7薬物療法について

薬物療法とは、どのような治療法ですか?

薬剤を使って、がん細胞の増殖を抑えたり消滅させることを目的とした治療法です。薬が体内に行き渡ることで、全身に散らばったがんに対しても作用します。

食道がんの薬物療法は、単独で実施されることはほとんどなく、手術に先行して行われたり、放射線の効果を高めるために放射線治療と併用して行われます。また、手術後の治療として放射線治療に併用されたり、術後の再発を抑える目的で手術のあとに薬物治療が追加されることがあります(術後補助療法と言います)。薬物療法の種類としては「化学療法(抗がん剤)」が中心でしたが、最近「がん免疫療法」も使えるようになってきました。

点滴をしている患者さん

薬物療法を用いた主な治療法

薬物療法を用いた主な治療法
国立がん研究センター がん情報サービス「食道がん」

化学療法(抗がん剤)

抗がん剤は、主に細胞が分裂する増殖過程に作用してDNAの合成を妨げたりその機能を障害することで、がん細胞の増殖を抑える働きがあります。食道がんに対しては、主に「プラチナ製剤(白金はっきん製剤)」と呼ばれる抗がん剤が他の種類の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて用いられます。

抗がん剤
濱口恵子 他編:がん化学療法ケアガイド 改訂第3版, p26-30, 中山書店, 2020
日本臨床腫瘍学会 編:新臨床腫瘍学 改訂第7版, 南江堂, 2024

がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)

私たちのからだは、免疫機能が正常に働いている状態では、T細胞などの免疫細胞が、がん細胞を「自分でないもの」と判断し攻撃します。しかし、がん細胞は、免疫機能から逃れようと、免疫細胞にブレーキをかけ、攻撃から逃れていることがわかっています。
薬剤を用いて、がん細胞による免疫細胞へのブレーキを解除し、患者さん自身にもともとある免疫の力を使って、がん細胞への攻撃力を高める治療法を「がん免疫療法」と言います。
食道がんでは、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬剤が用いられています

免疫チェックポイント阻害薬

※免疫チェックポイント阻害薬による治療は、単独で行われる「単剤療法」と、化学療法(抗がん剤)や他の種類の免疫チェックポイント阻害薬との「併用療法」があります。(2024年3月現在)。

日本臨床腫瘍学会 編:新臨床腫瘍学 改訂第7版, 南江堂, 2024
日本臨床腫瘍学会 編:がん免疫療法ガイドライン, 金原出版, 2023
国立がん研究センター がん情報サービス「免疫療法」
監修:
大阪大学医学部医学系研究科 外科学講座消化器外科学 教授
土岐 祐一郎 先生

(2024年8月作成)