5食道がんの手術

食道がんの手術について教えてください

手術は、がん組織を切り取る治療法です。食道がんの病期により、手術の方法が異なります。

食道がんには、通常、がんを含む食道と近くのリンパ節を切除し、胃や腸を使って食べ物の通り道を作り直す手術が行われます。しかし、早期の食道がんであれば、内視鏡を使ったがんの局所切除が可能です。がんの位置や進行度、患者さんの状態に応じて、手術の方法が計画されます。

内視鏡的治療の種類と進め方

内視鏡によるがんの切除は、からだの負担が少なく、回復が早いのが特徴です。内視鏡的治療には、がんの病巣をスネア(ワイヤー)で引っかけて切り取るEMR(内視鏡的粘膜切除術)と、電気ナイフで病巣を削り取るESD(内視鏡的粘膜下層剥離かそうはくり術)があります。
治療後に切除した組織を顕微鏡で詳しく調べます。がんが残っている可能性やリンパ節転移の可能性が高いと判断された場合には、ほかの治療法(手術や化学放射線療法)を追加します。

内視鏡的治療が可能な条件

0期

がんの深さが粘膜層まで

リンパ節転移がない

EMR(内視鏡的粘膜切除術)

  • 病変の下の粘膜下層へ生理食塩水などを注入し、がんを浮きあがらせます。
    病変の下の粘膜下層へ生理食塩水などを注入し、がんを浮きあがらせます。
  • 浮きあがった部分の根元にスネアと呼ばれるワイヤーをかけます。
    浮きあがった部分の根元にスネアと呼ばれるワイヤーをかけます。
  • ワイヤーを少しずつしっかりと締めて、高周波電流を用いて切除します。
    ワイヤーを少しずつしっかりと締めて、高周波電流を用いて切除します。
  • 切除終了後は出血や切除した状態を観察します。
    切除終了後は出血や切除した状態を観察します。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離かそうはくり術)

表面からみた図
病変のまわりに切除する範囲の目印をつけるマーキングを行います。
病変のまわりに切除する範囲の目印をつけるマーキングを行います。
断面図
病変の下の粘膜下層へ生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムなどを注入し、がんを浮きあがらせます。
病変の下の粘膜下層へ生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムなどを注入し、がんを浮きあがらせます。
表面からみた図
病変を確実に切除するために、マーキングした部分より外側の粘膜を切ります。
病変を確実に切除するために、マーキングした部分より外側の粘膜を切ります。
粘膜層をはぎ取るように切除し、終了後は出血や切除した状態を観察します。
粘膜層をはぎ取るように切除し、終了後は出血や切除した状態を観察します。
国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん」
日本食道学会 編:食道癌 診療ガイドライン2022年版, p59-85, 金原出版, 2022
監修:
大阪大学医学部医学系研究科 外科学講座消化器外科学 教授
土岐 祐一郎 先生

(2024年8月作成)