤーボイ電子添文 2023年10月改訂(第12版)より作成
オプジーボ・ヤーボイ併用療法の対象となる方
◆食道がんの患者さんのうち、手術による治療が難しい、あるいは、再発をきたした患者さんが対象となります。
治療を受けることができない患者さん
オプジーボやヤーボイに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボやヤーボイによる治療は受けられません。
治療を慎重に検討する必要がある患者さん
次のような方は、オプジーボやヤーボイによる治療を受けられないことがあります。
- ◎自己免疫疾患*にかかったことがある方
- ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
- ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
- ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
* |
自己免疫疾患 免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、関節リウマチや1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。 |
** | 特に注意すべき副作用をご参照ください。 |
特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意
オプジーボとヤーボイによる治療中または治療後に、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクからご確認ください。
治療終了後の注意点
◆副作用は、治療期間中だけでなく、治療終了後にも現れることがあります。
副作用が発現しても、早期に見つけて適切な対処を行えば、重症化を防ぐことにつながります。治療が終わったあとも、気になる症状が現れた場合はご自分で対処せず、すぐに医師や看護師、薬剤師に連絡してください。
◎適切な治療のために
「オプジーボ・ヤーボイ連絡カード」
- ●オプジーボとヤーボイによる治療を受けている(受けていた)ことを医療者に知らせる携帯用のカードです。
- ●他の病院を受診したり薬局でお薬を処方してもらう際は、このカードを必ずご提示ください。財布などに入れて常に携帯しておきましょう。
「おくすり手帳シール」
- ●おくすり手帳に貼っておくことで、医療者に副作用への注意や相互作用の確認などを促すシールです。
- ●確認しやすいページに貼ってお使いください。
緊急時の病院への連絡について
◆緊急受診が必要になった場合に備えて次の点を確認しておきましょう。
オプジーボとヤーボイによる治療期間中や治療後に、病院への緊急連絡や緊急受診が必要になることがあるかもしれません。そのための備えとして、次の点を確認しておきましょう(緊急連絡先の電話番号は、目につくところに置いておくことも大切です)。
◎緊急連絡・受診の備えとして確認しておきたいこと
- ●病院の連絡先(夜間の連絡先)の電話番号
- ●病院に向かうための交通手段
- ●付き添いが必要な場合の支援方法と連絡先
(あわてなくて済むように、あらかじめ書き留めておきましょう)
◎病院に連絡する際に伝えておきたいこと
- ●患者さんの氏名、診察券の番号
- ●通院している診療科
- ●オプジーボとヤーボイによる治療を受けている(受けていた)こと
- ●いつから、どのような症状が出ているのか
- ●その症状で、どんなことに困っているか
(電話する際は、診察券を手元においておくとよいでしょう)
治療についてのQ&A
用語集
- 再発
- 手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。再発と転移は同時に見つかることもあります。
- 転移
- がん細胞はリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。食道がんは、比較的早い時期からリンパ節に転移しやすく、進行すると、肺、肝臓、骨などに転移することがあります。
- T細胞
- 血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
- 抗原提示細胞
- 病原菌やがん細胞などの断片を「抗原」として取り込み、その情報をT細胞に伝える血液細胞です。T細胞は、抗原提示細胞から抗原の情報を受け取ることで活性化し、免疫反応が開始されます。
- 免疫チェックポイント阻害薬
- 免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
- 1型糖尿病
- 主に自己免疫によって起こる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病します。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
- アナフィラキシー
- アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急速に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。
国立がん研究センター がん情報サービス「がんに関する用語集/免疫療法/薬物療法/食道がん」
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第4版, p32-33, 日本医事新報社, 2021
日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイドライン2019, p10-11, 南江堂, 2019
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学 第2版, p731-740, じほう, 2022
オプジーボ・ヤーボイ併用療法 治療日誌
オプジーボ・ヤーボイ併用療法による治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。
- 監修:
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国立がん研究センター 中央病院 頭頸部・食道内科/消化管内科
科長(併任)加藤 健 先生
(2024年5月作成)