小野薬品の薬をご使用の方向け情報

大腸がんの治療でオプジーボを使用された方へ

オプジーボ(一般名:ニボルマブ)は、私たちがもともと持っている免疫の力を回復させることでがんへの攻撃力を高める、これまでとは異なるメカニズムに基づく〝がん免疫療法〟の治療薬です。

大腸がんの治療と薬物療法

大腸がんの主な治療法には、内視鏡治療や手術治療、放射線療法などの局所的な治療と、お薬による全身的な治療である「薬物療法」があります。このうち、がんが進行している患者さんや、再発をきたした患者さんについては、それぞれの治療の特長を生かしながら、単独またはいくつかを組み合わせた治療法が行われます。
薬物療法については、従来の抗がん剤による薬物療法に加え、これまでとは異なる作用を持つ「がん免疫療法」が臨床に使えるようになり、治療の選択肢がさらに広がりました
がん免疫療法の薬は、そのメカニズムから「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれています。

※オプジーボによる治療の対象となる方(大腸がん)についてはこちらをご参照ください。
がん免疫療法
大腸癌研究会編:大腸癌治療ガイドライン 医師用, 2022年版, 金原出版, 2022

大腸がんの進行度や転移など、病期(ステージ)について詳細をみる

病期(ステージ)とはなんですか?
どのように決められますか?

「がん免疫療法」「免疫チェックポイント阻害薬」について詳細をみる

がん免疫とは

オプジーボとは

◆ブレーキを外してT細胞の免疫力を回復させ、がん細胞への攻撃を助ける治療薬です。
オプジーボは、T細胞にかけられた免疫のブレーキを解除する働きがある「免疫チェックポイント阻害薬」です。
オプジーボは、血液に入ると「PD-1」と呼ばれるT細胞のアンテナに結びつくことで、抑制信号をブロックし、免疫のブレーキを外します。
こうしたオプジーボの作用によってT細胞は、妨害を受けることなく、再びがん細胞を攻撃できるようになるのです。

オプジーボについて詳細をみる

小野薬品の薬を使用された方へ
オプジーボ

オプジーボによる治療の対象となる方

◆オプジーボによる大腸がんの治療は、化学療法を受けたにもかかわらず病気が進行、あるいは再発をきたし、手術での治療が難しい患者さんのうち、がん細胞の検査で「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSIエムエスアイ-Highハイ)」という特徴が認められた患者さんが対象となります。

MSI-Highかどうかは、手術などで採取したがん組織のDNAを調べる「MSI検査」によって確認します(詳しくは「用語集」をご参照ください)。

※主にフッ化ピリミジン系製剤を含む薬物療法

オプジーボによる治療を受けることができない患者さん

オプジーボに含まれている成分に対して、以前、アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある方は、さらに重いアレルギー反応が出る可能性があるため、オプジーボによる治療は受けられません。

オプジーボによる治療を慎重に検討する必要がある患者さん

次のような方は、オプジーボによる治療を受けられないことがあります。

  • ◎自己免疫疾患にかかったことがある方
  • ◎間質性肺疾患**にかかったことがある方
  • ◎臓器移植(造血幹細胞移植を含む)を受けたことがある方
  • ◎結核にかかったことがある(発症する恐れがある)方
*: 自己免疫疾患
免疫機能が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気で、関節リウマチや1型糖尿病などが自己免疫疾患に含まれます。
**: オプジーボの特に注意すべき副作用をご参照ください。
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)

治療の進め方と投与方法

◆オプジーボは、30分以上かけて点滴で投与します。
◆治療スケジュールは、2週間(14日間)ごとに1回投与する方法と、4週間(28日間)ごとに1回投与する方法の2種類あります。

治療スケジュールについては、主治医にご確認ください。

投与スケジュール
オプジーボ電子添文 2024年2月改訂(第20版)より作成

オプジーボの特に注意すべき副作用、注意が必要なその他の副作用、ご注意

オプジーボによる治療中には、副作用が現れることがあるので注意が必要です。下記リンクから詳細をご確認ください。

治療終了後の注意点

◆副作用は、治療期間中だけでなく、治療終了後にも現れることがあります。

副作用が発現しても、早期に見つけて適切な対処を行えば、重症化を防ぐことにつながります。治療が終わったあとも、気になる症状が現れた場合はご自分で対処せず、すぐに医師や看護師、薬剤師に連絡してください。

◎適切な治療のために

「オプジーボ連絡カード」

  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)ことを医療者に知らせる携帯用のカードです。
  • 他の病院を受診したり薬局でお薬を処方してもらう際は、このカードを必ずご提示ください。財布などに入れて常に携帯しておきましょう。
オプジーボ連絡カード

