「RAS遺伝子」は、がん細胞を増やすシグナルが伝わる途中にある遺伝子です。RAS遺伝子に変異がない場合(陰性)は、抗EGFR抗体薬がシグナルの伝達を止め、がん細胞の増殖を抑える作用が期待できます。
BRAFというたんぱく質を作るBRAF遺伝子に変異がある場合(陽性)は、BRAFたんぱく質が常に活性化され、がん細胞が増殖します。BRAF阻害薬は、BRAFたんぱく質のはたらきを阻害することで、がん細胞の増殖を抑える作用が期待できます。
MSI-High/dMMR
私たちの体をつくる設計図ともいえる「DNA」には、何度も複製を繰り返す「マイクロサテライト」と呼ばれる部分があります。「MSI(マイクロサテライト不安定性)」とは、マイクロサテライトに起こった配列間違いを修復するはたらきを表し、MSI-Highでは修復するはたらきに異常がある状態(ミスマッチ修復機能欠損:dM MR)と考えられています。免疫チェックポイント阻害薬は、MSI-HighまたはdMMRの患者さんで、効果が得られる可能性があります。
HER2は、細胞の増殖にかかわるたんぱく質の1つで、HER2たんぱく質を作るHER2遺伝子が増幅している場合(陽性)は、HER2たんぱく質が活性化され、がん細胞 が増殖します。HER2阻害薬は、HER2たんぱく質に結合することでHER2たんぱく質のはたらきを阻害し 、がん細胞の増殖を抑える作用が期待できます。
上記すべての遺伝子異常が確認されない患者さんも約半数おられます。その場合は上記以外の抗がん剤で治療を行うことが推奨されています。