「おくすり手帳シール」

  • おくすり手帳に貼っておくことで、医療者に副作用への注意や相互作用の確認などを促すシールです。
  • 確認しやすいページに貼ってお使いください。
免疫チェックポイント阻害薬

緊急時の病院への連絡について

◆緊急受診が必要になった場合に備えて次の点を確認しておきましょう。

オプジーボの治療期間中や治療後に、病院への緊急連絡や緊急受診が必要になることがあるかもしれません。そのための備えとして、次の点を確認しておきましょう(緊急連絡先の電話番号は、目につくところに置いておくことも大切です)。

◎緊急連絡・受診の備えとして確認しておきたいこと

  • 病院の連絡先(夜間の連絡先)の電話番号
  • 病院に向かうための交通手段
  • 付き添いが必要な場合の支援方法と連絡先

(あわてなくて済むように、あらかじめ書き留めておきましょう)

連絡する患者さんのイラスト

◎病院に連絡する際に伝えておきたいこと

  • 患者さんの氏名、診察券の番号
  • 通院している診療科
  • オプジーボによる治療を受けている(受けていた)こと
  • いつから、どのような症状が出ているのか
  • その症状で、どんなことに困っているか

(電話する際は、診察券を手元においておくとよいでしょう)

オプジーボ治療Q&A

用語集

原発巣
最初にがんが発生した病変のことを「原発巣」と呼びます。大腸がんとは、大腸(結腸・直腸)を原発巣とするがんのことです。
再発
手術による切除などの方法でがんが一度なくなったあとに、再び増殖したがんが発見されることが「再発」です。再発と転移は同時に見つかることもあります。
転移
がん細胞はリンパの流れや血流にのって体内を移動し、流れ着いた先で増殖します。これを「転移」といいます。大腸がんの場合は、肝臓、肺、脳、骨などに転移しやすいことが知られています。
T細胞
血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、異物から体を守る司令塔となる細胞です。T細胞という名前は、胸腺(thymus)でつくられることから、頭文字のTを取って名付けられています。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイントと呼ばれている免疫のブレーキ役の部分に結合する抗体(抗PD-1抗体など)を用いて、がん細胞による免疫のブレーキを外し、がん細胞への攻撃力を回復させる治療薬です。
MSI(マイクロサテライト不安定性)検査
がん細胞のDNAにある「マイクロサテライト」と呼ばれる部分に異常がどのくらいあるかを確認する検査です。マイクロサテライトの異常の数は、免疫チェックポイント阻害薬の効果と関係があることから、治療効果を予測する指標としても用いられています。
化学療法
抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)を投与して、がん細胞の増殖を抑える治療法です。細胞障害性抗がん剤とは、主に細胞が分裂する増殖過程に作用して細胞の増殖を阻止する働きがある薬剤をいいます。
フッ化ピリミジン系製剤
化学療法で使われる抗がん剤の一種で「代謝拮抗薬」という種類に属するお薬です。細胞の増殖に必要な「ピリミジン塩基」と呼ばれる成分の代わりに取り込まれることでDNAの合成を阻害し、がん細胞の増殖を抑える働きがあります。大腸がんの治療では、他の薬剤と組み合わせて用いられます。
1型糖尿病
主に自己免疫によって起こる病気で、自分の体のリンパ球が膵臓にある膵島β細胞を破壊してしまうことで発病します。遺伝的な要因に運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣が加わって発症する「2型糖尿病」とは発症原因が異なります。
アナフィラキシー
アレルギーの原因になる物質が侵入することで引き起こされる全身的なアレルギー反応をいいます。全身の発疹やかゆみ、呼吸困難などの症状が急激に現れ(数分~数時間以内)、重症になると生命に危険が及ぶこともあるため、迅速な対応が必要となります。

国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)/がんに関する用語集/免疫療法/薬物療法」
日本臨床腫瘍学会編:新臨床腫瘍学 改訂第6版, p254,633-644, 南江堂, 2021
カラー図解人体の正常構造と機能Ⅶ 血液・免疫・内分泌 改訂第4版, p32, 日本医事新報社, 2021
日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイドライン2019, p10-11, 南江堂, 2019
日本臨床腫瘍薬学会編:臨床腫瘍薬学 第2版, p731-740, じほう, 2022

オプジーボ治療日誌

オプジーボによる治療中、特に気をつけていただきたい症状をチェック項目としてまとめています。

監修:
東京医科歯科大学 名誉教授
杉原 健一 先生

(2024年6月作成)